何でもない青春の話【AI生成挿絵付】
復帰の第一弾と挿絵投稿テストを兼ねています。
今後、あげていきますので宜しくお願い致します。
さすが、一流ホテルだなぁ……。
今まで触れたこともないような材質の椅子に座りながら、飾ってあるたくさんの写真を眺める。
写真を見ながら、ぼんやりと思い浮かべる。
そう、それは遡ること、7年前。
「おい、真司! ちょっと来い!」
クラスのリーダー格である隆司が、大声でクラスメイトを呼びつける。
隆司と真司は中学も同じでずっと付き合いのある間柄だ。ここだけ聞けば、仲の良い友達同士の会話になるだろう。
だが、実態は違う。
「お前さ、何で俺と同じ漢字が名前に入ってるわけ? 高校3年になる前に改名しとけっつったよな? あ?」
「い、いや、無理だよ。そんなこと……」
「あ? 口答えしちゃう? おーおー、偉くなったな? ムカつくから罰ゲーム! この窓から飛び降りろー」
「え、いや、無理だよ、無理。だってここ2階……」
「うるせえ、やれよ。この高さじゃ死にやしねえよ。な、みんなもそう思うよなあ!」
隆司の呼びかけに、
呼応するもの。
無言で同意するもの。
友達との会話を続けて聞こえない振りをするもの。
多様な応答があるものの、否定したり止めたりするものは誰もいない。
皆、止めれば自らに火の粉が降りかかることを理解しているのだ。
「やーれ。やーれ」
隆司の取り巻きたちが、真司を窓の方に追い詰めながら詰め寄っていく。
「……。」
真司が助けを求める視線を送るも、誰もこちらを見ていない。
真司は諦めて、意を決したように窓の方へ向く。
「ほら、早くやれよ」
隆司のやや怒り交じりの声を合図に、真司は2階の窓から飛び降りた。
「うわっ、本当にやりやがった!」
焦りの色が1%もない隆司の声に、クラスメイト達は大慌てで窓へ駆け寄る。
1階にはゴロゴロと転がる真司がいた。
真司は、無事そうだ。
「こらっ! 何をしているか!」
教師が、タイミングを見計らったかのように教室に入ってきた。
事実、タイミングを教室の外で計っていたことは生徒全員知っている。教師も見て見ぬ振りをしている状況に既になってしまっている。
結局、真司が勝手に飛び降りたとされ、危ないことをするなと真司一人が怒られた。
このようなことが日常的に続き、高校3年に全員が進級したある日。
一人の転校生が、流れを大きく変えた。
「今日より、この学校に転入となった生徒を紹介する」
教師の紹介と共に教室に入ってきたその子は、田舎の高校には絶対にいない容姿をしていた。
髪は金髪のストレートで、透き通ったガラスのような瞳。
その場にいるだけで周囲を元気にするような独特な笑顔に、クラスメイト達は皆言葉を失って、彼女が歩く様を見ていた。
「ハルです。よろしく」
ハルというその転校生は、外国人と日本人のハーフで髪と目は父親譲りなのだそう。日本人の母親は世界を飛び回るキャリアウーマンで日本にはほとんどおらず、外国人の父親と2人で引っ越してきたそうだ。
日本人離れしたその外観は直ぐにクラスの、いや学校中の注目の的になった。
彼女の周りには、いつも人だかりが出来ていた。彼女の明るさもあって、その輪は絶えず、クラスの中心は隆司から彼女へと一気に移った。
隆司には、それがとても面白くなかったのだろう。
真司を虐めることでリーダーとしての地位を確保していた隆司だが、今は誰もそのことに興味を示さなくなっていた。
その状況に置かれた隆司が、強硬策に出るまでそう時間はかからなかった。
「なあ、おい。転校生。俺も話に混ぜろよ」
隆司が数人の取り巻きと共に、ハルのところへ来た。
「えっと、すまない。名前がまだ全員覚えられてなくて……」
「ちっ……。隆司だよ、隆司」
「ああ、隆司君。すまない。ハルだ、よろしく」
太陽と見間違うばかりの笑みを浮かべ、ハルは手を差し出す。
その手を、隆司は乱暴に払った。
「あいにくと、ここは日本でな。握手する習慣はねーんだよ」
「そうか、それは失礼した」
隆司の威圧的な態度に、一切ひるまないハル。
外国人は自分をしっかりと持っていると聞いたことがあるが、外国人の父親に育てられたという彼女もそうなのかもしれない。
「ああ、そうだ転校生。このクラスにはルールがあってな。それを教えてやるよ。おい、真司!」
隆司は、クラスの隅で小さくなっていた真司を呼んだ。
「こいつはな、真司ってんだ。クラスのサンドバック、貯金箱、まあ何でもいいや。この真司に何か命令してやらせるのが、このクラスのルールなんだ。さあ、お前も何か命令してやらせろ」
ハルは、不思議そうな顔で真司を見た。
「真司君、それは君の願いなのかい?」
真司が何か言う前に、隆司が言葉を被せる。
「そんなわけねーだろ。バカな外人様だなあ。こいつはな、俺の所有物なんだよ。だから、俺がどう使おうが勝手なわけ、分かる?」
ハルはムッとした表情を浮かべ、隆司を睨みつけた。
「は? 何それ。イジメってこと? だっさ」
その後、ハルは自分を取り巻いていた周囲も見渡した。
「このクラスのルールって、ほんと? 皆でやってること?」
一瞬の沈黙。
しかし、ハルと仲良く話していた女子の一人が口を開く。
「そ、そんなわけないじゃん! ルールな訳ない。こいつが勝手に言ってるだけだよ、ハルちゃん!」
「そ、そうだよ! ガチだったら引くよー」
一人の声を皮切りに、次々と否定の声が上がる。
ハルは、そうだよね、と安堵の表情を浮かべている。
隆司は、取り巻きを引き連れて不満そうに自席へと戻っていった。
「あ、あの。ハルさん、ありがとう」
真司がハルに近寄り、お礼を言っていた。
「いいよ、ハルで。あとさ、自分の嫌なことは自分で言わないとダメだよ。別に私は、真司君を助けたくてやったわけじゃない。自分がやりたくないことをやらなかっただけ。自分の為にやったことだよ。だからさ、真司君も自分の為、意見をいわないと、だよ」
「あ、うん。わかってる……。そのこと……なんだけど……さ」
「あ、ハルちゃーん。そろそろ移動だよー」
ハルの周りにいた女子が、去り際にハルに声をかける。
「あ、うん。ありがと。ごめんね、また話そ。真司君」
ハルはそう言い残すと、教室を出ていった。
ハルが出ていった後、隆司は不機嫌そうに机を蹴飛ばした。
「ちっ、ムカつくぜ。あの女!」
「どうする? やっちまうか?」
取り巻きの一人が、過激な提案をする。
「バカ。あんなのは漫画の世界だ。それにな、転校生に反抗されたことが問題じゃねーんだよ。『このクラスは俺に絶対服従』、この雰囲気を壊されたことが問題なんだ」
今までも、ハルのように隆司の意見に反対したクラスメイトはいた。しかし、皆脅せば言うことを聞くようになるし、賛同する者は現れなかった。
それは、学校の教師だって例外ではなかった。
しかし、ハルという転校生は明らかに異質で、空気が違っていた。
だからこそ、あそこまで雰囲気を変えることが出来たのだ。
隆司は、何とかハルをこちら側に引き込まないといけないと考えていた。
「おい、真司」
遅れて移動教室に向かおうとする真司を、隆司は呼び止めた。
「な、なに?」
「お前、さっき転校生に何か話そうとしてたよなあ。その続きがあるとかで、今日放課後、屋上に呼び出せ」
「え? 何をするの?」
「そんなことお前が知らなくていいんだよ。さっさとやれ」
真司は、今までにない困った表情を浮かべていた。
「嫌なことは自分で言わないとだめ」
ハルにさっき言われた言葉が、真司の中で引っかかっているのであろう。
真司が、なぜ今まで見せたことのない表情をしているのか?
隆司にでさえ、その原因は容易にわかった。
その事実が、さらに隆司を苛立たせていた。
「うるせえな。抵抗するなら、今度はこの3階から飛び降りさせるぞ。いいから呼べよ」
苛立ちが頂点に達した隆司は、猛烈に机を蹴り飛ばした。
「わ、わかったよ……」
真司は、渋々同意し、移動教室に向かった。
「た、隆司君……」
取り巻きの一人が、心配そうに隆司に声をかける。
「わかってるよ。真司が一ミリでも抵抗するなんて始めてた。くそっ。あの転校生のせいだ……」
「こ、こら。もう授業は始まっているぞ」
イジメを止もしない教師が、テンプレな注意を遠巻きに言いに来た。
「うるせえな、わかってるよ」
取り巻きの一人が、応答する。
教師はそれ以上何も言わず、どこかへ立ち去った。
「見てろよ……」
隆司は、不敵な笑みを浮かべていた。
放課後……。
真司はハルを連れて、隆司に指示された屋上へやってきた。
「話があるって、なんだ。あんたなの? こんなことも人使わないと出来ないなんてほんとダサい」
「いや、真司に呼ばせたのは意味があるんだぜ」
喧嘩腰のハルに対して、不敵に笑う隆司。
「なあ転校生。今から真司を殴れ」
「はぁ? やるわけないでしょ?」
「そうか、なら……」
隆司は真司に近づくと、突然真司の頬を殴りつけた。
「な、なにするの!」
「お前がやらねえから、代わりにやってやったんだよ」
「こんなひどいこと……」
「はぁ? 言ったよな? こいつは俺の所有物なんだよ。何したっていいんだ。ほら、もう一発っ!」
今度は倒れこんでいる真司に対して、隆司は腹部を蹴り上げた。
真司の体が浮き上がり、ゴロゴロと転がる。
「やめてよ、こんなこと!」
ハルは真司に駆け寄り、抱き起した。
「お前がいけないんだぜ、転校生。お前が変な抵抗しなきゃ、真司がこんなに苦しむことはなかった。なぁ?」
「大丈夫だよ、ハルさん。僕は大丈夫」
真司がハルの手を取り、立ち上がる。
「僕は大丈夫だから、さあ殴って」
両手を広げ、真司はハルに向けて顔を向ける。
「ほら、真司もそう言ってることだ。やれよ、転校生」
ハルは、真司の手を取り降ろさせると、隆司の方を向いた。
「ぜっったいに、嫌!」
ハルは、大きな声で宣言した。
「私は……、何があっても自分を曲げない! 自分に嘘はつかない!」
「ハルさん……」
予想外の答えに、隆司は怒りを隠しきれない様子だった。
「ああ、そうかい! ああそうかよ! じゃあ、お前がその自分とやらの意思で真司がボコボコになるところを見てるんだなあ! お前ら!」
隆司は取り巻きに命令し、真司を殴るように仕向けた。
「待って!」
「あ? なんだよ転校生。逆にお前が殴られるってのか?」
「ええ、そうよ」
ハルは、口を真一文字に閉じ、決意を固めた表情をしていた。だが、手は微かに震えており、恐怖を必死に耐えているようにも見えた。
「くっ、ははははっ! なんだよ、こんな漫画みたいなことがあるのかよ? 面白れぇなあ。じゃあ、俺も漫画の世界に浸ってみるかー」
隆司はゆっくりとハルに近づくと、まるで美術品を見るかのようにその四肢を凝視した。
「よし、じゃあ服を脱げ」
「なっ!」
「女のお前を殴っても何も面白くねえだろ。そんだけ言うなら、俺たちと面白いことしようぜぇ? なあ、お前ら!」
控え目に言っても、ハルはかなりの美人だ。
そんな彼女を好きに出来るとあって、取り巻きの興奮は隠しきれなかった。
「わ、わかったわよ……」
「ハルさん!」
「大丈夫だよ、真司君。私は大丈夫」
「それって……」
目に薄っすらと涙を浮かべながら、ハルは真司に微笑みかけた。
取り巻きの一人が、ハルの肩に手をかけた。
まさに、その時。
「ふっ……!」
取り巻きの男の体がゆらゆらと揺れ、その場に倒れこんだ。
「な、なんだ?!」
何が起きたかわからなかった。
さらに、次の瞬間。
もう一人の取り巻きが、瞬時の内に倒された。
今度ははっきりと見えた。
真司だ。
真司が、2人の男を殴り倒したのだ。
だが、重要なのはそこではない。
真司の拳が、見えなかった。
早いとか、遅いとか、そういう次元じゃない。
文字通り、見えなかった。
「中学1年生の夏だっけ? 隆司君が僕をイジメだしたの」
ゆっくりと、真司が歩く。
「あの時さ、すごく悔しくて、どうしようか考えたんだ。それでさ、隣町のボクシングジムに通うようになったんだ」
「ボ、ボクシング?!」
「ずっと鍛えてるうちにさ、イジメの事なんてどうでもよくなって。ジムのトレーニングに比べれば君らのパンチなんて痛くもないし、2階から飛び降りることだって着後に転がればなんてことはない。ま、鍛えないと無理だけどね」
思い出した。
確かに真司は、2階から降りたときに転がっていた。確か、空軍のパイロットがやっているトレーニングだったか、そんな話を聞いたことがある。
「高校生活を満喫したいからって、プロ試験は高校卒業後ってコーチと約束してたんだ。その代わり、お前は絶対に人を殴るな。お前の拳は、人を殺すってね」
「でもさ……」
真司は隆司の前に立つと、ファイティングポーズを取った。
その様は今までの真司ではなく、テレビで見たプロボクサーのまさにそれだった。
「人を守る拳なら、僕は容赦しない。これ以上、彼女を傷つけるなら、僕はもう自分を偽ったりしない」
凄まじい威圧感。
「だっ、だから何だよ! 真司の癖に調子に乗りやがって!」
隆司は、ポケットから小さなナイフを取り出した。いつも、脅しに使っていたやつだ。
「おらあ!」
隆司がナイフを真っすぐに真司へ突き出す。
真司は軽やかにナイフを交わすと、強烈なアッパーを隆司の拳に叩き込んだ。
隆司はそのまま、そこに倒れこんだ。
「はぁ。もっと早くナイフを出してくれたら、正当防衛でやり返せたんだけどな」
ほとんどの取り巻きは、その場から逃げ去ってしまった。
「君はどうする? やる?」
首を大きく横に振る。
「そう。よかった」
真司はそういうと、ハルの元へ向かった。
「ハルさん、ごめんなさい。そして、ありがとう」
「え?」
「実は、高校生活を満喫したいからプロ試験を受けないなんて、嘘なんだ。僕は、自分の為に人を殴ることに、どうしても意味を見出せなかった。才能があるって言われたり、世界チャンピオンになれるなんて言われたりもしたけど、どうしても踏ん切りがつかなかったんだ。
「でも……」
真司は、真っすぐにハルを見つめた。
「今日、ハルさんを守るためなら自分は一歩進むことが出来た。ハルさんが僕を全力で守ってくれたように、これからも僕に全力でハルさんを守らせてほしい」
「えっ、それって……」
ハルは一瞬驚いた表情を浮かべたが、直ぐに吹き出し笑い出した。
「あははは、何どさくさに紛れて告ってんの。ちょーうける」
「え、い、いや、そんなに笑わなくても……」
「あーおかしい。でも、ま、悪くはないかな。ナシかアリかって言われたら、アリより?」
ハルは、屋上の扉に向かいつつ、振り返ってこういった。
「プロ試験受かったら、付き合ってあげる!」
「わ、わかった!」
ふっ、結婚おめでとう。
そんなことを思い出しながら、二人が寄り添う写真を眺めていた。
昔、スコップされてプレッシャーに耐えられずエタッてしまった元ランカー。
書きたいものが貯まって、挿絵もAIが書いてくれる時代になりました。
出来るだけ挿絵つきで頑張っていきます。
宜しくお願い致します。