イレブン救出作戦1
その日オフだった俺は、早朝からのトレーニングを済ませ、最近行きつけになったカフェで寛いでいた。
海沿いのテラス席での一時は、そのシチュエーションだけでも十分満足だった。
だがやはり、店自慢を謳うコーヒーは絶品だ。
ここでしか味わえないのは確実だ。
その苦味と酸味が染み渡る。
そして外せないのがモーニングだ。
取引しているパン屋焼きたてのトースト、サラダにフルーツ、後はソーセージと卵料理。
シンプルだが、それがまた良い。
ソーセージもパンと同様に、専門店から卸してもらっているものだ。
市販のものとは肉々しさが違う。
卵は客の好みに合わせた調理をしてくれる。
ゆで卵、スクランブルエッグ、目玉焼きにオムレツ。
今日はスクランブルエッグを注文した。
「組織」からの出頭命令を受けた。
その数字が意味するもの・・・・
"速やかに出頭せよ"
俺はその言葉に一抹の不安を募らせた。
こんな文言は初めてだったからだ。
そして今日の本部である、東京湾上に浮かぶ大型クルーザーに乗り込んだ。
「ナイン、早速だが君に任務を遂行してもらいたい。」
いつもの様にボスに謁見する。
だが、この時のボスの声色にも変化を感じた。
どこか焦りが垣間見える。
「緊急事態ですか?」
俺は率直な質問をぶつけた。
「その通りだナイン。」
その後、目線だけを左に向けオペレーターを見たが、いつも冷静沈着な彼女でさえ、不安そうな面持ちで俺を見ていた。
「ナイン、落ち着いて聞いてくれ。
実は・・・・イレブンが拉致された。」
まさかの展開に、思わず声を挙げそうだった。
何とか堪えたが、眉間にシワが寄っただろう。
「発振器が最後に反応した場所は、ロシアのシベリアだ。」
「最後に反応した、という事はまさか?」
「そうだナイン、敵は我々の存在ないし彼女の事を一定以上把握している可能性が高い。」
俺達は全員、後頭部の皮下に発振器兼バイタルをモニター出来る高性能チップを埋め込まれている。
仮にその人間が死んでも、破壊されぬ限りチップは位置情報だけは発信し続ける仕組みだ。
それを知っている人間は数少ない。
「誰が一体彼女を?」
「1時間後に羽田から特別機が出る、そこで資料に目を通せ。」
絶妙のタイミングで、オペレーターが俺に資料を手渡した。
間近で見る彼女の顔は、やはり不安そうな面持ち、そして俺への懇願が見て取れた。
「その前にラボで装備を受け取れ。
今回は一筋縄では行かないだろう。」
「わかりました。」
「ナイン。」
部屋を出る直前、ボスは俺を呼び止めた。
「組織の存亡がかかっている、頼んだぞ。」




