ギガースデザイン創作会議
広々とした会議室で黒いスーツに身を固めた男が大きな声で言った。
「諸君。我々は今ある問題に直面している。それは新作ロボットアニメ、ギガースの機体をどうするかだ。期限は残り半年しかない。革新的な意見を頼む。最も良い意見を出せた者には、そうだな......ボーナスを出すとしよう」
灰色のスーツに身を固めた職員が勢い良く手を挙げて言った。
「部長。ギガースに大きな羽を生やすというのはどうでしょう?今までにない感じがしますし、今作のテーマである自由にも合っているかと」
部長と呼ばれた黒スーツの男は、灰色スーツの男を指差して言った。
「灰谷、良い意見だ。是非とも前向きに取り入れよう」
灰谷と呼ばれた男は思う。
(よし、好感触だ。ボーナスを貰ったら沖縄にでも旅行に行かせて貰おう)
次に青色のスーツで身を固めた男が手を挙げて言った。
「主人公がギガースと一体化するという設定を加えるのはどうでしょう?ギガースに依存している様な描写を入れれば、自由になる事を恐れている序盤の主人公にピッタリな機体になるはずです」
部長は腕を組みながら重々しくいう。
「青山。確かに良い意見だが、目新しさがない。機体と一体化するなんて、別のアニメもう何回もやっているだろう?」
青山と呼ばれた青いスーツの男はガックリと肩を落としながら思う。
(クソ......これじゃあボーナスは貰えない。子供が出来てこれから金が必要になるって言うのに......)
灰谷は再び手を挙げて言った。
「列車の要素を取り入れる、というのはどうでしょう?列車は主人公に取って自由の象徴。主人公を自由な世界に連れていく、この機体には必ず合うかと」
部長は拍手をしながら言う。
「なるほど、素晴らしい意見だ。その斬新な意見は視聴者の予想を大きく裏切ることだろう」
灰谷は心の中で高笑いをしだす
。
(又もや好感触。これはボーナスは俺の物だな。悪いな青山。子供が生まれたそうだが、沖縄が俺を呼んでるんだ)
青山も負けじと手を挙げて答える。
「レギュラーメンバーの3人が協力することで必殺技が撃てる機体、なんてどうでしょう?3人の結束の固さを示す良い機体になるでしょう。」
部長はため息を付いてから答える。一瞬空気がピリついた。
「3人で放つ必殺技なぞベタ中のベタ。そんな使い古されたアイデアなんてボツだ」
青山はショックを受けるが、それでも負けじと食い下がる。
(部長め、ベタってだけで真っ向から否定しやがって......ボーナスを貰って知育玩具を買ってやるんだ、こんな所で退けるか。とにかく目新しい物を出すぞ)
「では先ほど意見が出た翼の色を、黄色にするのはどうでしょう?より自由さが出ますし、何より目新しいです」
部長は目を丸くして言う。
「良いじゃないか、目新しくて。採用だ。」
青山は机の下でガッツポーズを決める。
(よし、ここから巻き返すぞ)
すると灰谷が食い入る様に手を挙げる。
「腕を列車の車両にするなんてどうでしょう?目立つし目新しいです」
部長は興奮気味に答える。
「それは良いな」
青山は灰谷を怨めしそうに睨む。
(灰谷ィ、どうせボーナス貰っても旅行に使って終わりだろ。俺に寄越せぇえ)
そう心の中で叫ぶと食い気味に手を挙げる。
「大きな鎖を付けるなんてどうでしょう?目新しいです。
またもや部長は興奮気味に答える。
「それも良いな」
(青山ァ、小癪な真似を。どうやら本気で俺の沖縄旅行を邪魔したいみたいだな。良いだろう。相手になってやる)
続ける様に灰谷も手を挙げる。
「顔に大きな星を付けるなんてどうでしょう?目新しいです」
「おお!目新しくて良いな」
「武器はハンマーにしましょう。目新しいです」
「それが良い」
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少し時間が経ってギガースの企画書が完成した。それを部長は胸を高鳴らせながら、上司の元へ持っていった。部長の上司は冷静な声で言った。
「自由要素は何処へ行った」