背中
秋の香りが漂う休日の朝、久しぶりに散歩に出掛けた。
途中にはすすき、萩が盛りを迎えていた。
畑の作業をしている方の後ろ姿を眺めていると、私が小学生の頃を想い出した。
秋の香りが漂う休日の朝、久しぶりに散歩に出掛けた。
途中にはすすき、萩が盛りをむかえていた。
畑の作業をしている方の後ろ姿を、歩きながら眺めていると、私が小学生の頃を想い出した。
あの頃の私の母は、今の私より若かったと思う。
お洒落もしないで、パートの仕事、家事、家族の世話に明け暮れていました。
パートの仕事は、午前9時から午後5時までで 徒歩15分の距離を、母は徒歩で通っていました。
「ただ今、もう5時になると暗くなるね!」
「お帰り!」
「コーヒーを飲んでから、買い物に行くけど一緒に行かない?」
「行かない!漫画が見たい」
母は、寂しそうにコーヒーを飲んでいたと思う。
あの頃の私は、いつまでも母は元気でいると思ってました。
暗い夜道を、母は1人で八百屋まで買い物に行く背中を気にもしていなかった。
買い物籠を、重たそうに持つ母の背中を気にもしていなかった。
冷たい水で、食器を洗う母の背中も気にもしていなかった。
針仕事をしている母の後ろ姿も気にしていなかった。
母が働かないと生活が苦しいことなど気にもしていなかった。
あの頃の私を心の中で責めている自分がいる。
母の暖かな背中に、後ろから抱きつき
「欲しいものがあるの、ねぇお願い!」
母の手は、私の背中に回りおんぶをするような態勢になり
「何が欲しいの?」
「毛糸のボンボンがついた帽子だよ!」
「それなら、母さんが編むよ!」
「えぇー、明日被りたいのに!」
「明日? やってみるよ・・・可愛い色の毛糸もあるしね」
次の朝、机の上に橙色のボンボンがついた毛糸の帽子が出来上がっていた。
私は、喜びながら母の背中に飛びついて「母さん有難う!可愛いから大切に被るね!」
母が、徹夜で編み上げたことなど気にもせずに、ただ喜んだあの頃の私を責めている。
今でも、母の温もりをこの季節になると想い出す私です。
誰にでもある母の想い出を書きました。