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えっ、私が勇者になるんですか!?  作者: 立川好哉
第1部
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14・アロットオブメフィスト

 何でも屋と化したルシャによって第6層へと転移した探索班は便利な魔法によってこの層のメイン部屋も突破して番人の部屋に到達した。

「いやぁ、ルシャはまさに百人力だなぁ」

「しかしですね教頭、ルシャの力は番人にこそ使うべきだと思うのです」

 ノーランが教頭に意見すると、教頭は理解を示しながらもこう説明した。

「我々は余計な行程を省くことによって無駄に消費をしないで済むんだ。移動に苦労してここまで来たとしても我々はただの荷物にしかなれないだろう?」

「それは我々の体力が足りないのです。鍛えれば…」

「ノーラン、今のことを考えるんだ。今はルシャの魔法で移動するほうがいい」

 ルーシーに止められたノーランは頷いて一歩退いた。これは気まずいという理由ではなく、魔法を使うためだ。なにせ目の前には番人がいるのだから…ただ、この層の番人はおかしい。プリムラが震える声をルシャの後ろから出す。

「な、なんで増えてるんですかぁ…!」

 第5層の番人は滓宝・シャペシュの腕を持っていたメフィストだ。そのメフィストがシャペシュの腕を光らせている。2人。

「分裂か?」

「いや、本物だ。だがどういうことだ?シャペシュの腕が3つということになるが…」

「まさか量産に成功したとでも!?」

「それは一大事だぞ…!魔力が増大しているとするべきだ。あれを奪え!」

 教師陣が一斉に魔法で攻める。ルシャは器用に魔法を操って宝珠を砕こうとしているが、辺り一面に分裂したメフィストを消すのに苦労している。

「分析とか魔法でできねぇのか!」

 苦戦のせいで口調が素になっているノーランが叫ぶと、ルシャがそれを思い描いた。分析と言うべきかは定かでないが、分身体と本体とを区別する魔法があった。分身体は100%魔法で構成されているため、そうではない本体とは異なる。魔法の幕をぶつけて反応の鈍いものが本体だ。これでメフィストの能力がルシャには通用しなくなった。

「ハハハハハ!」

 勝ちを悟ったルシャが容赦なく本体へ光魔法を放つ。意思に従って自在に飛ばされた光の球が本体に食い込むと、魔法反応を起こして分解を促した。『将を射んと欲すればまず馬を射よ』という言葉があるが、ルシャは将から先に落とすタイプだった。

 1体を倒したからあとは第5層のときと同じだと教師陣が攻勢を強める。しかし残ったメフィストが死んだメフィストの落とした杖の宝珠を食った。

「ウヒヒヒヒヒ!」

 目が金色に輝き、身体を包む黒い幕が広がった。残像はより長く残るようになり、分身体は実体ではなく幻想体になった。より高度な魔法を使ったということだ。

「ヒッヒッヒ…!」

 この強化メフィストは幻魔法に特化した形態で、目と耳を惑わせてくる。遠くで鳴り響く鐘の音は挑戦者の終焉を告げているかのようだ。

「イヒヒヒヒヒ!」

 歪な形状をした黒い槍の軌跡は真っ赤で、突き刺さっていないのに血飛沫があがったように見える。それがルシャを捉えた。

「ルシャ!」

 誰もが歪んだ時空にいる錯覚をした。それから戻った直後、貫かれたルシャを見たノーランたちは強烈な違和感に気付いた。

「血が出てない!」

 刹那、ルシャが消え、黒い槍の先端がノーランの直前で落下した。

「ふぅん…」

 それは紛れもなくルシャの声だった。左右に分かれたメフィストの奥にいたルシャは笑っていた。

「パクリです」

「分身魔法をコピーしたってのか!」

「ええ。私はパクリの天才かもしれません。だってできちゃうんですから」

 槍を受けたのはルシャの分身体で、メフィストに攻撃をしたのが本物のルシャだ。

「便利ですねぇ。完全に切り離されていないのなら、入れ替えの魔法も使えます。たとえばそこに作って交換する。そうすると一瞬にして私がそこに移動できるんです」

「なるほど…しかしかなりの魔力を消費しそうだな」

「そうそう、あの杖は…ああ、フェイクでしたか。やっぱりこれが本物ですね」

 杖はメフィストの死とともに消えた。こちらを惑わせるためだけに使った魔法だったということだ。

「ルシャ、戻る魔法をとっておけるか?」

「今のでけっこう使っちゃったのでダメですね。この先へ行くのは次回にしたほうがよさそうです」

「わかった」

 ルシャの魔法で地上に戻った一行はお馴染みの飲食店で反省会を始めた。


 ルシャは消耗して腹が減っていたので大盛りカレーを注文して豪快に食べている。跳ねたルーがシャツについた。

「ああ、お母さんに怒られる…」

「ゆっくり食べなよ」

 ルシャが手を止めると、教頭がメフィストについての考えを述べた。

「滓宝を持っていたから唯一の存在だと思っていたがそうではなかった。あの厄介な敵が複数いるのは我々にとって嘆かわしいことだ。我々が1対1でも倒せるなら大した問題にはならなかったが、現状ルシャに頼らざるを得ない。第5層以下の攻略にルシャは必須ということだ」

「私は全然構いませんよ。こうして美味しい昼ご飯を奢ってもらえますし」

「危険だってことわかってる?」

 プリムラがルシャの気付きを促す。彼女は極めて危険なプロジェクトに参加しているのだから、危機感を持たねばならない。

「こうして落ち着いて考えると、私は自分を超える魔法使いがいないのではと思っていたと気付けます。でもその慢心が命取りになるかっていうと、そうじゃない。私は油断をしているのではなく、より爽快に倒そうとしているだけだからです」

「確かに手を抜いてはいないけど…」

「ルシャは我々教師より多くの自分の身を守る方法を持っています。最も危険から遠い人だってことですから、危険を認識していなければならないのは私たちのほうかと」

「ですが生徒なんですよ?私はルシャが強いと分かっていても心配で…」

 プリムラの言い分も理解できると教頭が前置きをしてからノーランに同調した。

「敵が強くなって戦力差が浮き彫りになった。この先を探索するためにはこれまで以上の備えが必要…備えというのは道具ではなく、我々の戦力だ。ルシャに比肩するほどまで強化しなければならない。従って第7層以下の攻略はしばらく保留とし、十分な戦力を得るまでは特訓とする」

 教師陣も日々成長している魔法使いなのだが、ルシャと比較すると落ちる。メフィストとの戦いで彼女と同じ水準に達していないと厳しいと教えられた。下層への進出を中断するのは賢明な判断と言えよう。

「この先の敵を倒せないことはないでしょうが、歩いて帰ることになりそうですね」

「ああ、お前は転移用の魔力を残しておかねばならないからな…それを使わせる敵がこの先現れると考えていい。俺は下へ進めば進むほどお前の真の力を知れて楽しいが、楽しむ立場になかったと気付かされてしまった。悪いが時間を貰うぞ」

「ええ。私だって何もしないわけじゃないです。一緒に鍛えればもっと下層に行けます」

 教師が上、生徒が下という階層構造を打破したルシャは下にいる教師を引き上げる特訓に付き合うことにした。やっていることがゴチャゴチャと煩雑になってきたので、一旦整理する。

「私がやってるのは週末攻略と研究の2つ。攻略がストップして先生が特訓をするなら研究も止まる。ってことは放課後は先生との特訓だけ」

「だがお前は手芸をやりたいんだろ?その時間まで奪うつもりはない」

「もちろんです。ただ気まぐれで来る来ないを決められたら困るでしょうから、数日前に申告する方式をとります」

「そうだな。それだと助かる。お前がいるのといないのとでは内容が異なるだろうからな」

 ルシャが主体となって活動することになるのは教師としては力不足を感じざるを得ない変化だ。ルシャは自分が参加することで多くを学び成長するだろうと謙虚な姿勢を示して先生の調子が下がらないようにした。

「先生が発想をくれるたびに私はより多才になります。だから一緒に特訓したいんです」

「ああ、感心したよ。俺もお前からいろいろとパクらせてもらおう…」

 この活動についてノーランは自分を先生とは思わないと言った。あまりに大きな問題に挑むとき、挑戦者は皆等しく小さな存在である…上下関係がはっきりしないくらいに。それを聞いたルシャは試しに軽い口調で話してみた。

「一緒にがんばろーね、ノーランっ!」

「あ、萌える」

 ノーランは隣からの強い圧力を受けてかいた脂汗をカレーの辛さのせいにした。


 

 

 日曜日はルシャの自由時間だ。彼女はオシャレな服を着てお出かけをしようと思い立ち、鞄に小物を入れて飛び出した。今日は水色と白のチェックの入ったワンピースを着て髪を後ろで結ばずに垂らしている。足元は爽やかにサンダルを履く。軽快に歩いて市場に行くと、いつもより明るく楽しげに見えた。今日は調子が極めて良い。

「お昼ご飯なににしようかな~」

 市場で売っている野菜も質の高いものが多く、多くの客が買い求めている。ルシャは雑貨店に寄って気になるものを手に取り、いくつかを買った。学校での活躍を目にした母が小遣いを増やしてくれたので、手に入れることを躊躇う必要がない。

 彼女の気分と同調しているのか、街は賑わいを見せている。晴れた日の暑さなど感じないくらいだ。

 棚の下のほうを探って興味のある本を探していると、後ろから声がした。

「ルシャ」

「お?おう、買い物かい」

 渋い低音はラークのものだ。彼は隣にしゃがむと、文学少女に話題を振った。

「妹が文字を読めるようになってきたから新しい本を買えって言われたんだ。けど俺はあんまり本を読まないからどれがいいのか分からん。ルシャ、オススメはある?」

「妹がいるんだ。めっちゃ齢離れてるんだね。絵本がいいのは間違いないけど…有名なのは持ってるかな」

「ああ、小学校で見たのは全部持ってる。隠れた名作みたいなのがあれば教えてくれ」

 そこでルシャは自分の好きな作品名を挙げてラークとともに探した。それは店内の本棚の上の方にあり、ルシャは手を伸ばしても届かない。すかさずラークが手に取った。

「これか。表紙はシンプルだね」

「そうなんだよ。でも内容が深くていいんだ…心温まるお話だよ」

「それなら妹に合うと思う。よっしゃ、ここでルシャと会えたのはラッキーだ。困りごとが解決した。ありがとう」

 ラークは本を買って去った。折角会ったのだからもっと話をしてもよかったし、あわよくばスイーツを奢ってもらおうとしていたから、ルシャは少し残念に思った。そのせいで暑さを思い出したので、昼前には帰ろうと思って噴水広場で折り返した。


 まっすぐ帰ろうとしてもあらゆるものが引き留めるのがこの市場だ。違う角度から見るとえらく輝いて見えるものだってある。それに惹かれて立ち止まると、妖しい風が身体を揺らした。それと同時に襲い来る低い笑い声の幻聴。振り返ると、帽子を被って黒いコートを羽織る人が奥へと歩いて行くのが見えた。こんな日に黒いコートは暑すぎる。ルシャは怖くなって凝視を止め、駆け足で家へ急いだ。震えを止めてくれる人が欲しかった。午前のシフトに入っていた母が帰ってくると、縋るように抱きついて恐怖を打ち明けた。

「老人になると暑さを感じなくなるって言うからそれじゃない?」

「でも普通の老人ならこんなに怖くならないよ!寒いもん!」

「うーん、母さんにはどうすることもできないわ…」

「私の視界の中にいて!」

 フランはそんな娘のために昼食を作って食べさせた。それでもルシャはこの怪異を忘れることができなかったので、自室ではなくリビングで活動した。




 夜になって訪問者があった。男性は警察手帳を見せてあることをフランに伝えた。

「この近くで人攫いがありました。警察が巡回していますが、外出の際は2人以上で警戒してください」

「人攫いだなんてそんなことがこの街で…」

「もしかしてあの黒い人…」

 これまで何度も市場に行っているルシャが1度も見たことのない人だというのと、天気に合わない装いをしていることから彼女は犯人として怪しいと主張した。警察がメモを取り出して詳細を尋ねる。

「近くを通り過ぎただけなのにすごい寒気がして…まるで心を鷲掴みにされて握られてるような。あと幻聴もありました。低い笑い声…ハッハッハ…みたいな」

「なるほど…その点留意しながら警戒します。人攫いの犯人がそいつでなくても気になる人物ですね」

「ええ。早く解決するように祈ってます」

 ルシャは人攫いの犯人があの怪しい黒マントだと断定している。あの姿と言い笑い方と言い、思い浮かぶものがある。

「魔王の完全復活が近いのかもしれない…」

「え?」

「ああいや、こんなの屁でもないくらいに強くなれたらいいなって思った」

「大丈夫よ。母さんはあんたを守るためにいるんだから」

 ルシャはフランの真の強さをまだ知らない。ルートが暴走したときに見せた盾程度の魔法使いではないとはなんとなく分かっているが、もしかしたらそれどころでなく自分以上かもしれない。

 孤独が怖いルシャは母に一緒に風呂に入ることを提案した。フランは笑いながら娘を受け入れ、背中を流してもらった。

「魔法のおかげで自信をつけたとはいえ、もともとあんたは怖がりだったよね。忘れかけてたわ」

「臆病なのは自覚してる。だから1人で戦ったことはないよ。いつもミーナとか先生がいる」

 ルシャは戦闘の可能性があるときには単独行動をしない。仲間の存在が彼女の怯えを取り去っているのだ。母というのは誰よりも安心をくれる人だから、昼からいてくれて助かった。




 翌日、攫われた人が帰ってきたという報せがあった。これは多くの住民にとって不安を解消するもので、被害者の証言によって警察はルシャの見た黒いマントと断定することができた。

「…ですが魔族である可能性が高く、我々ではなく戦士でなければ住民の安全を確固たるものにできません。王都へ派遣された人材を戻すよう区長が便りを送ったようですが…数日は守りが手薄になるため、各々に備えをしてもらうことになります」

「魔族…私は以前、笑う魔族と戦ったことがあるんです。メフィストっていう中級…かどうかは分かりませんが、強力な魔法使いです。攻撃的で目に入った敵をすぐ殺すような奴だと思ってましたが、人攫いをするとは…でも帰したのか逃がしたのか、どういう目的で攫ったのか…」

 ルシャが新たな情報を警察に教えると、より詳細を訊きたいということで警察署に行くことになった。学校へは警察のほうから連絡してくれるそうだ。ルシャが合意したのは1時間目が魔法実技ではなかったからだ。


 警察署は市場から少しずれたところにある。涼しい部屋の高級そうなソファに座ったルシャは偉い人と向かい合って質問に答えた。

「大きな脅威です。犯人が本当にメフィストだとすると、戦士の中でも倒せる人が限られます。人海戦術で分身体を消せるならある程度対応できますが、魔法で一網打尽にされる可能性もあるから、ちゃんと盾を使える人じゃないと…あれ、上位魔法なんです」

「ふむ…私も勇者学校の出だから卒業生が上位魔法を使えることを知っているが、自在に使えるだとか、何度も使えるだとかっていう卓越した人だらけではないのも知っている。倒すためには強力な戦士をぶつけるしかないだろう。一網打尽にされないための策は必要だな…」

 ルシャは加えてシャペシュの腕についても話した。滓宝について知る者は少なく、その力を把握できていない。最大の警戒を要するということでまとまったが、あちらの意図を探る必要もあるため、警察と戦士は忙しい日々を送ることになる。

「はぁ、誰かがなるとは言え、どうして僕らの時代に魔王が復活するかな…」

 定まっているわけではないが、魔王は封印から約100年で復活する。魔族の魂を少しずつ吸収して生命力としているだとか、魔界の沼のエネルギーで身体を修復させているだとかの説があるものの、人間は魔王復活の過程を正しく把握していない。必ず復活すると思っているため語り継ぐことによって備えをさせている。その備えが万全だったかをまた確かめることになりそうだ。

「君は特強だね。強大な敵に対応する力を持っているから協力してほしいってのは無理な要求だよね…だって僕らが命を賭けて守るべき人だもん」

「私を守ってくださるのは非常にありがたいのですが、皆さんが私のために死ぬのは見たくありません。いざという時は私も戦います」

「経験のある者が最も強いのは確かだ。死ななければ我々も経験できる。気合を入れてこの状況を乗り越えるんだ」

 ルシャはすぐにメフィストが街から去ると予想している。警察も戦士も彼女の想像より大きな規模で、全力を尽くせば街に迫る脅威をすぐに排除できるはずだ。自分がそれに加わるまでもなければよいのだが…




 勇者学校の生徒たちも街に漂う不安に怯えているようで、悪い気分になって保健室へ行く者が数人いた。実力のあるルシャがいることはその不安をいくらか和らげているようで、いつもより彼女との会話が多かった。

「大人がどうにかしてくれることを祈ろう。私たちは被害に遭わないことだよ。1人で出歩かないことと、人目に付かない場所に行かないだけでも十分な対策になると思う」

「ちょっとした買い物でもルシャを連れていきてぇよ。お前がいりゃ安心だもんよ」

 大柄な男子でも強力な魔法使いの前には無力に等しい。間に合いそうにないとしても、メフィストに対抗できる戦力を得るために鍛えるのは悪いことではない。ルシャには多くの生徒から特訓のオファーがあった。

「よし、じゃあ皆で鍛えよう!」

 放課後は部活動ではなく特訓に時間を費やすことになった。


 魔法とは魔力と発想の勝負である。自分を有利にするアイディアと、それを実現させる魔力があれば願いが叶うということだ。ルシャは仲間がより多くの魔法を使えるようにするため様々な魔法を披露して学びを促した。

「どうすればルシャみたいに集中を続けられるの?」

 疲労とともに魔法の精度が落ちて的に当てられなくなることがスコア不足の原因だとした友人がコツを尋ねてきた。

「緊張しないことかな。自分こそが殊勲になるっていうふうに思えば多少は身体のこわばりがなくなるんじゃない?」

「うーん、強者の余裕ってやつかな?」

「まあそうだね。『はい今から魔法魅せま~す』くらいでいい」

「クッソ腹立つ顔!」

 変顔をするほど余裕を持てということだ。実力の自信のない人がそれをやるのは難しそうなので、ルシャは助言を追加した。

「魔法は自由なんだよ。この競技ってのは、魔力が尽きるまで思いのままにやるショーなのよ。遠慮する必要なんてないし、やっちゃいけないこともない。ルールだらけの学校で唯一好き放題できるんだから、そうしない手はないでしょ?」

「なるほど…これまで自分の役割を考えて行動するとか、他の人に合わせるとかしてたけど、好き放題でいいんだね!」

「うん。そう思うよ。私はそうやってる」

 ルシャの方法を真似することがより良い結果を出すことにつながると信じて止まない仲間たちは好き放題に魔法を放ってスコアを伸ばそうとした。ある程度結果が出ているようなのでルシャは満足した。

「私は期末テストの順位とかどうでもいいから、皆が中間よりいい結果を出せるよう応援する。この先魔法がこれまで以上に重要になってくるだろうから、鍛えたいって人はどんどん誘ってね。じゃあまた明日!」

「先生!ありがとうございました!」

 仲間が頭を下げるのを止めさせたルシャはミーナとリオンを連れて校門を出た。2人も成長の感覚があったので、先生の言うことや国の指導要領よりずっと役に立つとか立たないとか言ってルシャを褒めたり後ろから抱きしめたりした。ここにはアラーではなくあら^~の神が降臨する。


 その日のうちにメフィストの目撃情報はなかった。きっとこの事件は終息したのだ。そう信じて安堵するほかに心を落ち着かせることができそうになかった。市場にいつもより多くの人が集ったのは、そのことを象徴するためなのだろう。




 しかし翌日の朝の4時ちょうど、世界は急変した。

ルシャが強いのは魔法力だけで他は平均以下です。なのでおばけは怖いです。

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