希望の鍵
そんな喜びも束の間俺は、ふと我に帰る。
まだ終わっていない。
ルカや他の人たちはまだあの変な奴の毒にかかったままだ。
起き上がっている人が誰1人いないのがそれを示している。
俺は、真っ先に全速力でルカの元へと向かう。
途中で転びそうになるがなんや感や耐える。
そしてルカに近寄り、抱き抱える。この際こちらを見ているシューやドランさんは気にしない。
「ルカ!ルカ!」
彼女の流れるような美しい水色の髪に雪のように白い肌、それを俺は優しく撫でる。
彼女の近くにいたシューに俺は聞く。彼は、優秀な魔術師だ。俺の知らない魔術も使ったし、転移の魔術も使った。当然 状態異常回復の魔術も使えるだろう。てか使えないと困る。
「シュー、状態異常回復の魔術って使えるか?」
「使えたら今こうして突っ立てると思うかい?」
「そうだ…な」
それを聞いて俺はさらに絶望する。
「ルカ…ルカ…」
どうすれば…どうすれば…
俺は、目を瞑って眉をひそめ苦しそうにしているルカを見つめる。
俺はそれしかできなかった。
その時、ある物を思い出す。
それは、『始まりの鍵』である。
冒険者になった日、父さんからもらった我が家に伝わってきた鍵。
幾度も使おうか迷い結局今日まで使わなかった鍵。
今こそ使うべきだ。
「ルカ…お願いだ。どうか耐えてくれ。なんでもする…なんでもするから…どうか…」
そう言って俺はルカを地面に丁寧に下ろす。
そして俺は、首にかけてある紐から鍵を取り出す。
この6年間ずっと七色に光り続けているその鍵を俺は、天に勢いよくさす。そして思いっきり回す。
ゴーン。そんな音が響くと同時に、白く眩い光が襲う。
「うっ」
あまりの眩しさに目を閉じてしまった。
目を開くとそこには、白を基調とした丁寧な彫刻が施され天国の道へと続きそうなそして、重そうなドアが目の前に現れていた。
しばらく、その豪華なドアに圧倒させられたが目的を忘れてはいけない。
これに入れば、願いが叶う。
ゴクリ。俺は喉を鳴らす。
「じゃあ、行ってくる」
「いってらっしゃい」
シューは何も聞いてこない。何もかもわかっていたような気さえする。シューは本当に何者なんだ?
そんな事を思いながら俺は、その重そうなドアをゆっくりと丁寧に開ける。
ゴーン。
再びそんな音が響く。そして、また眩しく光る。
「こ、ここは!?」
俺は目を開いて驚いた。先程までの暗い夜空が広がる草原から一変、目の前に広がっているのは白い無限にも感じらる空間だったからだ。
『ここは、亜空間。いわば虚無と現実世界の狭間の空間』
どこからともなくそんな声が響く。
亜空間?聞いたこともない単語だ。
『聞いたこともないのは当然じゃろう。ここの存在を知る者はこの世では限られておるし、秘密にされておる』
うぇ?心の中の声を聞かれた?まじか、怖。
『ああ、聞こえておるぞ。しっかりとな。おいおい、そんな怖がらんでくれ。本当はゆっくりと話したいがなんせ時間が足りん。よって簡潔に一度しか言わぬからよーく聞いておけ』
「あ、ああ」
何かわからないがおそらくこの人から願いを叶えてもらえるのだろう。
『願い?あーすまんすまん。願い事を叶えるとか残したがあれは嘘じゃ。まぁ、楽にして聞いてくれ。んーまず何から話したら良いのかのー。この鍵が使えたということは魔王が本格的に動き出したようじゃし。んー。そう言えば、なぁ、お主名前はなんじゃ?』
「な、名前?えっと、アーベルトだけど」
えっ?それよりも願い事叶えられない?なんで?
そ、それに魔王?
『アーベルト…アーベルト…おお、わしの子孫か。ガッハハ。顔がにとらんて全然わからんかったわい。ガッハハ。おうおう、立派に育ちおって。いいことじゃいいことじゃ。なら、シューという青年がお主の元を訪ねんかったか?』
「えっ?子孫?てことはご先祖様!?てかなんでシューのこと知ってんの?」
頭の中が???状態だ。
『そうかそうか。なら何故、ここに呼んだか教えてやろう。それは、わしの血を引く者、まぁお主のことじゃそれと転生者これはシューのことじゃな、と初代勇者の血を引く王家と転移者の4人じゃな。彼らを、わしらは特異点と呼んじょる存在で、魔王を完全に討伐するためにわしらが残した希望なのじゃ』
えっ!?
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