スタンピード1
何でこうも立て続けに、ハラハラすることが起きるんだ。
ああ、今すぐにでも街に戻りたい。
周りにいる冒険者たちは、一斉に自分の獲物を構え戦闘態勢にはいっている。
「おい、坊主。なんだぁ?その顔は?」
誰かが話しかけてきた。声のする方を見ると筋骨隆々の厳ついおっさんがいた。着ている服がばつんぱつんになっており、今にもはち切れそうだ。特に背中の筋肉がすごいもっこりしている。
オッパオ見たい。
「いや、ちょっと立て続けに嫌なことが起こりすぎて疲れてるんです」
と俺は素直に答える。
実際に、ここ最近、入っていた冒険パーティーをいきなり追放されて、好きな子を変な奴らに襲われて、竜王山とかいう魔物の蔓延るヤバいところに無理やり拉致られて、さらにそこから通常の倍のスタンピード。
流石に嫌になりそうだ。
「なら何でここにいる?」
続けておっさんが話しかけてくる。
何でここにいるのかって?そりゃ冒険者だからに決まってる。でなきゃ今頃街の中に避難してる。考えればわかるだろ?もしかして、筋肉バカか?
「冒険者だからです」
自分でも語気が強くなるのがわかった。ああ、イライラする。
あと数百メートルで魔物たちがこちらにたどりつ。
てか、ギルドマスターは?なんで指示しないの?早くしないとヤバタニエン。
「なら、お前は何で冒険者になった?」
そうだと、言うのにこのおっさんは、いまだに俺に語りかけてくる。
そもそも誰なんだ?少なくともアクセスの冒険者じゃないことはわかる。
俺は、この街からあまり出ないため、ここに住む冒険者はだいたい把握している。しかし、このおっさんが何者なのかわからない。
聞いてみるか。
「そもそも、あなたは何者なんですか?それと良い加減武器構えとかないと、魔物来ちゃいますよ」
さらに語気が強くなったことで、ルカやシュー、周りの人などもこちらに注目している。
「ああ、そういえば名乗ってなかったな。ワシの名前は、ドラン。冒険者ギルド アクセス支部の代理ギルドマスターだ!ガッハハ」
と大きな声で言った。
えっ?代理のギルドマスター?なら何で俺個人なんかに突っかかってんの?さっきも言ったけど、早く冒険者の指示しないと。
てか周りも驚いてる。
てか、代理?なら本来のギルドマスターはどこにいるんだ?
「代理のギルドマスター!?まぁ、もうなんでも良いや。なら、早く指示をください。もうすぐ魔物と接触しますよ!?」
代理とは言え、ギルドマスターに代理を任せられるほどだ。期待しよう。もう手遅れかもしれないが。
「おお!?それもそうだな。ガッハハ。すっかり忘れておった。
おし!お前ら聞いてくれ。
前衛職、盾のジョブ以上は前線に立って魔物を後ろにうまく流してくれ、その中で下級の冒険者は中級や上級の邪魔にならないように下級魔物をある程度間引いたら隙を見てすぐに前線を引いてくれ、そして、ギルドに戻って『ライト』の魔道具をありったけもってこい。
そして、中級、上級の前衛、盾のジョブ以上のものは、中衛の剣、槍、戦鎚、格闘などのジョブのものにうまく振り分けてくれ、その後の手腕は、中衛、お前たちにかかってる。
あとは、後衛、魔法、弓のジョブは前衛、中衛をしっかりとみて援護してくれ。ここが一番人数が少なくて、大変だろうが、頑張ってくれ!
怪我をしたものは遠慮なく下がってくれ!だが、その行動が街の命取りにもなることを重々理解しろ!
いるかは、わからねぇがもし回復のジョブがいるならその時は、後衛より後ろに下がって怪我した人を見たら回復してやってくれ。
いなかったら自分で処置しろ!
それから、騎士様は来ちゃくれねぇー。お前らがこの街の最後の砦と思え!
よし!みんな準備しろ!この戦い、絶対に乗り切るぞ!」
『おおーーー』
みんなのやる気は上がる。それに最低限の指示はしてくれた。
まぁ、大体は、そのような形で並んでたのもあるがなんとか魔物が来るまでに陣形を作り終わった。
「いよいよだね!アル!」
とシューは、ワクワクしている。
俺とシューは後衛。
ルカは回復職の場所へ行った。
そして、日は沈み始めオレンジが強くなってきた。
このスタンピードは、どれくらいの時間がかかるかわからない。暗くなるのも時間の問題。
おそらく、下級冒険者に『ライト』の魔道具を取りにいかせたのは、そう言う理由だろう。
『ライト』の魔道具は、中から小の魔石を使う魔導具で、夜間の戦闘などで役に立つものだ。
この戦い、なんとなく嫌な予感がする。
俺のこの予感はよく当たる。それは、何度も命が助けられたことで立証済みだ。
そして、段々と魔物の姿がはっきりと見えてきた。
ゴブリン、ボア、ベア、ディアーなどの下級魔物こら、オークをはじめビックボア、ビックベアー、ビックディアーなどの上位種である中級魔物や上級魔物など目で見えるだけで30体はいる。
対してこちらの戦力は20近くあるか無いか。
さぁ、厳しい戦いの開始だ!
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