かち
その翌日も予定通り冒険に行くことにした。
てなわけで冒険者ギルドに来た。
「うーん。今日もビックボアかな?」
最近魔物の発見量が少なくなっている。まぁ、しばらくしたら、また増えるだろう。
「そうですね。まぁ、ちょっと遠いところにビーの群れがあるみたいですが、私たちだけでは無理ですね」
「そうだな。まぁ、人が増えたらそう言った冒険にも行きたいな!」
「そうですね。」
俺たちは昨日と同じ場所へと向かう。
「アルさんって魔法士なんですよね。何属性使えるんですか?それと、剣のジョブも持ってるんですね。」
???
ルカ突然そう言ってきた。
「えっ?魔法士?俺は魔導士だよ。それに、俺は魔導士のベストジョブだけだよ。」
「えっ?でも昨日魔石使ってました?」
「使ってたよ。まぁ、あと残りの量が少ないけど。腰に刺してる剣は、魔石が少なくなった時用。父さんが剣使いのジョブ持ちだったから護身程度に教えてもらったんだ。だから、そこそこ使えるって程度かな。」
「そうなんですかー。あっ!いました。街からそんな離れてないのに見つかるなんて、ラッキーですね。」
「そうだけど、こんなに近くにいて大丈夫なのか?」
「まぁ、今から倒すんで問題ないでしょう。」
「ファイアボール」
使ったのは小魔石のようだ。それにしてもルカも詠唱を飛ばせるのか。
ファイアボールが当たったビックボアは、ぶもーという断末魔と共に生き絶えた。
しかし、肝心の魔石は出なかった。まぁ、魔石はなかなか出ない。だから価値も上がっている。
「勝ちました。」
ルカが嬉しそうにいう。
「おめでとう。」
俺も賞賛する。彼女は魔導士として本当に優秀かもしれない。
そればかりか回復士のジョブもある。
彼女を役立たずだなんて言った奴はクズだ。
そんなことを考えていると冒険者のパーティーらしき人たちが近づいてきた。
「ブッキングかな?」
「そうでしょうね。」
「一応、三体確認されてるから、1匹倒したことを伝えよう。」
「はい。」
「ここにいる一匹は倒しましたー。」
と大きな声で向こうの人たちに聞こえるように言った。
距離が近づくにつれその容姿が明らかになった。
全員が黒づくめの格好で、手には山賊のナイフを持っている。
まぁ、こちらの意思が通じたかどうかわからないけどいいか。
「じゃあ、多分向こうもわかっただろうし、このビッグボア担いで戻ろうか。」
そう言って、ギルドに戻る。
しかし、それは叶いそうになかった。
「おい、お前ら。止まれ。でないと殺すぞ?」
とどすの効いた声でナイフを向けられた。
「なんのようだ。」
俺もそれに対抗する。こういうのは弱気になったら負けだ。
「ああ、ちょっとそこの価値のない役立たずの女に用があってな。お前は引っ込んでろ、そして俺様たちのことは口外するなよ。命が惜しけりゃなー。ガハッハ」
なんだと?彼女に価値がない?こいつの目は節穴か?
それと気持ち悪い笑い方をするやつだ。
「彼女は俺の仲間だ。それに彼女の価値は存分にあると思うが?」
こいつらにとって価値がないかも知らないが俺にとっては大切な存在だ。
「引っ込んでろって言ったろ。まぁ、いいこの前の落とし前つけさせてもらおうじゃないか。ガッハハ」
この前?まさか!
「お前、違法奴隷の売買人か?」
「そんな人聞きの悪い言い方するなよ。俺様は、ただ。貴族様に使用人の紹介をしてるだけだ。奴隷なんかほど遠いいぜ。ガハッハ」
とどすの利かせた声。多分リーダーらしき人が言う。
「じゃあ何故彼女なんだ?貴族に価値のない女を紹介するつもりなのか?」
反論する俺。
「ああそうだ。冒険者としての価値は低いが、幸い見てくれはいいからな。そっちでは価値があるかもってだけだ。WIN-WINだろ?その女は、ただでさえ危険な冒険者をやらずに、俺たちのおかげで悠々自適な生活が待ってるんだからな。だから、よそのお前は引っ込んでろ。これがラストチャンス。警告したからな。ガハッハ」
ああ、無性に腹が立つ。俺は残りの少ない魔石を数個取り、俺が10年間で培ってきた魔導全てを捧げる。
「俺からもラストチャンスだ。今すぐ俺の女から引け。俺の仲間に手ェ出すんじゃねー。わかったな。」
「なら交渉決裂だな。ガハッハ」
みたいだな。
この男はすごく強い。そして、周りの奴も普通じゃない。これは、魔石大放出しなきゃいけないな。
「そのようだ。ファイアボール×5ウィンドカッター×3」
小魔石5個と中魔石3個これが俺の持つ全ての魔石。でもこれでルカを守れるなら安いものだ。
「それで終わりか?金食い虫さん。ガハッハ」
砂埃の立つ中からそんな声が聞こえた。やはり仕留めきれなかったか。
しかも、魔導士だと気付かれた。
砂埃が晴れる。目の前に一人と周りには、倒れた人が二人だけで、あと一人はいなくなっていた。
逃げ足の速い野郎だ。
しかし倒せたのが二か、思ったより痛い。それに、ウィンドカッターとファイアボールを使ったせいでその二人は、風で服や皮膚がボロボロになり、さらに焼きただれて匂いがすごいことになっている。
「それにしても、こんな価値のない奴にそんなに魔石使ってよかったのか?よっぽどの金持ちか、それかその女に惚れたとかか?ガハッハ」
「まぁ、どのみちさっきので魔石は使い果たしたようだし教えておく。冥土の土産にでもしてくれ。俺のベストジョブは盾士。そして、剣士のジョブもちだ。ガハッハ。ふっ!」
そういって、手に持っていたナイフで切りかかってきた。
盾士なら、防げたのには頷けるそれも熟練だろう。
剣士のジョブか。
「ごめん。ルカ。君を守れそうになかったよ。」
そう言って下を向いた時、首にかかっている紐が見えた。
それは、父さんに渡された鍵を繋いだ紐だった。そうだ、今こそこの鍵を使うべきだ。
そう意を決して、鍵に手をかけた時。声がかかった。
「ちょっと待った。」
声を出したそいつは、派手な金髪の青年のようだった。
お読みいただきありがとうございます。
[面白かった。』、『続きが気になる。』という方は、評価、ブックマークをしてください。




