3章9話/一目惚れした相手をその場で叩き殺す悦び
事態は冬景色氏の予想した通りに推移した。第六旅団は騎兵突撃の完遂に失敗、そのまま泥沼の歩兵戦へと突入した。
――独立第八歩兵大隊長こと橘二年生は我が旅団の求めに対して次のような返事を寄越した。『アンタら、バカァ? 頭脳が間抜けなんですか? 無理に決まってんでしょ、そんなこと。はー、ったく、低学歴はこれだから。一応、説明しておきますと、我が大隊の現有戦力、位置、それに兵站状況ではオタクのお馬鹿ロリ女の要求に答えることは不可能です。無理。無理無理無理。サヨナラ。バイバイ。元気でいてね。以上』
『第ニ旅団長』と、独立第五歩兵大隊長は話し始めた。神経質そうな彼の容姿はステレオ・タイプの高学歴そのものだった。語調も至ってそれ風だった。全身、泥だの血だので汚れているが、どういう訳か髪の毛だけは丁寧に整え直していた。(髪の色艶からして、日頃から拘りをもって手入れしているらしくある)
『先に立場を明らかにしておきましょう。自分は貴方のことが嫌いです。依怙贔屓されて旅団長になった貴方がね。恐らく貴方の方でも私が嫌いなはずです。その私が貴方の要望にお応えすると本気でお思いですか。そもそも、私の大隊は既に二度に渡って防御戦闘を行っている。一度目は一個中隊を欠いた大隊相手だから良かったが、二回目はほぼ完全編成の連隊相手でした。想定されていた敵よりも多く、強く、我が大隊の受けた損害は少なくない。なにしろコチラの陣地化はそちらさんほど完璧ではなかったのでね。兵站の受けている圧迫も大きい。例の事故は我が大隊にも影響しました。その状態の? 私たちに? 第六旅団と交戦中の敵を突いてくれ? 要するにそれは貴方たちの側面後背を守れということだ。敵軍団の乏しくなっている警戒能力を全て我々で引き受けろということですね。貴方たち低学歴の旅団長とその愉快な仲間どものために、私は、私の大隊の、私の部下の、私と彼らの、その、順当に行けば抜け目ないはずの未来を損なわねばならないと?』
考察するに、彼の母親の語尾は『ザマス』だろう。私は無表情を保った。その無表情を彼はジッと眺めた。数秒がそのまま経過した。私と彼は二人である街道の端に立っていた。風が凪いだ。
第五大隊は騎兵伝令に応答しなかった。我々が伝令を送った先――当初の陣地を放棄していたからであった。だからこうして私と大隊長とが直接、面と向かって話しているのは偶然である。大隊長がどことなく自慢げに語った如く、第五大隊は熾烈な防御戦闘を実施後、損耗して後退中のところを、敵軍団司令部目指して行軍中だった私に捕まったのだった。
辛くも縦列を形勢している第五大隊はパッと見ても二割強、それぐらいの兵力を喪っていた。それでもキッチリと砲を捨てていない辺りに私と第五大隊長の性格や手際の違いが現れている。彼は優秀な男らしかった。
推察は直ぐに確証へと変わった。第五大隊長は今時、キレイな七三に分けた髪の毛を後頭部へ撫で付けながら笑った。私は驚いた。彼はその私の様子を見て笑いをより柔らかいものにした。友人や親しい相手にはこういう笑い方を出し惜しみしない男なのだろう。
『立場や好き嫌いだけで何でも決められるならば、ま、人生は素晴らしいものになるでしょうが、そうもいかない。そういうことをしていたらロクなことにはならない。ここは理性的な判断を下しましょう。第ニ旅団長、いいですか。よくお聞きなさい』
彼の街道の両脇に広がる林の片割れを指差した。『貴方たちはその林を突っ切って行くのです。貴方たちの推定が正しいとすれば敵軍団司令部方面への近道が幾つかある。それも警戒線の張っていないような近道がね。安心してください。嘘ではない。我々はこの辺りの地形をこの二日、嫌というほど捜索して知り尽くしていますから。兵を、いやいや、プレイヤーを一人、着けて差し上げましょ。案内させます。我が大隊はこの街道をしばらく進んだところで別の林を利用して敵軍団側面を突くということでどうでしょうか。本来なら貴方たちの進むのと同じ道を使いたいが、そうすると色々、不都合ですからね』
『いいのですか?』私はあくまでも事務的に尋ねた。
『いいのです。コレは自画自賛で言うのですが、私の手腕ならば、いまのこの状態の大隊であっても戦闘を続けさせることができる。もう戦争をする気がなくなっている部下を奮い立たせることもね。ええ、確かに我が大隊はモヒートに帰れないかもしれない。が、貴方たちの攻撃が通れば……。通れば、ふふふ、手が震えますね? 我々は勝つのだ。通らねば負ける。それだけのこと。いいでしょう。いいのです。我々は貴方たちの要求を完全に満たしましょう。ですから貴方たちは私たちの要求を完全に満たしてください』
彼は私に右手を差し出した。『私は初めて低学歴と握手をする。今後ともないことでしょうね。いまだってきっと気の迷いだ。いいですか。約束ですよ、腐れ低学歴。勝ちなさい。勝たせなさい。そうすれば我々だって胸を張って『左右来宮のために死んでやったのだ』と言える。そして貴方たちは生き延びるのです』
『ありがとうございます』私は彼の右手を両手で握り返した。『なに、私もこれが初めてする高学歴との握手です。案外、悪いものでもないかもしれないですね』
『リップ・サービスなどしている場合ですか。さ、行きなさい。行って仕事をなさい。私もそうする。もう無駄口の時間ではなくなりました。ふん、これだから低学歴は。全く。全く全く』
その後、独立第五大隊は約束を履行し続けている。持てる全戦力を以て敵軍団側面を攻撃、その指揮系統を圧迫してから素早く相手の背後に回り、その兵站線を脅かすことで敵が我が大隊を発見する余裕を奪い取っている。
尤も、所詮は疲れ切った大隊ひとつ、敵軍はまもなく彼らを粉砕するだろうこと疑いの余地もない。大局的に見ればこの右翼戦場内、有利なのはダイキリ軍であって、モヒート軍は刻一刻と敗北に近付いていた。――
ついにここまでやってきた。私は濃い森林の切れ目に近い地面に腹這いになっていた。肩の上をムカデのような虫が這っている。気にしている暇はない。
望遠鏡を使う。目標は指呼の間であった。我々が指揮所を置いていた集会場、ついでに吹き飛ばしてしまったあの跡地にテント群を設営して、それを司令部としている。
ここまで一度も迷子にならなかったのは奇跡という他にない。もし迷子になっていれば? 到着が遅れて何もかも間に合わなくなるところだった。第五大隊の融通してくれたプレーヤーのお陰だろう。地図とコンパスだけならばこうはいかなかったはずだ。
そのプレーヤーは一年生だった。私はこの辺りに独立第五大隊長という青年の人柄を見た。一年生の彼は私には好意的では決して無かったけれども、己の職務については誠実にこなした。それだけでよかった。
我々は砲も馬も有さない。どちらも、この、数十センチ間隔で木の茂る中へは持ち込めなかった。純粋な歩兵部隊そのものだ。
そして司令部テント群は、一個歩兵連隊によってガードされている。歩兵同士、正面切っての殴り合いで勝つことはできない。
だが奇襲に備えてか、敵はその歩兵連隊をンパ村の周辺に分散配置している。ここから大隊を突撃させたとして、まず、ぶつかるのは一個中隊程の小勢だった。
それに奇襲を警戒しているとは言い条、卒爾、一個大隊が現れればそうそう対応し切れるものではない。短いだろうが混乱が起きる。その混乱を利用すればよろしい。なにも全てを敵を殺し切る必要はないのだ。
邪魔な敵だけを打倒する。テント群を襲う。中身を殺す。焼く。逃げる。後はどうなる? 浜千鳥君のケースと同じだ。軍団の動かし方の教育など受けたこともない指揮官が野戦昇進、幕僚もいない状態で軍団を動かすことになる。
隷下部隊は進むも引くも補給さえもままならなくなってまごつく。その間に砲撃が始まる。(どんな生物だろうが組織だろうが頭の潰れたものは一巻の終わり、存続することは難しい)
不意に、望遠鏡内の景色に変化が生じた。敵軍団司令部へ騎馬伝令が駆け込んできたのだった。次いで、ほぼノータイムで敵連隊が歓声をあげた。遠く、いましがたまで鳴り響いていた音楽と銃声が止みつつあった。第六旅団が打ち負かされ始めたに違いない。ある敵プレイヤーの口元は『俺たち勝てるみたいだぞ!』と動いていた。あるプレイヤーは別のプレイヤーと抱き合っていた。泣いている者すらいた。『やった、勝てる! 勝てる! 勝てるんだ! アイツもアイツもアイツも報われる!』
いまだ。私は思った。いまなら瞬殺できる。ドサクサに紛れて高学歴を殺しまくることもできるだろう。
喜ぶべきはずなのに手が震える。本日二度目のそれは何時ものアレ、罪悪感であった。『なぜ、お前は高学歴をぶちのめして喜ぶのか? お前が苦しめようとしている高学歴はお前を虐めていたあの高学歴どもとは違う人々なんだぞ。同じ高学歴だからというだけで痛めつけていいのか。さっきのアイツを思い出せ。自慢の部下を思い出せ』
はん。どうせ突撃を始めて暴力を振るい出せば、こんな迷い、たちどころに消えてしまうのに。
罪悪感は此の世で最も都合の良い麻薬にして免罪符だ。それを感じてさえいればなんでも自分を正当化できる。他人からの同情を得ることも。可哀想な自分をアピールすることも。与えられて然るべき罪から逃れることさえ。唾棄すべきものだ。罪悪感を覚えて苦しむぐらいならハナからやらなければいい。
私はマスケット銃を天に向けた。装填のされていないそれを抱きしめる。ひんやりと気高い木材の感触が私を落ち着かせた。
「天にまします私のお祖母様よ。性格が悪くて顔が悪くて腰が悪くて内臓が悪くて態度が悪くて趣味が悪くて口が悪くて柄まで悪い、悪いところしかない私のお祖母様よ、願わくは私に貴方の人の悪さをお貸しください」
アーメンならぬソーメン――祖母の好物である――を唱え終わった私は、ふと、そばで私を見ていたらしい夏川さんに気が付いた。黒色火薬で塗りつぶされた彼女の顔面は入り組んでしまっていた。馬鹿にしているようでもあり同情しているようでもあった。
「アンタ、確かに私と似てるかもね」彼女はぜんまい仕掛けのように笑った。
「ここでくたばらないでよ。一度、アンタとは話をしてみたくなったから。約束よ」
ニヤリ、私は右腕を振り上げた。「大隊、突撃準備」
頂を経由して各中隊で復唱があった。大隊に所属する全ての将兵が腰のベルトに鞘を吊るしている。その鞘から三〇センチ程の長さの銃剣を引き抜いた。銃剣は面白い形状をしている。ソケット型と渾名される通り、柄――ということになる部分は円筒状で、その円筒から、L字に刃が突き出している。この刃は、刃とは言うけれども、形状は針型、斬るのではなく突き刺すことを目的としていた。
銃剣の銃への装着と固定は、この円筒を、銃口に覆い被せるようにして差し込むことから始まる。そう手間は掛からない。差し込んだら、ソケットを右に左に回転させて、ソケットに刻まれている溝に銃口上部の銃剣装置、名前こそ大仰だけれども、要するに突起を嵌め込む。
最後に、溝の出入り口、そこにあるストルム・リングを回転させる。蝶番とピンで固定されたこのリングは、言ってしまえば溝を塞ぐ役目を果たすもので、マスケットを振り回しても銃剣が外れないようにするための仕掛けだ。
どうして銃剣の柄がソケット型でなければならないかと言えば、難しい話ではない、そのような形状でなければ銃剣を装着したまま発砲することが出来ないから――ということになる。
突撃だ。突撃だ。銃剣突撃だ。歩兵の本領だ。ゼロ距離での殺し合いだ。白兵戦だ。楽しみだ。怖さもある。部下たちはどうだろう。
我が大隊の第ニ中隊は浜千鳥君が指揮している。彼はやはり二人の下士官に励まされながらも震えていた。第三中隊を指揮する須藤君は余裕綽々、古き良き日のキラー・エリートそのものの態度であった。
第一中隊を任せてある夏川さんが私に微笑みかける。私も微笑みを返した。
「酷い顔ね」夏川さんが指摘する。
「アナタもですよ」私は口答えした。
普段通りの夏川さんであればキレたろうに。突撃前、これから死ぬかもしれないという人間は妙に優しくなるもので、彼女は笑ったまま頭を振った。これからは、彼女と接するときは必ず突撃の号令を下してからにすれば良い関係を築けるかもしれない。
「旅団長、突撃準備が完了しました」頂が報告した。彼女は私の俄な興奮を見て取っている。だからその報告は諌めるような一種の調子を孕んでいた。私はそれを意図的に無視した。或いは、もっと露骨で正直に言うのならば、水を差さないでくれと優しい親友を呪った。これだけが私の楽しみなんだから。
「ならば征きます」
大声を張る。喉が痛い。知るか。声など枯れろ。「大隊突撃! 目標、正面、敵軍団司令部ッ!」
敵連隊がどよめいているのがわかった。ああ、やっぱりだ、と私は右手を振り下ろしながら結論した。
「――突撃! 突撃! 突撃ィッ! ぶち殺せぇッ!」
突撃を始めてさえしまえば迷いなんて忘れてしまう。私はその程度の女だ。
喇叭手が突撃喇叭を吹き鳴らす。我先にと私は森の中を飛び出た。ゲーム内の脚力には自信がある。あったのに、私より先に森を飛び出たプレイヤーと兵は多かった。彼等は横一線、敵の司令部めがけて只管に突っ走る。
私たちは吶喊した。要するに怒鳴るのだ。意味などいらない。そうするだけで白兵戦の恐怖と罪悪感を忘れられる。そのうち息が辛くなってくるがこれも知ったことではない。走れ。走れ。走る。敵との距離はぐんぐん縮まる。
マスケット銃の咫尺に入った。それでも正面の中隊は化石していた。呆然とばかりに口をまあるく開いている馬鹿がいる。プレイヤーだ。構うものか。私は彼めがけて突進した。腰だめにしていたマスケット銃ごと彼の身体にぶつかった。息が止まる。彼もろとも私は地面に倒れ込んだ。
柔らかいものに銃剣がぶすぶすと突き刺さっていく。その感触が直に伝わった指先と背筋とが少しだけゾワゾワする。半分だけ凍っている鶏肉に包丁を突き刺したときのような気分だ。手元に生暖かい血飛沫が跳ねてきた。
私の銃剣を下腹に食らっても彼は生きていた。私の銃剣は横たわる彼の腹に対して垂直に差し込まれている。彼は銃身を両手で抑えた。これ以上、刺されてなるものかって? そうはさせないよ。私は彼の脚の上に座り込んだ。そうして銃を上半身全部で、まるで自分を捨てようとする男に縋り付くように抱え込み、下へ向けて体重を掛けた。
筋力と筋力のぶつかりあいだ。我々は二人してフウフウと荒い息をしている。苦しい。私は笑う。彼は歯を食い縛る。ンンンと唸る。どうにかして銃を押し戻そうとする。その力が強い。今度は私が唸る番だった。目を見開く。噛み合わない奥歯がギリギリと鳴る。表情筋が突っ張る。押し返されそうになる銃を押し戻す。
溜まる。溜まる。腕に乳酸が溜まる。痛くなってくる。筋肉が痙攣する。額から垂れてきた汗が目に入る。涙が出る。目の下の炭と混ざりあったそれが黒い雫になって私の頬を顎へと落ちていく。それがわかる。手に取るようにわかる。彼の額の上に私の汗が落ちる。彼の汗と私の汗が混ざる。彼の汗の塩分濃度は私のそれよりも濃い。その液体にまた彼の涙が混じる。彼の、全身全霊の力が込められた頬から顎に掛けてのラインは綺麗な逆三角形になって震えている。彼の瞬きの回数はとんでもないことになっていた。
私は彼のしぶとい腰使いにメロメロになってしまった。本気で彼にキスしてやろうか悩んだ。だが殺した。彼は死ぬ直前に「やめてくれ!」と悲鳴をあげた。駄目じゃあないか? 無酸素運動中に喋っては。息をしてしまうと筋肉が緩む。私の銃剣は信じられないほどスムーズに彼の脊椎を切断した。
手強い相手だった。私は呼吸を整えながら思った。やはり見ているだけと自分の手で実際に殺すのとでは満足感が違う。
手で額の汗を拭うと顔中が血でベタベタになった。ああ、そう。それにしても――水と油を一緒にすると分離するでしょ。人間の脂が血液に溶け出してもそうなるんですね。今日、初めて知りました。このゲームの中でだけかもしれないけど。物理演算が色々と甘いから。なにしろ人の血飛沫で虹が出ますからね。悪趣味ですよね。まあそれもどうだっていい。
赤黒くなった銃剣を引き抜く。中腹から折れ曲がっている。銃そのものにも歪が生じていた。ならば、と、死んだ彼の持っていた銃を奪い取った。装填されている。手近なところに居た敵を撃とうとしたら、その彼は頭に流れ弾を食らって死んでしまった。誰が撃った。私の獲物なのに。まあいい。アレは天使の分前ということにしてやる。次は――
ではない。私の中で何かのスイッチが切り替わった。違う。ここはいつもの小競り合いの場ではない。私は頂を呼んだ。彼女は私が一人、殺す間に四人近く片付けていた。近くというのは、三人を殺したところで銃剣が折れたので、最後の一人は徒手空拳で半殺しにしたという意味である。
敵中隊は潰走しつつある。我が大隊は中隊ごとに(目印の中隊旗付近に)再集結を果たそうとしていた。敵連隊は? コチラへ向けて動き始めたものがある。
「頂、伝達してください。ココからは予定通り中隊ごとに行動します」
私はベトベトの手を軍服に擦り付けた。なんだかアンニュイな気分だった。「夏川さんの第一中隊は私と共にココで粘れるだけ粘って他中隊を支援します。次の敵が来るまで五分もありません。応急でいいので横列を形成。急いで。第ニ中隊はテント周辺を抑えてください。第三中隊はテント内へ突入。敵高級士官を逃さないように。各中隊、厳しい戦いになりますが奮闘を願います。――君」
私は例の第五大隊長から借り受けた一年生が、毅然と振る舞おうとしているものの、気分を悪くしているのに気が付いていた。「平気ですか」
「平気です」彼は虚勢を張った。いいね。そうできれば充分である。
私は吉永さんにしたように彼の背も叩いた。「もう一合戦、行きますよ。今回は何人、殺しましたか? 一人? 二人? 次は三人は殺してください。いいですね」
「いいです。殺します。三人。大隊長との約束を果たすために殺します。畜生、殺します」彼は生唾を飲みながら頷いた。見どころのある一年生だった。第五大隊長のためにもせめて彼だけは生きて返さねばと私は思った。
敵が殺到してきた。





