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番外編1章1話/口にまかせ
「タピるぐらいなら死ぬわ」と、サトーは言った。
また別の日にはこう言った。「タピってる奴を見つけたら殺すことにしてるの」
それでいて、彼女、ブームが落ち着いた頃になってタピオカにドハマリした。来る日も来る日もタピオカ・ミルクティーをタピタピしていた。キャッサバをキャッサしてサバしていたこともある。「ハー、本当、タピオカって最高。え、なに? 私、昔から好きだったわよ。私が嫌いなのは流行りだの廃りだのに敏感だと信じている馬鹿どもよ」
無論、サトーはそれから数カ月後にはタピオカのことなど純潔サッパリと忘れていた。
つまり――、それがサトーという彼女の実態だった。英雄ではなかった。ただの女子高生だった。メディアが語るような天才でもなかった。
最初の二年間は。