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最終話/りゅうのかみさま。

『りゅうのかみさま。』


(本の表紙に貼られてあった付箋)……左右来宮さんへ。いつかのお約束通り、私の知っている、とても優しいお話の本をお貸し致します。 玉田


(付箋を読んだ左右来宮左京の反応)……「これが優しい物語だと? お前、どうかしてるぞ。――ありがとうな」


 ある山の滝に龍の神様が棲んでいました。龍の神様はなんでも願い事を叶えられる力を持っています(えっへん!)。龍の神様は親切なので、頼まれれば、人助けをすることもあります。その龍の神様のところへ、近頃、毎日のように通う女の子がいました。 


『かみさま どうか わたしをかぞくのところへ かえしてください』


『おまえには もう りっぱなかぞくがいるではないか』


 女の子が泣きながら帰ると入れ替わりにおじいさんがやってきました。


『かみさま わたしよりさきに おんなのこが ここへ きませんでしたか』


『うん きたきた おまえはあのこの なんだ?』


『じじであります』


『ふむ そうか だが おまえにはかぞくがいないようだな』


『かみさま それでおねがいがあるのです どうか あのこのねがいをかなえないでください』


『どういうことだ わたしには さっぱり わからない』


 神様は困ってしまいました。なにがなんだかわかりません。二人はそれからも毎日、神様のところへやってきては同じお願いを繰り返します。神様は尋ねました。おまえたちはなぜそのようなことを願うのか。二人は答えません。神様はいよいよ困り果ててしまいました。


 さて、どうしたものか。ある雨の日です。どしゃぶりで大変なのにあの二人はやってきました。そして、いつものお願いをして帰っていきました。神様は棲家の底でとぐろを巻きながらあの二人の関係や境遇について推理しました。でも、推理すればするほど、その推理は当たっていても外れていても悲しいように思われます。


『にんげんは ふくざつだ あわれにもかんじられる よろこびでも かなしみでも ふこうになることがあるから … …』


 神様はもう何もしないことに決めました。誰のどんなお願いもきかないことにたのです。しかし、心優しい神様のことですから、ときによってはこう思います。おや、だれかきたな。会ってやろうかな。困っているのかな。でも、お願いをきいてあげたところで何になるというのだろう。


 さて、神様はどうしたと思いますか?


 おしまい。


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