2章2話/組織が滅ぶ理由はだいたい贔屓
連合生徒会館の大会議室には都合、一五〇人以上の学生が集まっていた。隔離された幹部席に向かって長机が縦横の列をなす。それぞれの長机には五人ずつが着席していた。座席は指定されている。最前列左端から階級順だ。
私以下、低学歴の姿は五人かそこらだ。私の席は、なにしろ学校が特別待遇なので、六〇番半ばに割り当てられており、他の、末席に据えられている同志たちとはコミュニケーションの取り様がない。それでいいのかもしれなかった。四面楚歌、高学歴どもが私を白眼視するのは当たり前として、低学歴だからといって低学歴に好意的であるとは限らない。高学歴に付和雷同を繰り返す、どことなく怨嗟の籠もった目線を向けてくる、敢えて馬鹿を演じる、演じる必要もなく馬鹿である、――彼らも洵に多様である。
無論、あずましくはない。だが、それを顔に出せば難癖をつけられる恐れがあった。私は何食わぬ調子で、実際には落ち着かない気分を糊塗するため、腕に着けた腕章を弄った。腕章には我が独立第一三連隊連隊旗の紋様が刻まれている。右手にカンテラを持ったドクロの死神が――『さあさあ、お先にどうぞ!』とばかりに――左手で誰かを促している意匠だった。
このようにして数分、待っていると、会長の公設秘書官が入室してきた。彼の「会長が入られます!」の声に応じて室内の全員が申し合わせたように席を立つ。古い、忘れかけていた知人が唐突に寄越した手紙のように傲慢な軍幹部と会長らに向けて頭を垂れる。ジャスト三秒、丹田の奥でゆっくりと数えてから頭を上げた。この動作も全員が同時に行う。もし、この動作のタイミングを大幅に誤れば? 良くて村八分、悪ければ卒業後にまで噂が続く。噂はネットなどを通じてこの場にいない世界中に共有される。『あの人は礼儀がなってないらしいネ。育ちが悪い人って最低だよネ。多分、身内がやばい人なんじゃないかネ。きっとそうだよネ』
幹部が着席したところで私たちも席に復する。おや、と、私はスカートの裾を直しながら訝しんだ。
会長の右隣は参謀本部総長――権上しずか氏が占める。それはいい。左隣、通例であれば軍務大臣の占めるべき座を我が兄が占めていた。なんともはや。兄はたかが、否、室内の大部分からすれば雲の上の人だが、それでも参謀本部の部長職に過ぎない。軍政の長にして国政にすら携わる軍務大臣の座を奪うなど有り得べからざることだ。現に、兄の隣の隣にまで追いやられた軍務大臣こと若菜氏は臍を噛んだような表情だった。
「諸君、お待たせして悪かった」
派閥争いのことなど素知らぬ風に会長は言った。「早速だが始めるとしようか」
室内の照明が落とされた。会長らの背後、大型のスクリーンが起動する。私の目前、長机の上に置かれた資料にスクリーンの光が差し込んだ。紙の白さが冴える。上等な紙だ。印刷紙代を嵩ませるぐらいなら給料を上げてくれればいいのに。
ああ、野球籤とか当たらないかな……。