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俺たちの共同学園生活  作者: 雪風 セツナ
1学期編 ~中間試験~
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第49話

「ここだ。入ってくれ。」

「失礼しまーす。ここが蒼雪君の部屋…。」


俺が扉を開け中に入ると、瑞希も中に入ってきたが、入口のところで立ち止まり部屋の様子を見渡していた。

しばらく瑞希は入口を開けたまま立ち尽くしているので、


「中の様子をまじまじと見られても困るのだが…。」

「えっ!あ、ごめん。初めて入るから感動…、じゃなくて、その、気になっちゃって。」

「そうか。まぁとりあえず中に入って扉を閉めておいてくれ。外に俺たちの声が聞こえているならわざわざこっちに連れてきた意味がないからな。」

「あっ、うん。そうだね。」


瑞希が扉を閉めたのを確認すると、正悟が寝ていた布団をたたんで部屋の隅に寄せて、小さいテーブルとクッションを渡した。

部屋に誰か来たときに座る場所がないと困ると思って購入しておいたのだ。


誰かを入れる予定など当初はなかったのだが、正悟や舞依と立て続けに部屋に招く機会もあり、この調子で行くとこれからもこう言った機会があるかもしれないと思ったのだ。

今回はそれが早速役に立ったと言えるだろう。


「ありがとう。」


瑞希はそう言って俺からクッションを受け取り、座った。


「それで、あの件のその後のことを話してもらえるのか?」

「うん。そこから話さないとね。」


瑞希は俺から本題に入ったため、幾分か話しやすくなったようで、一度深呼吸をしてから話し始めた。



「あれからのことなんだけど、あれから休みが明けるまでは連絡はあったと言えばあったけど、考えてほしいって内容だけだったからスルーしておいたの。

そして、このまま休みが終わるかなって思った矢先に蒼雪君の騒動が起こったの。それで私も蒼雪君の心配をしていたんだけど、私が蒼雪君と仲良くしているって知っている子もいてね、私なら話すきっかけを作れるんじゃないかとか蒼雪君の噂を知って結構みんな私に連絡してくるようになったの。私はみんなに迷惑かけないようにって返事をしてたから実際それだけで済むなら私も蒼雪君の役に立てたかな?って思ってたところで彼らからも連絡が来た。

そして、どこから聞いてきたのか私が休みの間に会ってたことまで知ってて、今はこれ以上蒼雪君に迷惑かけられないと思って皐月たちにも相談をしたの。一応例の男子たちに言われた時点で相談はしてたから今回も話を聞いてくれて、助かったけどそこまでしてきて怖くなったって言ったら先生にも相談してくれて、一応男子たちからこれ以上今は私に迫らないように言ってくれたって感じかな。」



「なるほど。」

「結構端折っちゃったけど、こんな感じかな。」

「男たちはそれで納得したのか?」


俺の質問は聞かれたくなかったことだったようで、瑞希は言葉に詰まり目線を彷徨わせていた。

俺がじっと見つめ続けると折れたようで、隠し続けるのも無理だと観念したのか口を開いた。


「…納得は全然してくれなくてちょっと空気が悪くなっちゃてるかな…。」


そこで言葉を区切ると、顔話下げてうつむいたままため息をついた。


「私が直接言わなかったのも悪いのかもしれないけど、一斉に言ってきた時点でずるいし、ストーカーみたいに私の行動知っているのも怖かったし、それで私が相談して先生から注意されて逆恨みされても私にはどうしようもできないよ…。」


前半は愚痴っぽく言っていたものの、困り果ててだんだんと尻すぼみになって言った。


「それに、どうして私なのかな?私以外にも女子はいっぱいいるのに私にこんなに言い寄ってこなくてもいいと思うよ。」


瑞希はうなだれて、彼女から聞こえてくる声は弱弱しかった。

さすがにここまでくると何か声はかけた方がいいと思い、


「それだけ瑞希は魅力的な女の子なんだろう?だから、男子も何とかして親しくしたいと思ったんじゃないか?彼らを弁護するつもりなどさらさらないが、起こるべくして起こった出来事だと俺は思う。」

「私はそんなこと望んでないよ…。」

「望もうが望むまいが瑞希は客観的に見ても、魅力的な女の子なんだ。男子は放っておかないだろうな。」

「そんな…。どうすればいいの…?」

「先生に行ってストーカーまがいの連中は押さえつけることができているならば、今は女子と仲良くなって男子を近づけないようにするか、意中の人を見つけられることを願ってその人の庇護下に入るのがいいだろう。」

「そっか…。やっぱり誰か見つけた方がいいよね…。」

「無理に見つける必要はない。そもそもこの学園の目的上男女の関係を望んでいるところが多々あると言っても、無理矢理というのは求めていないだろう?だからゆっくりでいい。一部には協力関係ということで男女の関係と意味が異なる相棒が多くいるが、それは望んでいないだろう?」

「うん…。私はやっぱり一緒に生活するなら仲がいいか好きな人がいいな。そうじゃないと、私も辛いっていうか、嫌かな。」

「そうか。」


俺たちはしばらく黙り込んだままだったが、ふいに瑞希は立ち上がって俺の後ろに抱き着いてきた。


「瑞希…?」

「ごめんね。白崎さんって言う素敵な相棒がいることは知っているけど、今だけこうさせて…?」

「…わかった。だが、少しの間で頼む。見つかったら俺としても申し訳なくなる。」

「うん…。」


瑞希はそう言って、俺の背に顔を埋めていた。

すすり泣く声が聞こえてきた。

彼女が俺の背後に回ったのは泣いているところを俺に見られたくないからだろう。


少しの間そうさせていたが、千春と違って、瑞希の成長している胸が俺の背に当たっていることから俺は悶々としたものをかかえてしまった。

今の状況でそうなってしまうのは不謹慎だが、男女の関係や感情に乏しい俺でも、男として枯れ果てているわけではないのでただ座っているだけだとそうしたことを考えてしまった。




「…んっ、ごめんね?」

「い、いや、大丈夫だ。それよりも落ち着いたか?」



瑞希が俺から離れたことで、内心ほっとしているところも多少あったが、そんなことは気取られないようにしつつ、瑞希に尋ねた。


瑞希も泣いたことで少しすっきりしたようで、泣いた跡が顔に見られたが、先ほどよりは良さそうに見えた。


「…私ね、好きな人はいるんだよ?」

「そうなのか?」

「うん。相手の人は私のこと覚えてないと思うけど、小学生ぐらいのころかな?その時にある男の子に助けてもらったことがあって、その人のことが好きなの。

たまたま会う機会があったけど、私はそのこと思い出したけど変わっていないなって思ったの。外面的な様子とか、どうしたんだろうって表情が多く見られたけど、根っこのところは変わってなかったの。それで安心したんだ。

そして、今でも好きなんだってわかったの。でも、その気持ちは相手の人が思い出すまでは伝えられないなって。今の私を見てほしいけど、出会いも思い出してほしいなって。」

「この学園にいるんだな。」

「うん。」

「それなら話しているうちに思い出してもらえるんじゃないか?」

「どうだろうね。」


瑞希は笑いながらそう言ってきて、俺の隣に腰掛けてきた。


「こうしててもいい?」


瑞希は俺の方に頭を乗せながらそう言ってきた。


「好きにしていろ。少なくとも誰かが部屋に来た時にそうしていないならいい。千春に誤解はされたくないがな。」

「ははは、誤解されたら修羅場だね。」

「それだけは勘弁してくれ。」


俺はうんざりとしたように言った。

誰にでもそうするわけでもないが、瑞希とは知らない中ではないうえにここまで弱った姿を見せられてしまえば彼女が落ち着くようにするぐらいはした方がいいと思ったのだ。


俺たちはそれから10分程の間そうしていて、傍目に見てもいちゃついていると誤解されても仕方のない状態でいた。


ここまでお読みいただきありがとうございました。


また次話もお読みいただけると嬉しいです。

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