第39話
俺は榊を連れて、噴水の広場へと移動をしていた。
何処に行くのかわかっていない様子ではあったが榊は何も言わずについてきてくれた。
(そう言う点では俺のことも信用してくれているのかね〜)
俺はそんなことを思いながらも目的地へと急いだ。
家を出た当初に自分が想定していたよりも時間がかかってしまったため、蒼や白崎が俺たちの心配をしているかもしれなかったからだ。
足早になってしまったが噴水広場へと着いた。
休日の午後ということもあって少なからず人はいたが、数組のカップルがいるくらいだった。
榊はこの広場を見た時に小さな声で
「…こんなところもあったんだ。」
と、つぶやいていた。
俺たちは広場の中心の噴水のところまで移動をした。
「さて、ここでいいかな。」
「…?ここに連れてきて何の用?」
榊は少し警戒をしたような面持ちで俺を見てきた。
「単刀直入に言わせてもらう。俺と相棒を組んでくれ。」
「!」
俺の申し込みについて榊は驚いたような様子でいた。
しかしそれでいても、ここに連れてこられた時から少しは想定をしていたようだが可能性は低いと思っていたようだ。
「…どうして私に?」
「理由はいくつかあるが、一番大きな理由は相性がそこまで悪くなそうというところだな。俺たちは入学式から今日までの時間でそれなりに長い時間を一緒に過ごしているが、お前は俺に遠慮をしないで済んでいるだろ?それに対して俺も言われっぱなしであってもそこまで嫌だと思ってない。」
「…マゾなの?」
榊は俺が珍しく真面目に理由を話しているのに少し引き気味にそんなことを言ってきた。
「違うしそんな引いたような反応をするな!」
「ふふ、冗談。早乙女は真面目にしていてもいいけど今はそこまで重い空気にしたくなかった。」
「はぁ…、ったく。じゃあいつものように話すけど、残りの理由は俺と榊で組んでいれば試験の度に誰かと組まされるときに苦労をすることもないし、何よりも蒼たちの手助けがしやすいと思ったからだ。生徒会のメンバーを見た問ときにあそこの人たちも相棒を組んでいるようだったから、おそらくその方がやり易いんだろうな。」
「なるほど?」
俺の説明に一応の納得はしているようだった。
しかし、それでもまだ悩んでいる様子だった。
「自己犠牲をするつもりはないが、友達を見捨てるわけにはいかないから助けてやらないといけないしな。」
「……嘘。」
「ん?」
「今の言葉に少し嘘が混じって聞こえる。本音は違うところにある。」
俺はわざと真実らしいことを言ってみたが榊はやはり気付いた。
「やっぱりな。」
「…?」
「榊は直感なのか、その洞察力か隠していることや人の真意を見抜く力が人一倍ある。それに頭の回転も良いからサポート役として十分だな。」
「…何が言いたいの?」
「悪いな、今の発言は試すものだ。別に友達を見捨てるつもりはないけど、俺は自分の利する方に付くつもりで蒼が俺に利益をもたらし続ける限りそっちに付き続けるつもりだ。」
「あなたの目的は何?」
「俺のサポートをしてほしい。それが結果的にあいつらの助けにもなるし、俺のやりたいことにもつながる。」
「嘘は言ってないのね…。少し考えさせて。」
「ああ。けど、相棒になったら俺がやっていることは話すよ。相棒に隠し事はすべきではないからな。」
「…そう。」
榊はその場から少し離れて近くのベンチに座った。
俺はついて行くべきか悩んだが、現状離れることの方がデメリットは多いと考えたので仕方なくついて行き反対側に座るようにした。
少しの間考えていたが、それでも時間もかかっていたこともあり、蒼から連絡が来た。
蒼雪:時間がかかっているようだが、大丈夫か?
正悟:大丈夫だ。少し寄り道をしているから時間がかかっている。
蒼雪:そういうことか。何かに巻き込まれたのではないかと俺たちも心配していた。
正悟:悪いな。けど、ちゃんと帰る前には連絡するからそこまで心配しなくていいぜ。
蒼雪:わかった、気を付けろよ。
蒼とのやり取りを終えたが、未だに榊は悩んでいて時間はかかりそうだと感じた。
「…わかった。」
榊はしばらく悩んだのちにどうするのか決心がついたようだ。
「それで、どうするんだ?」
「早乙女と相棒を組む。」
「へぇ、意外だな。俺としても五分五分か少し不利かと思ったんだが。」
「うん、初めは断ろうかと思った。けど、あなたを監視するという意味でも組むことは意味がある。それに少なくとも私にも害はない。一緒に生活をするなら好きな人同士ではないとダメかと千春たちを見て思っていた。けど、協力関係で組んでもいいと思った。相棒の関係は人によって形が違ってもいいと思った。だからあなたと組む。裏切ったら相応のことをするけど。」
「なるほどな…。まぁ、組めるなら俺もしっかりと協力する。それは約束する。」
俺はそう言って手を出した。
彼女も俺の手の意味を理解できたようで握り返してきた。
俺たちはその話を終えてから俺の秘密は休み明けに家を選んでからそこで伝えると告げて蒼に連絡をして家に向かった。
―――――蒼雪side
正悟から数10分程で戻ると連絡もあったので千春と俺はそれぞれの部屋に移動をして部屋を片付けに行った。
昨夜も泊まっており、片付いていないわけではないが千春は冷静になると恥ずかしさがこみあげてきたようで俺と少し離れたがっていたのでこれを口実にしたのだ。
(部屋の片づけと言ってもこれと言ってやることはないな…。1階に戻るか?しかし、顔を合わせにくそうにしているからもう少し時間を置いた方がいいか?)
俺は早々に布団の用意等を終えると手持ち無沙汰になりどうするか悩んでいた
(仕方ない。1階に戻ろう。彼らもすぐに戻ってくるはずだ。)
俺は適当に本を取り1階に戻り、リビングで読書をしていた。
千春は部屋から戻ってくる様子はなかったが時間が経てば彼女は降りてくるだろう。
そして正悟が連絡をしてきたように数10分程で彼らは着いた。
「ただいま、おじゃまします。」
「…おじゃまします。」
「おかえり、大丈夫だったか?」
「…早乙女は絡まれていたが大丈夫。」
「何?」
「まぁその話はあとでいいだろ?とりあえず荷物を置かせてくれ。」
「ああ、わかった。だが、後でどういう状況だったかは教えてくれ。」
そう言って彼らを部屋に連れて行った。
舞依に関しては千春の部屋をノックして彼らが来たことを知らせると、舞依を部屋に入れていた。
「またじゃまさせてもらうぞ。」
「ああ。一応先程少し片づけたし適当なところに荷物を置いてくれ。」
俺がそう言うと俺が敷いた布団の側に荷物をおろした。
そして俺たちは再びリビングに移動をした。
「それで何があったんだ?」
「まぁそんな大したことじゃないぞ?クラスメイトの女子が蒼はどこにいるのかって聞いてきてしつこかったくらいだ。中々開放してくれなかったが榊のおかげでなんとかなったって感じだな。ちゃんと知らないって言って居場所は言わなかったし大丈夫だと思うぞ?」
「悪いな、俺のせいで。」
「いいって気にすんなよ。」
「そうか。だが、それでも俺が原因だったことに変わりないだろう?」
「…否定はしない。」
「そうか。」
話は終わりにして適当に何かを話そうと思ったが、そこでふと、疑問が沸き起こった。
「そういえば、本当に大丈夫だったのか?」
「どういうことだ?」
「あれだけの荷物があっただろう?リュックとバックの2つがあって移動をしていれば疑問を持たれなかったのかということだ。明日から学園の授業が始まるのに寮から移動をしているからな。」
「そう言えばそうだな…。なんでだ?」
「俺は知らない。」
「そうだよな。まぁラッキーだったんじゃないか?」
「ふに落ちないがそう言うことにしておこう。」
俺たちはそれから適当に話をしてリビングで彼女たちが降りてくるのを待っていた。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
また次話もお読みいただけると嬉しいです。
感想・評価・ブックマークもしていただけると幸いだす。




