第23話
「ん、ごめん。でもある程度考えはまとまった。」
少しの間待っていると舞依は考えがまとまったようで、謝罪をしてからその旨を告げてきた。
「舞依は何を考えていたのかしら?良ければ教えてもらえないかしら。」
「うん。多分予想していたのかもしれないけど、これからの試験のことを考えて私も相棒を組んだ方がいいのか考えていた。けど、それだけのために組むのはダメなのかもしれないと思った。」
「なるほど…。舞依は誰を対象として考えていたのかしら?」
「早乙女。」
「やっぱり彼なのね。」
千春は予想通りという反応をしていたが、俺が思っていたような反応ではなかった。
千春は正悟のことを信頼できないと言っていたのでもっと拒絶するものだと思っていたのだ。
「うん。一番いいのは蒼雪君だけど、あなたは千春と組んでいる。だからそこに入り込むことはできないと思うから消去法で彼。それに私のことを黙っていてくれたから少なくともそこら辺の男子よりは信頼できる。」
「黙っていたというと、やはり正悟は舞依の事情を知っていたんだな?」
「体育館で別れた後その話をされた。」
俺はあの時か、と思い出した。
あの時は正悟と舞依は確かに2人でいたうえに、何かを話していて俺が話しかけたことで話題を変えていた。
「なるほど。」
「一緒にいれば彼の秘密も探れるかもしれないと思った。」
「そのために相棒を組むというのはダメだと思うわ。確かに彼のことは気になるけれども、そのためだけに舞依が彼と組む必要はないわ。私生活を共有することに抵抗もあるでしょう?」
「あまりないよ?私は私の時間があるならそれでいい。」
そう言われてしまうと特に反論することもなかったのか千春はそれ以上何も言わなかった。
「正悟も相棒について考えているようだ。あいつに連絡を取ってみるのもありかもしれない。」
俺が反対意見を言うと思っていたのか、俺の提案に千春と舞依は驚いていた。
「…わかった。参考にする。時間をとってもらってごめんね。」
「いや、大丈夫だ。俺たちの意見で助けになったならよかったよ。」
「また何かあったら相談してちょうだい。できる限りで力になってみせるわ。」
俺隊はそう言ってバス停に向かって同じバスでそれぞれ帰った。
家に着いてからは、夕飯の用意を2人で始めた。
この日は朝に走っていなかったこともあって、夜に走ろうと思っていたのだが、千春は『明日も出かけるなら早めに休みなさい』というので夕飯を速めて少しでも早い時間に走れるように配慮してくれたのだ。
俺は夕飯を食べてから、いつも朝に走っているときのウェアに着替えてランニングに出掛けた。
いつものコースといっても時間が変われば見ているときの景色も少し違って見えた。
空はまだ夜というほど真っ暗だったというには早いが、少しの星も見えて気分転換にもなった。
走っていると、今日は会わないと思っていた先輩たちが一緒に歩いているのを見かけた。
おそらくどこかに出かけていた時の帰りなのだろう。
2人の時間を邪魔するわけにもいかないと思い、声をかけることはせずにそのまま走っていった。
1時間30分ほど走っていたので、家に着くころには空は暗くなっていた。
「ただいま。」
「おかえりなさい。いつもより長かったのね。」
「ああ。時間も違うから少しコースを変えたりもしていたんだ。」
「そうなのね、もうお風呂は沸いているからシャワーの序にそのまま入ってきたちょうだい。」
「わかった、ありがとう。」
俺はそう言って、自室に戻ると着替えを取ってから千春が用意してくれていた風呂に入った。
汗を流す時間や、疲れをとる時間も必要だったのでいつもよりは長めに風呂に浸かっていた。
風呂を上がって髪を乾かすしてから千春が部屋にいると思い、2階に上がった。
しかし、部屋をノックしても千春の返答がなかったのでここにいないと思い1階のリビングに行くとそこに千春がいた。
「あがったぞ。」
「おかえりなさい、じゃあ次に私が入るわね。」
千春はそう言って操作していた端末をリビングのテーブルに置いた。
「ああ、いってらっしゃい。」
「申し訳ないけれど、もしかしたら私の端末に電話があるかもしれないから見ててもらえないかしら?」
「それぐらいかまわないが、実際に電話が来たらどうすればいい?まさか俺が風呂の扉を開けるわけにはいかないだろう?」
「心の準備ができていないから今はまだ遠慮したいわね。そうね…、かかってきたらそれを教えてちょうだい。早めに上がることにするわ。」
「わかった。」
千春は俺の返事を聞くと着替えを取りに行ってからお風呂に向かった。
俺はとりあえず、千春の端末に連絡があるかもしれないとのことだったので、1階のリビングにて待機することにした。
俺も自分の端末を持ってきておくか、と思い、自室から端末を取ってきたのだが、ランニングに行く前から連絡が来ていたのでかれこれ2時間以上も俺が見ていなかったせいで通知が結構来ていた。
相手はグループで会話をしている明日一緒に行くメンバーたちだった。
内容を読み返してみると、明日は大丈夫なのか、時間はどうするかの確認、場所もアミューズメント施設でいいのか、食事はどうするのか、等々雑談も交えてずっとしていたようだ。
俺の返事がないので何度か呼びかけのメッセージがあったので、さすがに既読を付けたのならば返事をしておくかと思い、これまでの確認事項に問題がないことを伝えておいた。
すぐに返事が着たりもしたが、気分ではなかったのであまり返事はすることなく端末に入れておいた電子書籍を読んでいた。
しばらくの間そうしていると、突然端末から電話の音が鳴り始めた。
俺の端末から出ないことはすぐにわかったので、千春の端末への電話だった。
俺は電話があったということだったので、風呂場に行き、電話があった旨を告げにいった。
コンコンッ
「はい。」
風呂の方から千春の返事が反響して聞こえてきた。
「電話があったから連絡しに来た。」
「わかったわ。すぐに上がるわ。」
「了解した。」
俺はそれだけ告げると再びリビングへと戻った。
リビングに戻ったが既に千春の端末への電話は止まっていた。
俺の端末には通知がまた少し溜まっていたが、どれも大した話題でなく、詩音は早い時間におやすみといっていた。
そこから彼はもう休んだようでそこから勢いは無くなっていき皆がおやすみといっていたので、俺もおやすみとだけ返しておいた。
少しすると、千春は風呂から上がったようで髪を乾かす音が聞こえた。
「おかえり。」
「ただいま。」
髪を乾かし終えた千春はまだ頬を赤くした状態でリビングまで来た。
「そんなに急がなくてもよかったんじゃないか?」
「そうかもしれないけれど、こういった経験は初めてだったから、つい…。」
「そうか、早めに休むんだぞ。」
俺はそれだけ告げると2階の自室へと戻ることにした。
明日一緒に行くメンバーは早めに休んでいるようなので、俺も早めに休んで明日に備えることにした。
明日行く施設はスポーツ系のものも多くあるので朝早くにランニングをする予定もなくなったのでいつもよりは長く寝れることだろう。
千春は俺が自室に戻る旨を告げると、おれにおやすみとだけ言って電話をかけ始めていた。
俺は自室に戻ると明日の着替えと荷物の用意を簡単にしてから布団に入った。
準備をしているときは、純粋に遊びに行くという予定は久しぶりなので少々俺も楽しみになった。
布団に入ったときは、いつもより早いだけあって眠れないかと思っていたのだが、思いのほか疲れていたのかすぐに眠ることができた。
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