第21話
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俺と舞依は部屋でいざ2人きりになるとお互いに積極的に話すタイプではないので静寂が部屋に訪れた。
俺も話を始めようとは言ったものの、どう話を進めていくか悩んでいた。
「こうして2人で話すのは初めてだな。」
「……うん。」
「あ〜…、そうだな…。舞依は俺たちと一緒にいるのはどうだ?昨日も話を聞いたが改めて聞きたいと思ったんだ。」
「…嫌じゃないよ?」
「嫌ではないというが特別好ましいわけでもないというわけか?」
「そう言うわけじゃ…。…わからない、かな?私なんかが一緒にいることが迷惑になるんじゃないかってそう思う。」
「俺たちから積極的にかかわろうとしているから迷惑とかそう言うことはないと思うが、舞依がよそよそしく俺たちと関わろうとしないことに俺たちが何か気に入らないことをしてしまっているのではないかとも思ってしまう。」
「…ごめん。」
「謝らなくて大丈夫だ、事情は昨日聞いてなんとなくだが分かったつもりでいる。」
「私なんかより、蒼雪君の方が大変な過去だったと思うよ…?」
「そうか。だが、俺にはそれが普通だと認識させられて、引き取られた先の家庭で異常だったと知らされたことだから特段今でも大変だったとは思ってない。」
『君が大変ではないと感じられてしまう、こなせてしまうだけの能力があったことも君の不運だったのかもな…。いや、能力が高いことを否定しているわけではないよ?ただ、その能力が高いことが君をより過酷な状態に追い込んでしまうきっかけだったことが悲しいのだよ。教育者としてはその能力をゆっくりと開花させて、あるべき方向に導くべきだったと思わされるよ。』
俺は舞依と話していると、ふいに養父が俺を引き取ってから数日経ったころに言ってきたことを思い出した。
引き取られてから数日は施設にいた時と同様にルーチンワークをこなし、何もすることがない時は本を読み、体を鍛えていた。
何か仕事が与えられたらそれをこなす、子供とは思えない言葉使いと知識量に身体能力。
養父も疑問に思ったようで俺が何をされていたか聞きだし、聞き終わると涙を流し抱きしめられた。
俺はなぜそうなったのか理解できずに困惑していた。
そうして、いろいろと言葉を伝えられて、先ほどのことも言われたことに含まれていた。
俺はその家で常識とは何か、子供らしいとはどんなことか、その家にいた彼の娘と一緒に育てられた。
そのおかげである程度は特殊な環境で育ったということでごまかせる範疇になったが、感情がどんなものであるかはそこまで理解することなくここまできた。
自分の過去については信頼できる人物以外には話すなと言われていたこともあり、現在この家に入る人物を除いて知っている人はこの島にはいないはずだ。
教師がどこまでの情報を得ているのか不明であるが、個人情報をばらまくことはないと思っていいだろう。
俺が黙り込んでしまったので舞依は心配そうにこちらを見ていた。
「…大丈夫…?」
「ああ大丈夫だ。少し昔を思い出していただけだ。」
「…そう。よかった。…私のせいで嫌なこと思い出させたんじゃないかって。」
「大丈夫だ、思い出したのは引き取られたころの話だ。あの頃は今の俺とも違ってもっと機械的に行動していた。」
「…何かきっかけがあって変われたの?」
「そうだな…養父とその家の子による教育としか言えないな。俺に対して積極的に関わるようにしてあれこれ言われ続けた結果今の俺になっていた。時間による変化、良く言えば成長したのだろう。」
「……成長…。私も…。」
舞依はボソッとつぶやいてからじっと下を見つめ、少し間を置き俺のほうに向きなおって、
「…私も変われるのかな…?」
「それは舞依次第だろう。今のままであることを良しとせず、こうありたいという自分のイメージあるならそれになればいい。」
「イメージ…。」
「少なくとも今のままでありたいわけではないのだろう?それに、関わろうという気がなければ名前呼びを強要することもなかったんじゃないか?」
「…っ。…そ、それは…、あまり寝てなかったし、お腹空いてたし、助けられたりしたし、気持ちが今より弱くなってたというか…。」
「ふっ。そういう反応もできるんじゃないか。いつもの感情の伝わりにくい話し方よりも緊張したりテンパっている方が素の自分を出せているんじゃないか?」
「……っ。」
俺の指摘に舞依は、息をのむような反応をしてそっぽを向いてしまった。
俺があえて揶揄うようにそう言うと、昨日は泣いたりして表情の変化が見られたが、ここまで顔を赤らめて恥ずかしがってわかり易い反応をした彼女を見たのは初めてかもしれない。
だが、このような反応をしてくれるのは気を許せているからか、信頼を少しでもしてくれているからこその変化なのかもしれない。
「もう、知らない。私だって今のままじゃダメなのわかってるもん…。どうすればいいかわからないし、不安でいっぱいなだけだもん…。」
拗ねたような様子で俺に対して反対方向を向いたままそう言っていた。
若干幼児退行でも起こしたのかと思ったが、おそらくこちらが本当の彼女なのかもしれない。
「舞依は千春のことをどう思っているんだ?」
「…ふぇ?」
俺のいきなりの質問で舞依は変な声を出していた。
「千春は舞依のことを気にかけて、積極的に関わろうとしていただろう?それに昨晩だって一緒に寝ていたはずだ。だから舞依はそんな千春のことをどう思っているんだろうなと思ったんだ。」
「…う〜ん……。会った始めはまじめそう?こんなに話しかけてくるような人じゃないと思っていた…かな?」
俺の質問に対して、少し悩むといつものペースを徐々に取り戻したのか、先ほどよりは感情の見えにくいような様子でそう答えた。
それでも、いつもよりは彼女の声が無機質と思えないように聞こえた。
「積極的に来られるのは迷惑か?」
「そんなことはない。むしろ私が申し訳ない。どうすればいいかわからなくて。」
「もし、千春を拒絶していないならば時間をかけてでもいいから彼女の気持ちに応えてくれないか?千春だって友人関係を良好に築けるようなタイプではないから友人は多くない。だからこそ、舞依は千春の友人であってほしいと俺は思っている。」
「私なんかにかまっていなければもっと友達は作れていたかもしれない…。」
「たらればの話をしても仕方ないが、千春は舞依と友人になろうと頑張っているんだ。不器用な彼女としては他の友人を作るよりも1人ずつしっかりと関係を構築していこうと思っているんじゃないか?」
俺の言葉を聞いてなるほどと呟いて色々と思うことがあるのか考えこんでいた。
俺と同様に舞依も考え事を始めると周囲のことを気にしないようだった。
俺は話しかけるのは悪いと思い、持ってきたコーヒーを飲んだりして彼女の思考がまとまることを待つことにした。
「ん、ごめん。いろいろと考えていたらいることを忘れていた…。」
「俺も同じようなことがあって、舞依のことに何も言えないから気にしなくていい。」
「確かに蒼雪君も考え事をしていると話を聞いていなかった。」
彼女はそう言ってから一度紅茶を飲み、話を続けた。
「まだ、どうすればいいかわからないけど、少しでもこうありたいっていう自分に成れるように頑張ってみる。」
「おう、そうか。応援しているし協力はしよう。」
「ありがとう。」
彼女はそう言うとぎこちないけれど、こちらに微笑みかけてくれた。
そして恥ずかしくなったのか、直ぐにそっぽを向いてしまった。
俺は笑った舞依を見たのは初めてだったけれども、ぎこちない笑みとは言えども彼女は、千春たちにも負けず劣らず素敵だったとは言っておこう。
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