第20話
俺たちはしばらくそうしていちゃついているかのような時間を過ごしたが、部屋に残してきた彼らが起きた時にこのような状態を見せるわけにもいかないので一度部屋に戻ることにした。
千春は俺にくっついたまま寝そうになっていたが、俺が声をかけると顔を赤くして離れた。
「へ、部屋に戻るわ。おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ。」
そう声をかけると彼女は部屋に戻っていった。
慌てていたのか自分が飲んでいたココアのカップをそのままにしていたので自分の分の序に一緒に洗ってから俺も部屋に戻った。
「よう、またか?」
俺が部屋に戻ると開口一番正悟がそう言ってきた。
「ああ、まただ。」
「いつもこうなのか?」
「いや偶然だ。お前こそ寝ていなかったのか?」
「それこそ偶然だ。さっきたまたま目が覚めたらお前がいなくてしばらく帰ってこなかったからな。」
「なるほど。」
俺がベッドで横になると正悟は再び俺に声をかけてきた。
「なぁ、一つ聞いていいか?」
「どうした?改まって聞いてくるとは珍しいな。」
「まぁ内容が内容だからかな。」
「そうか。」
「まぁそこはいいだろ。俺が聞きたいのは、相棒ってどんな感じだ?やっぱり自分の生活に他の人間がいると何か違うか?」
正悟が聞いてきた内容が意外だったので少々驚いてしまった。
確かに改まって聞いてきてもおかしくないようだとは思った。
「そうだな。一人暮らしとは違うな。それと、友人と一緒に住んでいるのとも何か違うのかもしれない。実際に経験があるわけじゃないが、そこは異性と一緒に生活しているからなのかもしれないがな。」
「なるほど。」
「気になる相手でもいるのか?」
「あれ、蒼もこんなことに興味があるのか?」
「興味があるというか、意外だったからだな。特定の誰かとそう言う関係になるのはしばらく後にすると思っていた。」
「俺もそのつもりだったけど、試験とポイントのことを考えると早い方がいいのかと思ってな。もちろん、相手のことも聞かないといけないのは分かるけど、白崎と蒼みたいな関係じゃなくて友人同士でも問題はないのかなってな。」
俺は正悟のセリフを聞いて瑞希の相談内容を思い出した。
彼女に言い寄っていた男子と同じようなことを正悟も考えていたようだった。
彼と違う点は、正悟は相棒というものについて先にどういったものか知ろうとしているのと相手のことも考えている点だった。
「そうだな…。少なくとも、生活をしていくうえで相手のことを意識するようになるからそれが苦痛でない、もしくは相手のことを気遣えるならばいいんじゃないか?友人同からそう言った関係になるということもあり得る話だからな。」
「まぁなくはないだろうが、どうだろうな。友人のままで終わる可能性もあるからな〜。」
「他に女を作るようなら止めておいた方がいいんじゃないか?」
「うっ…。そう言われるとなぁ…。」
「迷うくらいなら相手にも迷惑になる。一人の問題ではない以上真面目に考えろ。」
「そうだな。もう少し考えてみるわ。」
「ああ。」
会話はそれっきりにお互い話すことを止めたので、俺は寝ることにした。
さすがにこの時間から寝るのではランニングに行くとほとんど眠れなくなるということでランニングは夕方か夜にでもしようと考えて目を閉じた。
―――――5月4日
さすがに目を覚ましたのはいつもより遅い時間だった。
どうやら俺を起こさないでいてくれたようで、正悟もすでに部屋にいなかった。
俺は着替えてから一階に降りて顔を洗ってからリビングに移動した。
「あら、おはよう。思ったより早かったのね。」
「おはよ〜、よく寝てたしあんな時間に寝始めたから起こさないようにしたぜ。」
「…おはよう。」
俺がリビングの扉を開けると3人がそれぞれ挨拶をくれた。
「おはよう。悪いな、気を遣わせたみたいで。」
「これぐらい問題ないわ。朝ごはんの用意をしようと思うけれど、もう食べられるかしら?」
「自分でやるぞ?」
「これぐらい私にやらせてちょうだい。」
「わかった、頼む。」
俺がそう声をかけると、トーストを焼き始めて、コーヒーを淹れてくれた。
「まるで夫婦みたいだな。」
正悟は感心したように言ってきて、揶揄うときの口ぶりではなかったせいか、千春は顔を赤くして、
「ふ、夫婦って何を言い出すのかしら!」
「いや、なんとなく?」
「なんとなくって…。」
「…でも、そんな感じは私も感じた。」
「舞依まで…。もう。」
「別に好きに評価しても構わないが、学校ではそう言うこと言うのは止めてくれよ?クラスでは俺たちしか相棒を組んでいる人がいないせいか変な視線やうわさを聞く。気にしないとは言っても度が過ぎるとさすがに不快だからな。」
「わかってるよ。まぁ、蒼の場合話す奴も少ないから情報が表面的なことしかなくて憶測が飛び交っているみたいだしな。」
「いい迷惑だ。」
朝から千春以外の人がいるというのも新鮮で、朝から俺たちの家では賑やかにこの日は始まった。
朝食を食べ終えると、さすがにこの日も出かけるということは考えていなかったのでどうするか話し合った。
そこで俺は、千春と舞依、正悟と俺の組み合わせでは話しているが俺と舞依、正悟と千春の組み合わせではほとんどないと思い、この組み合わせで少し話をしてみないかと提案してみた。
最初は正悟と千春は話すことはないと却下してきたが、そこまで言い争わなくてもそりが合わない人とうまく会話をする術を身に付けろといって強引に話を通した。
俺としても舞依と話す時間があればいいと思ったがこういう機会ではないと難しいと思い、強引に話を通したわけだ。
千春も渋々という様子で話を受け入れてくれたようでリビングで千春と正悟が、俺の部屋で俺と舞依が少しの間一緒にすることになった。
お互いに2人だけの場所にするということになったのだが千春もさすがに異性を部屋に入れたくなかったようでリビングで彼女らは話すことになったのだ。
「目安は1時間ぐらいでいいか?」
「…ええ。それぐらいでいいと思うわ。それより長くても意味があるのかわからないわ。」
「せめて喧嘩だけはしないでくれよ?」
「大丈夫だって。俺がそうならないようにうまく話題を作るから。」
「あなたにそんなことを言われるのは癪だけれど、少なくとも1時間は協力してあげるわ。」
「はぁ…じゃあ、1時間程したら降りてくる。前後したりするのは仕方ないと思ってくれよ?」
「わかったわ。」
俺はそれだけ伝えると、舞依を連れて俺の部屋に移動する用意をした。
1時間ほど会話をしているのであれば何か口にできた方はいいかもしれないということで、部屋を移動する前にそれぞれに飲み物と適当に買ってあったクッキーを用意した。
それらの用意を終えると俺たちは部屋を移動した。
「ここが俺の部屋だ。」
「……失礼します…?」
「そんなに緊張しなくてもいいぞ?」
「…うん。でも、男の人の部屋に入るのはあの時以来で…。」
「そうか…。それなら、違う部屋の方がよかったか?」
「ううん、大丈夫。」
「わかった。だが、何か不都合なことがあったら言ってくれ。」
「うん。」
この家で女子を自分の部屋に入れるというのは千春にさえもしていなかったので舞依が初めてだった。
また、昨日の今日で何の用意もできていなかったが、昨日と同じようなミスをしてしまった。
誰かを部屋に入れるということを前提にしていなかったので、座るところがそんなにないのだ。
ましてや女子を床に座らせるのも悪いと思い、取りあえず腰を掛けられそうだったベッドに座ってもらい俺は椅子に座った。
構図としては昨日の正悟と俺の配置が逆になった感じだ。
「さて、改まって話すというのは何だが変な気もするが始めようか。」
俺がそう言うと彼女はコクンとうなずいて俺の目をまっすぐに見てきた。
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