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俺たちの共同学園生活  作者: 雪風 セツナ
1学期編 ~中間試験~
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第16話

「へぇ〜、中はこんな風になっているのか。」

「あまり中をじろじろ眺めるのは止めないかしら?どんな家なのか気になるのは分かるけれども、ずっとそうしていられると落ち着かないわ。」

「悪い、悪い。誰かの家に入るのはこの島では初めてだったからな。」


そう言って正悟は、ソファの方に座った。

舞依は正悟がソファの方に座ったので、俺たちが食事をしているときに座っている椅子の方に座った。


「紅茶とコーヒーどっちがいい?」

「じゃあ俺はコーヒーで頼む。」

「………私は紅茶で。」

「わかった。」


俺と千春は手分けしてそれぞれ淹れた。


「ほら、コーヒーだ。」

「サンキュー!あっ、ミルクだけもらってもいいか?」

「シュガーはいいのか?」

「これからする話を考えると苦いくらいがよさそうだからな。さすがにブラックは厳しいからミルクだけってことで。」

「わかった。」


そう言って俺はミルクを渡した。

自分が使わないとはいえ、千春もブラックでは飲まないのでミルクとシュガーは家にあった。


俺たちはそれぞれ座ってから、一息をついた。



「さて、俺の方から過去にあったことを話そう。舞依に話してもらうには一方的ではフェアじゃないからな。」

「………話を聞いても話すか話さないかは私の自由。」

「わかっている。ただ公平にいこうというだけだ。それに話すとは言ったが、俺はすべて話せるわけではないし、お前らが気になるだろう施設について話すだけだ。これについてももしかしたら俺の記憶が不十分なところもあるかもしれない。」

「………わかった。」

「千春と正悟も、無理に話す必要はないからな。信頼を得るために互いの秘密を共有するってだけだ。本当に大事なことで聞いてほしいなら、ちゃんとした場を整えよう。」

「私は構わないわ。私自身がどう打ち明けるべきか、あなたに一度話したこともあるからわかっているつもりよ。」

「俺は現状じゃ話せることは少ないからな。話すとちょっとばかり面倒になるから。」

「そうか。じゃあ、まずは俺から話そう。」


俺はそう前置きをすると、自分の記憶を遡らせ過去について覚えていることを話し始めた。




「俺は生まれた時のことをよく知らないんだ。もちろん他の皆もそうかもしれないが、俺はとりわけな。


生まれてすぐの段階で俺は一人になってしまい、記録として残されていることしか知らないんだ。


後から聞いた話で知っていることは、俺の両親は国の偉い人物であったにもかかわらず、国の非合法な研究にも加担していたらしいことだけだ。


そして、その研究のために俺を施設に売ったんだ。


その施設で行われている研究というのは、昨今問題になっている人口の減少に関連している。


その施設での研究のやり方は、この学校教育機関を利用した成長を促すやり方とは違って、俺と同じように集められた赤ん坊を利用してもっと直接的に行われていたらしい。


人工的に天才といわれる優れた人物を作るためにな。


天才を作るという目標は人口が減少するならば、一人一人の質を上げれば国家の損失にならないという案からの考えらしい。


俺たちは赤ん坊のころから徹底した栄養管理をされた。健康的な食事、バランスの悪い食事、様々な非人道的なことが生まれてからすぐに行われたらしい。また、聞かせる音楽でどのような変化があるか、どの様に接していけばより自分たちにとって都合のいい子供を作り上げられるか。それぞれを子供のころからテーマを持って育てられた。


俺のテーマは人間の感情に着目されて行われたようだ。行われたことは省かせてもらうが、その結果として俺は感情の起伏がほとんどなく育った。


唯一といっていいほど感じられたのは怒りの感情だけだった。


俺はスイッチの切り替えで、今のように落ち着いた“静”と、激しい闘争本能のような怒りの“動”のみを与えられた。


切り替えのスイッチは一応安全のために何段階かトリガーを用意したらしい。

催眠術のような思い込みを幼少期から刷り込まされているため、今では完全にはそれをどうにかできるわけではないらしい。


その施設にいたころは冷静な判断力と知識を身に着けるための学習、闘争本能を最大限活用するための身体作り、完全に管理された生活が続いていたよ。



だが、ずっと続くと思っていたその生活に転機は急に訪れた。



なんでも一部の国上層部が関与していたせいでうまく隠されていたらしいが、そいつの金の流れの怪しさに国が気付いて捜査をしていた時に施設が見つかったらしい。


そうして、俺はそこから連れ出されて、ある家に養子として引き取られて普通の生活を送らせてもらえるようになった。


まぁ、普通の生活を知らなかった俺には普通の生活というものがわからず四苦八苦していたがな。



まぁ、施設と俺の関係はこんなところだ。何か聞きたいことはあるか?」


俺が一通り話し終えると、みんなは黙ったままだった。


「蒼は、この過去については何とも思ってないのか?」

「何ともというのは?」

「普通こんな扱いをされていたなら国に対して言いたいことや両親に対して言いたいことぐらいあるだろ?」

「残念ながら特にないな。俺はどうも感じていない。強いてあげれば、激しい情動がないというのは困るというくらいだ。怒り以外のものを知らない俺は、悲しみや喜びを後から知り、心からそうだと感じるのが難しく、人として壊れてしまっているからな。」


「そんなこと…っ!」


「無いと言えるか?確かに人に対して優しいと評価されることはある。だが、俺は誰かにとって都合のいいように育てられた。そして、そいつにとって都合がいいというのは話を聞き自分の味方になってくれる人物だということだ。俺はよく言われていたよ、自分をもっと大事にしろと。だが、俺は自分を大事にするということを知らないんだ。」


「そう言うことか…。蒼、お前は確かに()()()()()。」

「早乙女君、そんな言い方…っ!」

「いや、いいんだ。」


「ああ。蒼、お前には自分がないんだ。自分がどうしたいということがない。お前の世界にはお前以外の人物しかいない。蒼は管理システムになって人の悩みや争いというバグを取り除くシステムに過ぎない。だから、自分がやりたいことがないせいで他者を優先してばかりだ。能力が高すぎるせいで何でもできるが意思が欠如しがちだ。」


「否定できることはないな。俺は自分というものを知らないのか…。それを見つけるのが課題ということなんだろうな。」

「だな。それは自分自身でやれよ?手伝いだけならするからよ。」

「助かる。」


「私も協力するわ。私の答えを保留にしている理由はそこにあるのね?」

「ああ、半分はそこにある。俺は愛情という概念を不確かにしか知らない。だから恋愛感情がどういったもの分からない以上、答えられないんだ。」

「半分は…ね。もう半分は違うところにあるのね?」

「そこはもう少し整理できたら話そう。今の話だけでも受け止め切れていないところがあるようだしな。」


俺の話を聞いて思うところがあったのか空気は重たくなっていた。

一度空気のリセットという意味も含めて俺はコーヒーを淹れ直しにキッチンへと行った。


「もう一杯いるか?」

「俺の分も頼む。」

「私は自分でやるからいいわ。」

「………私は大丈夫。」


俺は自分の分と正悟の分を淹れ直して運んだ。


さすがにすぐに空気がどうにかなるというわけではなかったが、少し時間が経ちそれぞれが俺の話を受け止めてくれたようだった。


「なぁ、蒼。」

「どうした?」

「この空気のまま遊びに行くのはどうかと思うから、明日じゃなくて明後日に変更してもらっていいか?」

「なるほど。それなら早く伝えよう。準備をしているかもしれないからな。」


俺が正悟にそう伝えると、俺たちのグループにメッセージをすぐに送っていた。


一応理由として今日俺たちと出かけて明日直ぐだと疲れてしまうかもしれないと言っていて、俺もフォローとして明後日に変更を頼んだ。


彼らも特に追及してくることなく「仕方ないなぁ」という感じで変更を受け入れてくれた。


俺たちがそうして明後日のことを話している間に千春は気持ちを切り替えて、自分の話をどう伝えるか考えていた。


舞依は、俺の話を聞いて何を感じているのかわからず、黙ってうつむいたままだった。


ここまでお読みいただきありがとうございました。


また次話もお読みいただけると嬉しいです。


感想・評価・ブックマークもしていただけると嬉しいです。

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