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俺たちの共同学園生活  作者: 雪風 セツナ
1学期編 ~中間試験~
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第6話

「私が今日新庄君に相談したいことは、クラスの男子のことなの。」

「クラスの?」

「うん。みんなで得意科目を教え合うこともあるし、グループだけじゃなくて他の人とも仲良くして遊びに行ってもいる。いい人たちなんだよ、みんな。私が最初にまとめていたってこともあって皐月にも協力してもらっているけど、クラスで委員長もやっているの。」

「へぇ。」

「あまり意外そうにしないんだね。」

「なんとなくだが、あの時会ったグループで引っ張っていくのは誰かと聞かれたら黒宮が適任だと思った。神田も冷静でそう言ったこともできそうだが、彼女は参謀タイプだろう。」


俺の意見を聞くと心当たりがあるのか、「あ〜…。」とつぶやきながら納得しているようだった。

そして苦笑しながら話を続けた。


「まぁ、皐月もサポートしてくれるし、もちろん他の人たちも協力してくれてるからクラスの子とはうまくいきそうなんだ。」

「そうか、それなら特に問題があるように聞こえないが?」

「うん。クラスとしての問題はないよ。けど、私個人にね…。」



黒宮は言葉がだんだんと尻すぼみになっていき、俯いてしまった。

俺は声を書けるか迷ったが、変に声をかけるよりも彼女が話し始めるまで待つことにした。


少しの間、下を向いていたが、顔を上げ俺と目を合わせると、



「私にね、相棒の申請をしたいって言ってくる男子がいるの。」



「もちろん、私は相棒を組むことが嫌ってわけじゃ・・う〜ん、いや、どうなんだろう…。まぁいいや、いったん置いておくけど、その、相棒を組みたいって言ってくること自体が困っていることじゃなくて、同時に3人から申し込まれちゃってさ。しかもその中から選べって空気になってるし、その中には男子の委員長も入っててさ。クラスのことを大事にするなら波風立てないように断りたかったんだけど、言うだけ言って答えはあとでいいって言って3人ともいなくなるし、この休みの前の放課後に教室で言うものだから聞いてる人も多くて…。」


「…状況はほぼ把握した。それで、黒宮はどうしたいんだ?」

「私としては好きでもない男子と一緒に生活するなんて嫌だから断りたいよ?」

「それならそれを告げればいいんじゃないか?」

「そうしたいんだけど、どう断ったらいいの?まさか面と向かって好きでもない男子と一緒には生活できないのでごめんなさいって言えばいいの?告白したわけでもない男子が相棒申請をしないかって言ってきただけなのに。」


「ん?認識に齟齬があるのかもしれないが…、もしかして、告白をしてきたわけではないのか?」

「あ〜、そういうニュアンスでも受け取れるよね。」


そう言って、黒宮は乾いた笑いをして頭をかいていた。

どうやら全員が交際目的で相棒申請をしてきたわけではないようで男子の委員長は、BPについてのことを考えて俺たちと同様に早期にポイントを稼ぐならば早めに組む方がいいと考えたようだ。


「2人に対しては好きではないからって言いたいけど、片方の男子は女子からも人気があってあまり角が立つような断り方もできなくて…。委員長には理由を淡々と説明されて…。しかも、口には出してないけど、多分あの目からして私のこと狙っていてもおかしくないし。自意識過剰って言われればそうかもだけど、これでもいろいろ考えているし、男子の目線でなんとなくわかるんだよ?」


黒宮の容姿を考えれば確かに男子はそう言う気持ちを抱いてもおかしくはないだろう。

俺はどちらであっても気にはしないが、黒宮の胸は大きい。

周囲の女子と比較してもそうであるし、思春期真っ盛りの男子は興味津々なのだろう。


ましてや、黒宮は委員長と言う立場と彼女のそのフレンドリーな性格からも多くの人が好感を持っているはずだ。

そう言った女子を自分のものにしたいと考える男がいても不思議ではない。



「言いたいことは分かっているつもりだ。だが、それらを考慮してもはっきりと言えるのは自分の気持ちに嘘をつかないことだ。自分のことを棚に上げて話すから突っ込まれると何も言えないが、」


俺はそう前置きをしてからコーヒーを一口飲み、のどを湿らせて話を続けた。


「結局は自分がどうしたいか、これが一番大事だと考える。もし、仮に、その男子たちを好きでもなく、そう言った可能性も考えられないようであればそれをはっきり告げるのが彼らのためにもなる。それにだ、黒宮は自分を犠牲にして得たポイントでどうしたいんだ?」


「…え?」


「男子委員長の言うことがもっともだと思うのは確かだ。現に俺たちもそのことは考えたから。だが、ポイントはあくまで物を得る手段であって目的ではない。確かに評価によって扱いが変わるシステムをこの学園はとっているが、そこまでしないと評価はつかないのか?そんなに評価が大事か?確かに上位の成績を取れればいうことはないだろう。しかし、成績だけで人は判断できない。他者による評価を気にして成りたい自分を押し殺す必要はない。自分らしくあるのではない、自分であるということに意義がある。」


「…っ!」


俺が言いたいことを言い終えると俺の気持ちが伝わったかはわからないが小さく嗚咽を漏らしながら涙を流していた。



少しの間、黒宮が落ち着くのを俺は待っていた。


「…すんっ……すんっ…、ごめんね?…急に泣いたりして。」

「いや、いいんだ。言いたいことが伝わったなら俺も言葉を費やした意味があると思う。」

「…ありがとう。」

「何がだ?俺は言いたいことを言っただけだ。」

「それでもだよ。ありがとう。」


彼女はそう言うと、自分のポーチからハンカチを取り出し目元を拭いたりした。

彼女は改めて深呼吸をすると、こちらに向きなおって、


「新庄君の言った通り自分の気持ちに正直になって私がしたいようにするね!」


そう力強く宣言した。


「ああ、そうするといい。」

「うん。でもどうやって伝えればいいかはまだ悩むけどね。」


そう言って彼女は苦笑していた。

断るということに角が立たないようにするのは難しい。

相手の主張、提案を否定するのだ。

言い方によっては円満と言うこともなくはないが、通常、人は否定をされて喜ばしいことはない。


「それなんだが、理由をあえて考えるならば、ということになるが、やはり無難な切り返しは時間と言うことじゃないか?まだ出会って1月だ、俺たちという例もあるが、一緒に生活をするには相手を知らないから難しいということもあるだろう。」

「確かにそれは考えたから、2人に対してはそれで通じるかもしれないけど、委員長はどうだろうね…。」

「そんなに話が通じない奴なのか?」

「そう言うわけじゃないと思うけど、彼も委員長に選ばれるだけあって他の人とどこか異質だからね。口がうまいんだ、気づけば彼に乗せられている人も多いの。」

「なるほど。口八丁で交わされてしまうかもしれないし、もしかしたらそのまま組まされる可能性もあるのか。」

「うん…。」

「それなら、搦め手ができないようにストレートだな。多くの言葉ではなく短く簡潔に伝えるほうが情報もわかりやすく曲解もできない。」

「でも、それだと彼に悪いというか…。」

「そんな場を作り上げてしまった彼が悪いんだ、そこは割り切って考えよう。」

「………うん。」


まだ納得したわけではないが、断りたいことに変わりがなく、他の案が聞けそうにないということもあって彼女は渋々納得したようだった。


「あくまで俺の意見だ、全て鵜呑みにする必要はないぞ?」

「わかってるよ、そこは自分でも考えるよ?けど、やっぱり、穏便に解決はできそうにないんだなって。」

「人に気持ちや考えを伝えているんだ、伝えるという選択肢を選び、返事を聞くということを選んだんだ。返事は自分に都合のいい物だけとは限らないし、相手のことを想うなら嘘偽りなく伝えるほうがいい。」

「…そうだね。」


彼女は少しの間一人で悩み、考えていたが、次第にどこか自分で納得したのか深呼吸をして自分の顔をパシッと叩いた。


「よし!」

「えへへ。うじうじするのはおしまい。新庄君、話を聞いてくれてありがとう。」


「どういたしまして。何か自分の中でまとまったのか?」

「うん。新庄君の言う通り自分の気持ちに正直になるよ。私は私だもんね!」

「そうか。」

「色々話して私もすっきりしたし、私のために色々考えて伝えてもらえてうれしかったよ、ありがとう。」

「相談されたんだ、だから俺は一つの見解を伝えたに過ぎない。感謝はそれくらいでいい、気持ちが落ち着いたならこちらとしても俺のやるべきことができたようでよかったよ。」


俺たちはそんなことを話していると、ふいに俺は時間を確かめた。


「それで、話が終わりだとするならこれからどうする?ここで食べていくか、他で食べていくか。」

「それならここで食べていかない?こんな時間だし、ここで食べた方がいいと思う。」

「そうか。」


そうして、俺たちは2人でディスプレイのフードメニューからそれぞれ食べたいものを探した。



ここまでお読みいただきありがとうございました。


また次話もお読みいただけると嬉しいです。


感想・評価・ブックマークもしていただけると嬉しいです。

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