第43話
「いらっしゃいませー!」
俺たちが店内に入ると、元気な声であいさつをされた。
「2名様でいらっしゃいますか?」
「はい、そうです。」
「わかりました。では、席へご案内します。こちらへお願いします。」
俺たちはウェイトレスを務めている女生徒に案内されて席に着いた。
店内には俺たち以外に数組の女子、男女が来ていた。
「ご注文が決まり次第お呼びください。」
そう言って、彼女はお冷を置いて下がっていった。
「普通にカフェをやっているんだな。」
「そうね。思っていたよりも普通にやっていて驚いているわ。話はあとにしてメニューを決めてしまわないかしら?」
俺は千春に促されたこともあってメニューを決めることにした。
メニューに関してはそこまで豊富というわけではなかったが、それなりに安いポイントで頼めるものばかりだった。
「俺はこれにしようと思う。」
俺が選んだのはサンドイッチだった。
手作りと書いてあり、シンプルだからこそ味がわかりやすいものだと思ったからだ。
「私はフレンチトーストにするわ。飲み物は?」
「そうだな、コーヒーを頼もうと思う。千春は?」
「私も同じものでいいわ。」
「それなら決まったことだし呼ぶか。」
俺たちはウェイトレスに頼んで注文が届くのを待った。
待っているところで再びメッセージを受信し、ようやく自分の評価を確認できるようになった。
「千春、見たか?」
「ええ。今確認するところよ。」
千春もメッセージが来ていることを確認したので俺たちはそれぞれ自分の専用ページで確認をすることにした。
そこには教師からのコメントが付いていたが、大したことが書いてなかったので読み飛ばしてしまった。
一応後で確認しようとは思うが、今はそこまで重要じゃないからだ。
評価については、『3000』と書いてあった。
これが果たして大きいのか、小さいのかはわからないが、少なくともこれで来月には300000ポイントが入ってくる計算だった。
(初期ポイントよりも多いからこれはかなりの高評価なのか?)
俺はそう思ったが、他の学生もいる手前、迂闊な発言ができなかった。
「どうだったのかしら?貴方の表情からはどうだったのか読み取れないのだけれど…。」
千春は不安そうにそう尋ねてきた。
今回の評価についてどう判断すべきか俺自身が悩んでしまったので、ポーカーフェイスをしたつもりだったがうまくできていたようである。
「おそらく問題ない。ここを出てから話そう。」
「わかったわ。それで、この後なのだけれど…。」
「すみません、ご注文の品を届けに来たのですが…。」
俺たちが話していてどのタイミングで渡していいのか悩ませてしまったようだ。
この点についてはまだ学生で始めたばかりなのだろうということがうかがえた。
「すいません、あっ、サンドイッチは私です。」
「いえいえ、こちらこそすいません。こちらがサンドイッチになります。そして、こちらがフレンチトーストです。」
彼女は俺たちの前にそれぞれの品を置き、
「そして、こちらがコーヒーになります。まだ淹れたてで熱くなっておりますので火傷に注意してください。以上でご注文の品はお揃いですか?」
「はい。」
「では、ごゆっくりどーぞ。」
「すいません。」
「はい?」
「すみませんが、学園の先輩ですよね?」
俺は下がろうとしたウェイトレスにそう質問をした。
店の込み具合から観て多少の質問は問題ないだろうとの判断をしたからだ。
俺が彼女を呼び止めたことに千春は不思議そうにしていたが、俺が何を始めるのか気になったようだ。
「え〜と、そうですけど、あっ、新入生の方ですか?」
「はい、そうです。」
「なるほど。じゃあこうやって私がこの店で働いていることとか気になっちゃったわけだ。」
「そうですね。しかもこのお店も元は家でしたよね?」
「そこまで見抜いちゃうんだ。」
彼女は笑いながらそう言うと、
「ちょっと待ってて。」
そう言って彼女は店の奥に行くと、そこで誰かと話をしてからこちらに戻ってきた。
「他のお客さんは友達とか知り合いだし大丈夫だって彼も言ってるし、お客さんが来るまではいいって。」
「ありがとうございます。」
「それで、聞きたいことって何かな?」
俺は初対面であるが人当たりの良さそうな彼女から聞けることは聞いておくべきだと思い、遠慮なく質問することにした。
「そうですね、まず気になったのは店を学生がもつことをできることですかね。ここは先ほど言っていた彼にあたる人と共同で経営しているんですか?」
「そこからか〜。多分この後学園側からも説明が来ると思うけど、私たちは一応ポイントを稼ぐ手段を与えられていて、一定以上の成績を出せている人たちにはバイトとか認めているの。そして、その中でも成績上位者たちは一定のポイントを払うことになるけど、私たちみたいにお店を持ってポイントを増やすことも認められているの。一応お店を経営することになるとそう言ったノウハウ、技術を学ぶための学習を短期間だけどやらされて営業が認められるよ。実際は、一応学園側のスポンサーもいるから学生としてできる範囲で経営しているって状態かな。卒業後はこのお店がどうなるとかはわからないしね。」
「誰かに譲る可能性もあるということですか?」
千春も気になったのか質問に混ざってきた。
「そうだね。一応お店だから利益を出さないといけないけど、開店できるのは長期休暇と祝日と休日だけど、試験期間とかもできないからほぼ赤字覚悟だね。一応そうならないようにはしているけど、そうなったら手放さざるを得ないかな。成績が下がって言ってもやめさせられちゃうし。」
苦笑しながらそう言っているが、目は笑っていなく、絶対にこのお店は守るという目をしていた。
俺はまだよく知らないがこの先輩もかなりの覚悟を持ってこの店を始め、真剣に働いているのだろう。
簡単に失わないように必死なのだ。
「どうして先輩はこのお店を?」
俺は気になったのでそう聞いてしまった。
「うん?うふふ。秘密と言いたいけど、可愛い後輩君たちには簡単にだけど説明してあげるね。このお店は彼の夢なんだ。私の相棒はね、料理が好きなの。いっぱいのお客さんに自分の料理を食べてもらって、おいしかったって言ってほしいみたい。私は、そんな夢を話してくれる彼が好き。だから応援したくなっちゃった。きっかけはそれだけだよ。これ以上は恥ずかしくて話せないかな〜。」
そう言って彼女はニヤニヤしているが恥ずかしそうというわけではなく、これ以上は聞かないでという雰囲気だった。
「わかりました。ありがとうございます。」
「ううん、大丈夫だよ。また何かあったら聞いていいからね。私の連絡先教えておくね。このカフェを贔屓にしてもらいたいし!あっ、彼女さんは嫉妬しない?大丈夫?」
彼女は笑いながらそんなことを聞いてきて始めは呆気にとられてしまったが、
「い、いえ、大丈夫です…。」
「そう?よかった。一応彼一筋だから浮気して取ったりしないから安心してね。」
彼女のペースに押されて俺は連絡先を交換したが、千春がここまで押されているのは初めて見た。
「自己紹介がまだだった!私は、2年の戸塚 莉桜だよ。よろしくね!」
「自分は1年の新庄 蒼雪です。」
「同じく1年の白崎 千春です。」
「蒼雪君に千春ちゃんね、よし、覚えた!これからもこのカフェともどもよろしくね。私は仕事に戻るから。」
そう言って彼女は奥に戻っていった。
俺と千春は彼女のペースに押されて聞きたいことは聞けたが、気づけば連絡先を交換していたりと嵐のような人だったとも言えた。
俺たちは少し冷えてしまったが昼食をゆっくりと食べ始めた。
味は手作りというのが伝わってきて、おいしいと評価できた。
一も料理が好きだと言っていたが、1年の差がここまで出るのか、と感じた
ここを一に紹介するのもいいかもしれない、そんなことも考えていた。
俺たちは食べ終えてからこの後どうするか話し合ったが、一先ず会計を終えてから学園に相棒申請をしに行くことにした。
細かいことは話していないが、ポイント的にも第一候補でも大丈夫だと伝えた。
彼女も第一候補の所であっても大丈夫だと言っていたからだ。
俺たちが会計に行くと、彼女は「またのご来店お待ちしております。」と言ってから、手を振って見送ってくれた。
とても距離感が近い人だと思ったがそれに不快感を感じさせないところが彼女のいいところかもしれないと俺は思った。
店を出て学園に向かうまでは俺たちは昨日のことを話していた。
買い物の後にあったことを話していても思ったよりも話題が尽きなかった。
彼女に少し小言として言われたのはやはり俺たちの関係について話してしまったことだった。
「仕方ないわね。今回だけはあなたの友人で信用のおける人たちだから許すけど、できればあまり言いふらしてほしいことではないわ。」
彼女は最後にそう締めくくった。
学園に着くと、事務関係は休日でやっているか不安だったが学務課は開いていた。
「すみません、相棒申請に来たのですが。」
俺がそう声をかけると、
「わかりました。こちらへお願いします。」
そういって学務課の人に中へと連れられて行った。
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