第40話
「買い物はどうだったんだ?」
俺は詩音と今日の解散した後について少しは話していたが、秀人たち視点からはどうだったのかと思い彼らにもこの話題を振った。
「ふむ、どうと言われると答え方に困るが必要なものはそろえたというところだ。料理に関しては普通としか言えないしな、米とみそ汁、おかずに総菜を用意したくらいだ。作れないことはないができるとは言えない程度だ。だから総菜を頼った。」
秀人は自嘲気味にそう言ったが、作れなくはないというだけで必要に迫られればやるのあろう。今日は総菜で手を抜きたかったとかそういう日なのかもしれない。
「僕はさっきも話したけど響真に作ってもらう約束をしていたから、キッチン周りのものについては買ってないよ。できるまでは響真に頼るけど、僕だって作れるようになるまで頑張るから!他に買ったものは、服とか、お薬とか、あとは部屋に飾るものかな。借りた部屋だから最低限のものはあっても、やっぱり明るくしないと一人だと怖く感じちゃって。」
詩音は恥ずかしそうにそう言った。
「蒼たちはどうだったんだ?」
響真はこちらに話を振ってきたので、俺も今日あったことを簡単に話した。
「そうだな、こっちはこっちでデパートに買い物に行った。先に話した通り昨日一緒に行動していたクラスメイトも一緒にな。」
「それって、女子?」
一が同行したクラスメイトと言うのに食いついてきた。
「そうだ。白崎千春と榊麻衣の二人だ。」
「そっか〜、女子二人とか両手に花だったんだね。」
「いや、俺もいたから!俺がいたこと忘れているだろ!」
一の言い方が俺と女子二人の三人で買い物に行ったというふうに聞こえたのか正悟が自分も一緒にいたとアピールしていた。
「ああ、ごめんごめん。正悟も一緒だったんだね。なんとなく蒼だったら女の子二人と出かけていても不思議じゃなさそうだから忘れちゃってたよ。」
一は正悟をフォローしたつもりだったようだが、
「俺はそんなイメージなのか…?」
俺は一からそんなイメージを持たれていたのかと思って軽くショックを受けた。
「いや、そんなつもりじゃなかったよ!う〜ん、なんだろう…、そう、蒼はなんだかんだ言って面倒見もいいし優しいし、自分っていうものを持ってるじゃん?だから女の子の方から蒼にアプローチもかける子もいるんじゃないかなって!だからそんな悪気があって言った表現じゃなくて…。」
あまりに必死に言うため本当に悪気があったつもりで言ったことじゃないと分かったので、
「わかったよ、一。悪気があったわけでないならいい。」
そういって、一がフォローをしようと続けているのを遮った。
「…わかった、ごめんね。これからは気を付けるよ。」
そう言って一はシュンとしていた。そんな空気を換えようとしたのか、
「まぁアプローチをかけられているのは間違いじゃないんじゃないか、蒼?」
正悟は俺に対してそう問いかけてきた。隠すようなことではないため俺は、
「確かにそうだな。」
と肯定した。
「え!?そうなの!?」
詩音は心底驚いたというリアクションをした。正悟は、
「そんな簡単に認めるとは思わなかったな。」
とからかおうとしたのを潰され、意外そうにしていた。
「否定することは彼女に対して失礼だと思ったからな。」
「ん?その口ぶりだと既に告白されているのか?」
正悟は俺の言い回しから察したらしい。他の面々も正悟に言われてハッとなっていた。
「ああ。」
俺は簡潔にそれだけ答えたが、響真と秀人はあまり興味を持っていないようだった。
「あれ、響真と秀は興味なさそうだけど、どうして?」
詩音も響真たちが興味なさそうなことを感じ取り、本人たちに聞いていた。
「俺は他人が誰とどうしていようと、自分に関わっていないならそこまで興味はない。蒼の相手だから変な奴ではないと思うしな。」
「俺は、他人の恋愛関係に口を出すつもりはねぇからな。相談には乗るが、そういうことは当事者がどうにかすべきだからな。俺たちが勝手にあれこれ言っても仕方ねぇことだ。」
二人は二人なりの恋愛観のような考えがあるようで、特に何かを言うつもりはないらしい。
「う〜ん、確かにそうだけど…。」
「詩音も他人の恋愛事情に茶々入れるなよ?別に聞くことはいいが干渉しすぎるなってだけだ。聞かれるのが嫌な奴だっているだろ?」
響真は詩音を諫めていた。詩音はどこか納得しているようでしていない状態だったがそれ以上深く聞こうとするのは止めたようだ。
「このタイミングで言うのは悪いと思うが、」
この話が終わろうとしているところで再び俺が口を開いた。
「ん?」
「俺は確かに告白をされたが返事は保留にしてもらっているぞ?」
「は!?」
「なんで!?」
さすがに俺の続けたことが意外だったのか正悟と一は驚きを隠せないでいた。詩音も驚いた様子を隠せないでいたが、響真と秀人も興味はないと言っていたが俺のこの発言には驚いたのかポカンとしてしまった。
少しの間、空気は固まったままでいたが、正悟がハッとなると、
「いやいや、何で保留にしているんだよ!あれだけベッタリだから付き合っていると思ったぞ?朝も密会していたようだし。」
正悟は俺が保留にしていたことを言及しただけではなく、さらなる爆弾まで投下してさらに話がややこしくなった。
「え!?蒼は朝にその女の子と会っていたの?」
詩音は正悟が朝に密会していたと言ったことに耳聡く反応して俺に質問してきた。
「はぁ…。正悟。」
俺は正悟に対して溜め息をつきながらどうしてくれるんだという目線を送ると、
「悪かった、つい口が滑った。すまん。」
そう言うので仕方なく、
「はぁ…。わかった。とりあえず朝の件から話すがこれを話すには昨日の試験中のことも少し話すことになるが、どうする?」
俺は長くなると思うがそれでも聞きたいか、と彼らに問いかけた。詩音と一は聞きたいと言い、秀人は、
「興味はないと言ったがさすがに朝に会っていたのは驚いたな。話したいなら聞く。」
と話すなら聞くというスタンスを取ったがなんとなくだが聞きたいのだろうと感じた。
「俺はとりあえずお前が保留にしている理由も聞きたいし、話を聞こうまずはそれからだな。」
「はぁ、わかった。それじゃあ昨日あったことから話していく。」
俺はそう言って簡単にだが昨日あったことを話し始めた。図書館で会ったこと、男子学生寮前でのこと、一緒にスタンプを集めたこと、等々を順序だてて説明した。
「…スタンプを押して、次の目的地に向かおうとしたところだった。先生の話にもあったと思うが、暴漢に襲われたんだ。」
「あの話は蒼たちだったの?」
「よく怪我無く済んだな。危ない連中だったんだろ?」
詩音と響真が途中でそう言ってきたところ、
「ああ、俺たちも被害者の一つだな。怪我については俺が躊躇ったばかりに白崎に負わせてしまったよ。」
「…ああ、悪い。気にしていたんだな。」
「いや、いいんだ。事実だ。」
「蒼は悪くねーよ、結局あいつらを倒したのも蒼だったじゃんか。白崎や榊も感謝しても恨みはしてないはずだ。」
「ああ、わかっている。だが、白崎が怪我を負ったことには変わりない。」
「そうだけど…。」
「悪い、話の続きを聞いてもいいか?お前らがそうしていると話が進まないし、そもそもの原因は襲ってきたやつらだろ?お前らがうじうじしていても仕方ないんだよ。」
響真は俺と正悟のそんな煮え切らない状態にそう口を出してきた。
「そうだな、すまない。話を続けよう。と言ってもここからはそこまで複雑ではない。彼女は俺に助け出されたことで俺を意識するようになった。俺も不思議と彼女を意識していた。そしてそのまま試験も終わり寮の申請をするときに白崎が考え事をしていた。深夜を過ぎてその考えがまとまったというときに連絡をくれて、本当にたまたま起きてた俺が返事をしたところ会うことになった、それだけだ。」
俺は起きてしまった原因については嘘をついたが概ね事実のことを話した。
「なるほど〜。けど、朝に会わなくても他の時間でもよかったんじゃない?聞いていると、朝って言っても全然暗い時間のことだよね?」
「確かにそうだな。だがその時に俺は眠れなくて外を歩いていたから何気なくそう言ったんだ。そしたら彼女も来ると言ったんだ。」
「へぇ〜、よっぽど早く会いたかったんだね。」
「それで、蒼。どうして保留にしたんだ?聞いていると蒼も白崎のことを意識していたならOK出してもよかっただろ?」
「確かにそうかもしれないが、昔色々あって俺自身がまだ誰かと付き合うということに関してはその資格がないと思っている。少なくともこの問題が解決するまでは付き合ったとしても中途半端な気持ちになって相手に失礼だと俺は思っている。だから俺もそう言った。しかし、彼女はそれなら待つと言ってくれたからな、今はそれに甘えている。」
「なるほどな…。」
正悟は俺の話を聞いて理解したようだ。
「その蒼雪自身の問題については話してもらえねぇ感じか?」
「すまないがこれに関しては俺自身で考えたい。」
「わかったが、約束しろよ。悩んで解決しねぇなら俺たちかその女を頼れ。一人で抱え込むなよ?」
「ああ、わかった。」
響真は俺が抱えていることには踏み込んでこないが、誰かを頼るように約束を持ち掛けてきたので、それを承諾した。
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