第39話
寮に買えると、俺は宅配サービスで送ったものを寮長から受け取り部屋に持ち帰った。
部屋に入りリビングに行くと、先程コンビニで買ったものも含めて買ってきたものを整理した。それなりの時間はかかったが、片付けが済むと料理を始めた。
すると、いつのまにか端末にメッセージが来ており、正悟から『俺の分も料理を作ってくれないか?』とのことだった。さすがに毎回は困るので作り方を教えるから来いと俺は返信した。メッセージを返信するとすぐに既読が付いたかと思えば、インターホンが鳴り部屋の前に来ていた。鍵を開け、部屋へ招き入れると、
「悪いな。何とかしようと思うが手伝いとか家庭科の調理実習程度のことがなんとかギリギリってところなんだ。」
と言っていた。さすがに俺は一般的にできるというだけで特別下手でも上手いわけでもないと思っていたのでできる人を読んだ方が早いと思い初めに連絡を取ることにした。彼に電話をかけると数コールでつながった。
「もしもし?」
「もしもし?蒼雪君から連絡をくれるのは何か意外だったよ。それで、どうかしたの?」
「ああ。確か一は料理が好きだったよな?作ることも含めて。」
「そうだけど、もしかして僕に作ってほしいの?」
「当たらずも遠からずというところだな。作ってほしいのではなく教えてほしいんだ正悟に。」
「ん?何でここで正悟が出てくるの?」
「ああ、そのことなんだが…」
俺はここで簡単に現在の状況を説明した。
「…なるほど、つまり正悟は基礎から危なさそうだからできそうな僕から教えてあげてほしいってことなんだね?」
「そういうことだな。」
「そういうことならわかったよ。それじゃあ今から蒼の部屋に行くね。」
「ああ、悪い、助かる。」
「大丈夫だよ〜っと。またすぐにね〜。」
そう言って一は電話を切った。俺たちはけじめを待っていると、数分後に一がインターホンを押した。
俺が鍵を開けると、
「やっほ〜、今朝ぶりかな?」
「そうだな。悪いなこんなことで呼びつけて。」
「いいよ、いいよ。こんな僕でも頼られると嬉しいし。」
「そう言ってくれると、助かる。っと、ここで立ち話も何だ、上がってくれ。」
俺はそう言って一を部屋に招き入れた。
「よっす、一。悪いな。」
「朝ぶり〜。全然大丈夫だよ?それで、どこから教えればいいの?」
「そうだな〜、基礎から頼む。それとできれば簡単な料理のレシピも教えてほしいかな。」
リビングへ案内し挨拶を済ませると二人は早速料理に取り掛かった。と言っても一が作りながら正悟に教えているだけで、本格的に基礎を教えるのは翌日の時間のある時から始めることになった。さすがに今晩の献立だけでは教えきれないことが多いからだ。ちなみに、今日のメニューはカレーだった。そこまで凝ったものを作るつもりでなかったから数日は日持ちするものを作りたかったのだ。
俺は教えるのに邪魔にならないようにリビングで読書をしていたが、思い返すとこれなら俺の部屋でやらなくてよくないか?と思ったが、今更のことだったのでここで指摘するのは止めた。
「蒼雪君。ちょっといいかな?」
「どうした?」
一が正悟に教えるのを中断して声をかけてきた。正悟はこの間に端末のメモ帳に色々とメモを取っていた。
「せっかく蒼雪君が買ってきたものを結構勝手に使っちゃったからさ。謝らないとって思って。」
「悪い、蒼。ここお前の部屋なのに俺たちで使っちまってよ。」
「気にしなくていい。その代わりうまい夕飯を期待している。」
「そう言ってくれると助かるよ。それと、結構作ったし、他の皆にも声をかけない?せっかく作ったから多くの人に食べてほしいなって思って。」
「なるほどな。構わないぞ。だが、声をかけるなら早めの方がいい。彼らも夕食の準備はしているはずだからな。」
「そうだね、今声かけてみる!」
そう言うと一はあわててグループで連絡を取り始めた。
少し経ち、彼らからも返信は来たが一は正悟に教えることを再開していたため手が離せない状態だった。仕方がないので俺が彼らに状況を説明して、夕飯を一緒に食べないか誘った。誘ってみたところ、響真は少し準備を始めていたようだが、来れるとのことだった。秀人と詩音はまだ夕飯に関しては手を付けていなかったので逆にありがたいと言っていた。彼らと連絡を取るのを終えると、秀人と詩音はすぐに来た。響真は15分ほどしてから来たが、時間が空いたのは作ろうとしていた肉じゃがを完成させてからこちらに来たようだった。響真は誘ってくれたお礼と言ってタッパーに肉じゃがを分けて持ってきてくれたので、俺は礼を言ってそれを受け取った。
響真も一応料理ができるとして来てからは一と協力して正悟に教えながら夕飯を作ることを手伝っていた。俺は詩音と今日あったことについて話し、秀人は参考書をまた読んでいた。
作り始めて数時間が経ち、20時頃になると料理も完成したようだった。一と響真はもう少しカレーならば煮込んでいたかったというが時間の関係上これ以上はできないと妥協したようだった。
「みんなお待たせ〜、できたよ〜!」
「待たせて悪かったな。できたから運ぶの手伝ってくれ。机周りも片付けてくれ。」
一と響真に支持されて俺達も食べる準備を整えた。作っていたのは、カレー、中華スープ、とんかつ、サラダと少々作るのに時間はかかったが比較的簡単なものだった。
「わぁ〜、おいしそうだね!僕もこれぐらいうまくできたらな〜。」
詩音はどこか感激したような口ぶりだった。後から響真に聞いたが詩音はお菓子作りしかできないようで普通の料理を作ると時々失敗してしまうようだった。なぜ失敗するのかは本人も響真もわからないようだった。失敗と言ってもそんなに酷いものではないと思ったのだが、調味料を間違えることもあれば、なぜか作ったものが甘くなりすぎるとのことだった。どうしてそんなことが起こってしまうのか疑問だったがそれ以上は深入りしなかった。
「うまそうだな。この礼はいつか必ずしよう。」
秀人もそう言って感心していた。
「お礼なんていいよ、僕は作りたかったから作っただけだしね。それにみんなで食べたいから誘ったんだ。お礼をしたいなら作った料理を食べて感想を言ってくれると嬉しいな。」
「わかった。そうするとしよう。」
秀人はそう言うと、少し照れ臭そうにしていた。
俺たちが配膳を終えると、正悟は、
「二人ともマジで感謝する。ありがとう。多分これからもいっぱい聞くと思うけど、教えてくれると助かる。蒼も場所と食材ありがとうな。この分の費用は俺が払う。さすがにこれで蒼の負担にするのは俺の気が済まない。」
そう言って正悟は今日の買った食材の金額を聞いてきたが、俺は気にしなくていいと何度か言ったが引き下がることがなかったので合計の5割だけ払ってもらうことにした。さすがにすべて負担させてしまうのは俺も申し訳なかったからだ。自分で調理したわけではないにしても結局食していることには変わりないからだ。
「そんなことより早く食うぞ。せっかく出来立てを食べるんだ、温かいうちにちゃんと食え。」
響真がそう言うので俺たちはリビングに6人は少々狭く、机に置ききれない分は床で申し訳なかったが夕飯を食べ始めた。
「おいしいね!響真の料理は何度も食べたことあるけど、一君のもおいしい!」
「本当?そう言ってくれると嬉しいな。秀人はどうかな?」
「ああ、うまいぞ。あれだけの時間でよくこれほどのが作れたな。」
「そうかな?僕はいつも通りに作ったし、それにみんながおいしいって言ってくれるように作ったからね。」
「そうやって食べる相手のことを考えているからおいしいんじゃないか?独りよがりの料理ではこんなにおいしいものができないはずだからな。」
俺も詩音や秀人が褒めたように、一の作ったものがおいしく感じられたから素直な感想を伝えた。
「みんながそこまで褒めてくれると恥ずかしいよ。ほら、早く食べてよ、冷めちゃうよ。」
そう言って一は、カレーを思いっきり食べていた。
響真と正悟は早いペースで食べておりその食べっぷりが感想とも受け取れなくもなかった。お代わりもしていたことからも結構気に入っているようだった。
その後はゆっくり話しながら食べ、食べ終わると今度は俺、詩音、秀人で片づけをした。さすがに作ってもらったのだから後片付けぐらいはしておきたかったのだ。それが終わると、昨夜のようにまた雑談に花を咲かせていた。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
また次話もお読みいただけると嬉しいです。
感想や評価、ブックマークもしていただけると嬉しいです。




