第23話
俺たちが体育館に入ると、外で見たよりも多くの人数が体育館にいた。しかし、そのほとんどは提出前のテント付近や一部の場所に集まっていた。そして、俺と正悟は最後に体育館から出た時からの変化に気が付いた。
「おい、正悟気が付いているよな?」
「おう、さすがにこれには気が付いたわ。」
「ん~、何?何か変わってるの?」
俺と正悟だけでしかわかっていないやり取りに黒宮が入ってきた。
「俺と正悟は最後までこの体育館にいたんだが、その時はテントが一つしかなかったんだが今では二つは繋がっているが三つに増えているんだ。しかも増えた二つは中が見えない一方通行のようだしな。」
「おまけに入口にホワイトボードがあるのが見えるしな。」
「じゃあ君たちが出てから置かれたってことか~、もうあからさまに意味ありげだね!」
「そうね、それを聞く限り黒宮さんの言う通り意味深ね。」
白崎も俺たちの発言を聞いて何かあると思ったようだ。
「じゃあ~、みんなで見にいこうか~。行けば何かわかるよね~」
のんびりとした口調で高橋が話すもので緊張感というものが俺たちの中にはなかった。
テントの近くにあるホワイトボードの近くまで行くと、そこで考えている生徒も多くいて何が書かれているのかよく見えなかった。あまりに密集していたので白崎が、
「ちょっと、確認をしたのならそこから移動してくれないかしら。あとから来た人が確認できないわよ。」
白崎のその発言を聞いて移動してくれた生徒はいたが、一部の集まっていた生徒は関係ないと言わんばかりに退いてはくれなかった。
「聞こえなかったのかしら?それともそれほど近くにいて見ることもできないのかしら?」
「ああん?別に俺たちがどこにいようと俺たちの勝手だろ?お前に命令されるいわれはない。」
「何ですって?」
「落ち着け、白崎。こいつらの言うことも確かだ。自分勝手な奴はどこにでもいる。言うだけ無駄だ。」
俺は退かない奴らにも聞こえるようにそう言った。こいつらが退かないのは自分たちよりも先にゴールさせないという妨害のようなものだと感じていたからだ。さらに、この集団にいるとある人物から何かを感じ取ったというのも理由の一つだ。
「何だと?もう一度言ってみろよ?誰が自分勝手な奴らだと?」
退かない連中の中から一人の男子がそう怒鳴り返してきた。それに同調するかのようにその集団はこちらを睨むように見てきた。その中で一人だけ動じずこちらただニヤニヤして見てくる男子もいて、彼がこの集団のリーダー格であろうと推測できた。そして、俺が感じとった何かを持つ人物であろう。だからこそあえて煽るように再び、
「人の言うことがきけない自分勝手な奴らだと言ったんだ。」
「おい、蒼…?どうしたんだ、急にらしくもなく煽って。」
正悟は俺に心配そうにそう小声で聞いてきた。
「ああ、少し試してみたくてな。」
「試す?」
「この連中、見るからにこんなに早くここにいるように思えない奴ばかりだ。このゴロツキを一日にして纏め上げているのはどんな奴か見ておきたくてな。」
「なるほど。でもやりすぎじゃないか?」
「ここで暴れられても教師もいるし、多くの目もある。そこまで被害は出ないさ。」
俺たちが小声でやり取りをしていると、
「いつまでごちゃごちゃそっちでしゃべってんだよ!」
男はそう怒鳴ってきた。
「まだ、退いてくれてなかったのか?何度も言うのは面倒なんだがそこを退いてくれないか?見えなくて迷惑なんだ。」
俺は再び煽るようにそう言った。
「ああん?っんだとテメェ!」
男子生徒がそう言って俺につかみかかろうとしたところでリーダー格の男が初めて発言した。
「いい加減にしろ!ここでやりあうことを俺が許可したか?」
「けど、虎徹さん!」
「あん?俺に指図するのか?いつからそんなに偉くなった?」
「す、すみません…。」
「邪魔したな。お前名は何だ?」
相手のリーダー格の男がそう聞いてくるので
「新庄 蒼雪」
と名前だけ名乗った。こいつとよろしくすることはないだろうと思ったからだ。
「蒼雪だな。覚えたぜ。俺は真田 虎徹だ。お前とはきっちりと場を整えてからやりあいたいもんだぜ。」
「俺は遠慮したいけどな。」
「おいおい、そんな目をして誤魔化せていると思うのか?お前も俺と同じで楽しみにしてんだろ?」
「………。」
「黙秘か?まぁいい。」
俺にそう言うと、
「お前ら!ここを退くぞ。ここでの用は済んだからな。」
そう真田が言うと集まっていた連中は全員体育館の隅へと移動した。
「新庄君。」
白崎が不安げな様子で俺を呼んできた。
「どうした?」
「どうしたってなんであのような発言を?貴方らしくないというか…。」
段々と声がしぼんでいったが、言いたいことはなんとなくわかった。
「確かに今まで見せていた一面からするとらしくもないことだったかもしれない。だが、あの男を見て何か感じるところがあってな。いい相手になってくれそうだとな。」
「いい相手って。まさか彼とやりあうつもりなの?」
白崎は信じられないと言いたげな様子でそう聞いてきた。
「物理的なやりあいとは限らないだろうな。もしかしたらそっちもあるかもしれないが頭脳戦・心理戦といったところで戦うことになるだろうな。あいつは計算高い奴だ。」
「ん?蒼、あいつと知り合いなのか?」
俺の発言がかつてからの知り合いというように感じたのか正悟がそう聞いてきた。
「いや、知り合いではないぞ?ただ何かを感じるんだ。あいつは俺と同種だろうとな。」
「同種って。」
正悟は何か言いたげにこちらを見ながらそう言った。
「んー、よくわからないけど、彼、真田君?と新庄君は同族嫌悪してるってこと?」
黒宮がそう聞いてきたが、神田が黒宮の発言を訂正した。
「瑞希、同族嫌悪ではないと思うわ。彼らの様子を見て嫌悪してるかしら?むしろ喜びあってない?それこそ運命の相手と出会ったかのように。」
「確かに皐月の言う通りかもね。」
「とにかく、新庄君は彼に対して何か思うことがあってさっきみたいなことをしたということね?」
「そうだな。あんな奴らの手綱を握っているんだ。しっかりと統率できているとは思ったよ。」
「そういうことなら、理解しかねるけど納得はしたわ。できれば今後、こういうことがないといいわ。」
白崎はそう言うとホワイトボードの方へ行った。俺たちのやり取りを遠巻きに見ていた生徒たちも自分たちで何かの話し合いを始め、一人で行動していた人も何かを考え始めていた。白崎に続いて榊達女子がそれに続くように移動して、正悟と俺がそれに続こうとしたところ、
「蒼。」
「何だ?」
「俺の直感になるが、あいつとやりあうときは大変になるだろうけど、俺たちも頼ってくれよな。俺たち友達だろ?一人じゃ無理でもみんなでならなんとかできるはずだ。あっちも人数が多いしな。」
そう言って正悟は先に行ってしまった。照れ臭かったのか耳が赤くなっているのが見えた。
ホワイトボードには先に説明したルールや注意事項が書かれていた。一度しか言わないと言ったがこういう配慮は一応してくれていたみたいだ。もしかしたら同じ質問が多かったのかも知れない。それとは別に、気になることが書かれていた。おそらく他の生徒が考えているのはこのことだろう。
『君たちは本当に忘れていることはないかね?違うスタンプを押していれば減点、提出先を間違えていれば評価できかねる。よく考えなおしてみるといい。問題にはメッセージが込められている、よく読むことだ。』
そう書かれていた。
おそらく自信がある人たちは提出をして、慎重な人たちは時間いっぱいまで考えるのかもしれない。だからこそここに提出していない人が多いのだろう。
それぞれ確認が終わったのかこちらを見てきていた。
「どうした?提出しないのか?」
俺がそう聞くと、
「いや、ここまでできたのって蒼のかげだし、一応確認した方がいいのかなって。」
「私はあなたの判断に任せるわ。私は大丈夫だと思っているけれど、い、一応あなたに確認をした方がいいと思たのよ。」
「ん~、なんか新庄君がリーダーっぽく思えてきたから任せようかなって!」
と各自が判断を俺に任せたようだった。リーダーだと宣言したつもりはなかったが、俺たちが集めたスタンプは間違えていないと思っているし、黒宮たちの問題文と解答の考え方を聞いたかぎり問題はないと思ったので、
「俺たちは大丈夫だ。行くぞ。」
と言って、テントの中へ入っていった。俺がそう言ってテントへ入ったので全員が俺に続いて中へ入っていった。
現在時刻16:30 18:00までおよそ1時間 現在集めたスタンプ8
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