第22話
「担任が誰なのか知らないってどういうことだ?鮫島先生が担任じゃないのか?」
「ああ、俺もついさっきまではそうだと思い込んでいた。だが、よく思い返してくれ。彼は一度でも担任であると言ったか?」
そこで白崎もようやく気付いたのかハッとなり、
「…言ってなかったわ。」
「白崎も気づいたか。」
「ええ。貴方のおかげでようやく気付けたわ。」
「榊も気づいているだろ?」
俺がそう聞くと、ハッとなってから何も反応がなかった榊も頷いてくれた。
「正悟はどうだ?」
「う~ん、確かにそう言われてみると鮫島先生は担任とは一言も言ってなかった気がする。けどよ、それなら担任は誰なんだ?多分だけどあの時は誰もどこのクラスの担任か言ってなかっただろ?」
「それは俺もまだわからないさ。」
「それなら結局誰にてい…」
「が、ヒントはくれていただろ?」
「しゅつを…ってヒント?」
「ああヒントだ。メッセージを作ったのは担任だと言っていただろう?」
「けどそのメッセージだってどういう意味があるんだ?こういう人になれって書いてあるだけだったじゃないか。」
「文章として捉えたならな。重要だったのは、メッセージそのものじゃなくそれぞれのメッセージに散りばめられた各一文字さ。」
「どういうことかしら?」
「俺は期央という単語が気になったのさ。普通は中間試験と書くはずなのにどうしてこんな言い回しをしたのかってな。そして、よく文章に着目したら気が付いたのさ。書く押されたスタンプには一文字ずつだが文字に点が打ってあることにな。どれもかすれたりしたものかと思ったが、全てに、しかも特定の文字の上に共通して点があることには違和感しかなかった。」
「点?……確かに打ってあるな…。」
「だろう?」
各文章をつなげて読むと、『社会のシステムが間違っていると思うならば』『みなさんがリーダーとなって』『新しいルールを作ってください』『思い通りにいかない中でも』『期央の試験では頑張りましょう』『君たちにとっては結果よりも』『過程が大事だというのならば』『日々の努力は欠かせませんね』となっている。その中から点が打ってある文字を抽出すると、シール、中央、はがせ、となった。
俺はこの文字が意味することを考えると、用紙の黒くなっている部分がシールなのではないかと思った。中央が示すシールになりそうなところはそこしか思いつかないからだ。結果として多少剥がれにくくなっていたが案の定シールとなっていたのでそれを剥がした。俺が剥がしたのを見て他の三人も同様に黒い部分をはがした。そして剥がされた後には、
『よく気が付いたな。褒めてやろう。担任は国語の担当教師である月宮 楓だ』と書かれていた。
バスは学園東門前に到着した。
「よし、じゃあこの用紙を提出しに行こうぜ。」
正悟がそう音頭をとると、体育館を目指して歩き始めた。同じバスに乗っていた生徒はほかに見当たらなかったが、ちらほらと俺たちと同じように体育館を目指す生徒はいた。
「やっぱり、この時間になると集め終わったやつらもそこそこいるな~」
「確かにそのようね。私たちが一番早いとは考えなかったけれども思ったよりはいるわね。」
「他のクラスの問題がどのようだったかは気になるな。」
「気になるなら教えてあげよっか?」
俺たちが話している声が聞こえたのか、後方から知らない声が聞こえてきた。
「あぁ、いきなり話しかけてごめんね。君たちの話している声が聞こえたからさ?私たちも集め終わって体育館に行くところだったし、他のクラスの問題がどんな感じだったのか私たちも気になってさ。」
俺たちに話しかけてきたのは他クラスの女子で、俺たちと同様に4人組だった。俺たちと違う点を挙げるとしたら、彼女たちのグループは全員が女子という点だった。
「ええ、いいけれど、その前に一つ確認をしてもいいかしら?」
「んー、何かな?」
「提出先の担任については分かっているのかしら?」
「え?担任について?どういうこと?」
彼女は質問の意図がわからないようだったので、同じグループの人たちとどういう意味かを考え始めた。俺たちは彼女たちが結論を出すのを待つべきか悩んだが、まだ時間にも余裕があったので、少しだけ待つことにした。
数分経ち、彼女たちも担任が誰か、という質問の意図を察することはできたようだった。けれども、そこから先は分からなかったようなので俺たちの問題用紙を見せることにした。
「あー!中央の黒いところってそうなってるんだ!」
彼女は自分の用紙と明らかに違うその一点を見て気が付いたようで、他の子たちも自分の用紙のシールをはがし始めた。どうしてここがシールになっているのか気が付いたのか聞かれたので先程正悟たちと話していたことと同様の説明をすることで彼女たちも理解してくれた。
「にしてもこんな風になっていたなんて気が付かなかったよ!」
「いや~、私も気が付かなかったよ~」
「そうね、これだけのヒントからそれが考えつくのはすごいわ。」
「す、すごいです。」
と四者四様に俺たちを褒めてきた。
「いや~、そんなことないぜ?」
と正悟が照れたように言ってみせたが白崎は、
「確かに早乙女君はそんなことないわね。気が付いたのだって新庄君なのだし。」
と言い、榊もそれに頷いていた。
「おい!別にそれ言わなくていいじゃんかよ~、ちょっとぐらいカッコつけたかったのによ。」
「貴方はそんな風にしてもカッコよくなんてないから安心しなさい。」
「おい!」
そんなやりとりをしていると、話しかけてくれた女子は笑っていた。
「ふふふ、君たちって仲いいんだね。」
そう言ってきたものだから白崎は、
「仲がいいのかなんてわからないわ、ただこの男はからかいがいがあるだけよ。」
と否定はしないが肯定もしない発言をしていた。
「あっ、私たちのせいで時間とらせちゃってごめんね!問題を教えるって話だったのにここまで時間使っちゃったね。」
話が一区切りすると彼女はそう謝ってきた。
「いや、大丈夫だ。まだ時間はあるし気にしないでくれ。それよりも問題を見せてもらってもいいだろうか?」
「ありがとー、はい、これが私たちの用紙だよ!」
そう言って彼女が用紙を渡してくれたので、俺も自分の用紙を彼女たちに渡し、俺たちは集まってその用紙を見た。問題としてはそこまで大差あるものではなく、他クラスが特別有利という問題はないように思えた。そして、彼女たちの解答も聞いてみるとやはりスタンプの場所には男子のみ、または女子のみしか入れない場所が含まれていたようだった。
「やっぱり君たちの答えにもそういう場所あったんだね~」
「わ、私たちは女子しかいなかったのでクラスの男子たちに連絡して手伝ってもらいました。」
「ね~、わざわざ男ども呼ばなくちゃいけなくて面倒だったよ~」
「私たちはその点は楽だったのかしらね。偶然だけれども新庄君たちと会って協力することになったのだから。」
「………私も協力してもらえた。忍び込むの止められたけど。」
「忍び込もうとしたのはさすがにダメだと思うよ。」
さすがに相手も榊のその発言にはあきれてしまったようだ。
「あ、今更だけど自己紹介してなかったね。私は4組の黒宮 瑞希。よろしくね!」
「私は、高橋 遥香だよ~、よろしくね~」
「神田 皐月。よろしく頼むわ。」
「お、小野 唯です。よ、よろしくお願いしましゅ、あっ、します…。」
「唯、そこまで緊張しなくても大丈夫よ。ごめんなさいね、唯は少し男の人が苦手なのよ。」
「そういうことなら仕方ないさ。俺は3組の、新庄 蒼雪だ。よろしく頼む。」
「早乙女 正悟だ!よろしくな!」
「白崎 千春よ。今後があるかはわからないけどよろしくお願いするわ。」
「………榊 舞依。」
「悪いな、榊はあまりしゃべらないんだ。決して機嫌が悪いとかそういうことではないから気を悪くしないでくれ。」
「大丈夫よ~、いろいろな性格の子がいるんだし、それも個性だよ!」
「そう言ってくれると助かるよ。」
「そろそろ体育館へ向かわないかしら?」
と白崎が提案したので俺たちは自己紹介を終えたところで体育館を再び目指し始めた。
現在時刻16:00 18:00までおよそ2時間 現在集めたスタンプ8
ここまでお読みいただきありがとうございました。
今回でさらに登場人物が増えてきました。
今後もこの全員が登場するかわかりませんが、出番を作ってあげたいです。
また次話もお読みいただけると嬉しいです。




