第15話
「そういえば、榊さんはスタンプいくつ集めたんだ?」
正悟は移動を開始して早々に彼女に質問していた。プール女子更衣室はまた学園の敷地内に戻らなくてはいけないが、学校が空いている時間でないと入れないため男子学生寮の後に行くことになっていた。場所は、学園の北側になっており、グラウンドがない代わりにプールがあるということだった。また、この学園のプールは片道50メートルの室内プールとなっている。50メートルというだけで長いと思ったが、室内プールでもあるため天候にも左右されず、実施する日は疲れそうだと思った。
「………3。」
「3つ?どことどこだ?一ヵ所はさっきの男子学生寮だろ?」
「………港と西グラウンド。」
「へぇ~。そこの2つは行ってあるんだな。」
彼女は頷いただけだった。
「俺からも質問いいか?」
「………?」
彼女はこちらに顔を向けると首をかしげてきた。
「そのスタンプは自力で解いていったのか?それとも誰かと一緒に解いて押しに行ったのか?」
「………後者。」
「なるほど。その人たちとはいかなくてよかったのか?」
「………効率が悪かった。楽ができると思ったけどバカばっかり。ついてったけど早々に行き詰ってまた明日にしようと言って解散してた。」
彼女は今までの中では一番明確に感情を表していた。マイナス方面にだが。
「その口ぶりだと一緒にいたのはあのクラスの集団ということか?」
彼女はコクンと頷いた。
「なるほど。あの集団についていかなくて正解だったのかもな。それで、他の問題は解けているのか?俺たちはすでに解いてから行動しているのだが。」
「………問題ない。私も解いてある。待ってる間に残りも解いた。」
「ならいい。港が一番遠いが残りはこの学園の敷地内と居住区だ。時間内に行けるだろう。」
「ギリギリ間に合うんじゃないかしら?不測の事態を想定するなら余裕は欲しいと思うけれど。」
「まぁなんとかなるっしょ!答えがわかってるから集めるだけなんだしよ。」
「あなたはお気楽でいいわね、早乙女君。」
「なっ、どう意味だ!」
「そのままの意味よ。この試験には何かほかに狙いもあると想定した方がいいと思うわ。スタンプも素直な隠し方をしていないし、何よりも情報が少なすぎること。この試験でも何かまだ隠された事項があると思って行動すべきよ。」
「正悟、俺も白崎の考えに同意だ。特に気なっているのがスタンプだ。」
「蒼もかよ。スタンプってあのメッセージか?」
「ああ。何の意味もないわけがないと俺は思っている。」
「んー、考えすぎじゃないか?」
「あくまで可能性の話だ。頭の片隅にでも置いておいてくれたらそれでいい。」
「わかった。」
俺たちはそんなことを話しながらプールの方へと近づいた。プールの近くには体育教員の準備室があったのでそこに行くことにした。白崎曰く、昨夜図書館へ向かう前に寄っていたらしいけれど夜も遅く、プールも準備室も閉まっていたらしい。体育準備室へ俺たちは向かい白崎が代表してノックをしてから中に入ると、
「失礼します、新入生の白崎です。女子のプール更衣室を開けてほしいと思い参りました。」
そう声をかけると答えてくれたのは女の教師だった。
「ん?女子更衣室?何のためだ?」
「はい。試験のスタンプがあると私たちは考えました。確認をしたいので開けていただきたいのです。」
「わかった、わかった。開けてやるから待ってろ。」
そう女性教師は返事をすると鍵を持ち開けるために一緒に行くことになった。
「先に注意をしておくがそこの男子二人は中に入るなよ?入ったら停学か反省文、中で怪しい行動までしていたら退学にするからな。」
そう俺たちに言ってきた。
「入りませんよ。」
「おう、俺も入りはしないさ!興味はあるけどそんな危険を冒したくはねぇ!」
「最低ね。」
「ハハッ、正直な奴だな!」
白崎は正悟に冷たい目線を送り、先生は笑っていた。榊にいたっては反応すらしていなかった。
俺たちは女子更衣室の近くまで行くと、
「鍵開けに行くが、男子はここで待っていてくれ。あまり近づきすぎていても疑わしいからな。」
「「わかりました。」」
俺たちはそう言うと、
「それならここで貴方たちの用紙を渡してくれるかしら?」
と白崎が言ってきたので用紙を預けた。
「頼む。」
「俺のもよろしく~。」
彼女は俺たちの用紙を受け取ると先を行く先生についていった。榊はこちらをぼ~っと見て白崎が先に行くとそれについていった。
俺たちはこの後のことを話しながら待つことにした。
――白崎視点――
「それじゃ、鍵を開けるぞ。私は中に入ることまでは許可を得てないからな。君たちだけで中に入ってくれ。」
と先生がおっしゃったので、
「わかりました、開けていただきありがとうございます。」
と答え、
「榊さん、行くわよ。」
と彼女にも声をかけた。彼女は頷いてから私の後ろをついてきた。彼女とは先程も一緒になったけれどもどうにもつかみどころがないわね。反応してくれるだけありがたいけれど意思の疎通が大変だわ。そんなことを思いながら中へと入っていった。
中は普通の更衣室のようになっていたけれども、一見してスタンプがあるようには見えなかった。どこにあるのかしら?と思って探そうとすると、榊さんが私の先に行くと、
「………多分こっち。」
と言って、ロッカールームの先にあるシャワールームの方へと向かっていった。私は彼女が率先して移動したことに驚いたけれども慌てて追いかけた。
彼女についていくと、シャワールームの一番奥の個室にスタンプは置かれていた。
「…本当にあるのね。」
私は彼女について言って本当にあると思っていなかった。
「………西グラウンドと同じ。」
「どういうことかしら?」
「………あそこも隠し場所は少なかった。だから一番奥だった。」
「なるほど、そういう考えでいくと単純な場所は入口から遠いところにあると考えたのね。」
私は彼女にそう聞くと、彼女は頷いてくれた。
私たちは、スタンプを自分たちの分と外で待っている男2人の分のスタンプも押した。
「これでここのスタンプも押せたわね。まだここに用はあるかしら?」
念のためないとは思うが用はないか聞くと、彼女は首を振った。
「なら出るわよ。」
そう言って私たちは女子更衣室をあとにした。外へ出ると、
「もう用は済んだのかね?」
と先生が聞いてくるので、
「はい、用は済みました。ありがとうございました。」
「………ありがとうございました。」
私と榊さんがお礼を述べると、
「なに、これも仕事さ。じゃあ鍵を閉めるぞ。」
「鍵を閉めるのですか?」
「ん?ああ、もちろんだよ。閉めなかったら勝手に男子が入ってくるかもしれないだろう?いちいち開け閉めしないといけないのは面倒だが、しなかったことによって問題が生じたら私に責任が発生してくるからな。そうなるくらいならちゃんと仕事をするだけさ。さぁ男子も待っているんだ、早く戻ってやらないとな。」
と先生は言って鍵を閉めて私たちの先に立って歩いて行った。どうにも男らしさが出てくる先生だと不覚にも私は思ってしまった。
――新庄視点――
しばらく待っていると、
「まだかな~。」
正悟は待てないようだった。
「まだそんなに経っていないぞ?俺たちも外で待たせていたんだ、ちゃんと待ってろ。」
「そうだけどよ~、いざ待つってなると何をやればいいんだ?」
「わからないな、まぁ適当にしていればいいだろう。」
「その適当がわからないんだよな~。」
そう言っているので、俺はそこからはスルーしてメッセージについて考察することにした。用紙がないので見て考えることはできないが内容は記憶している。しかしその内容については何か別の意味を内包しているようには感じられなかった。何かを意味しているにしてもスタンプは8つだと確かに言っていた以上、この設問以外にスタンプがあるとは思えない。そうなると他に何か考察することがあるだろうか…?
正悟が何か言っているが気にせず考えていると、白崎たちが戻ってきた。
現在時刻9:50 18:00までおよそ8時間 現在集めたスタンプ5
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