第13話
「白崎は自転車で向かっているらしいから予定より早く着くとさ。」
「自転車?そんなものあいつ持ってきているのか?」
「いや、レンタルらしい。この学園の敷地にも駐輪場はあったし、よく見ていなかったからな。もしかしたら、あそこの近くにレンタル自転車置き場もあったのかもしれない。」
「マジかよ、それに気づいていれば俺たちもずっと歩き続けなくて済んだのかもな。」
「過ぎたことだから仕方ない。そんな手段もあると覚えておけば十分だろう。」
「そうだな。まぁそれなら早く戻った方がいいのか?俺たちがここから東門に戻るまで40分近くかかるだろ?俺たちの方が遅かったら何を言われるものか。」
「なぁ、一つ疑問なんだが、どうしてそこまで白崎と口論になるんだ?」
「俺にもわからん。だが、あいつとは何か合わないんだ。」
「感覚的なものか。」
「そういう感じだな。そんなことより早くもどろーぜ。」
「わかった、続きは時間がある時だな。」
俺たちは共同生活用の建物を後ろに東門へ戻り始めた。
「それで続きってどういうことだ?もう建物は見終わっただろ?」
「ん?ああ。まだ共同生活や寮生活もしない人たちの通常の部屋を観ていないものでな。」
「そういうことか、けど、そこまで違いはないんじゃないか?」
「おそらくないだろうが、俺に関係がありそうなのはそっちだと思ったからな。」
「何でだよ~、寮でよくないか?相棒を作る気がないにしてもわざわざ寮から出る必要なんてないんじゃないか?」
「確かにないかもしれないが、寮だと少なくともルールがあるだろ?どこに行ってもある程度のルールはあるだろうがあまり縛られたくはないんだ。それならすべて自己責任となる場所にいたいっていうのが俺の考えだ。」
「なるほどな。俺にはよくわからないがそれが蒼のこだわるところなんだろ?それなら仕方ないな。」
「悪いな、うまく説明できなくて。」
「いいってことよ!まぁ俺はしばらくの間はポイントを貯めたいから寮でいいかな。」
「少なくともある程度のポイントがたまるまでは寮になると思うぞ?貯める手段がわからないのでは出費は押さえておきたい。」
「確かにポイントのため方は教えてくれなかったよな。何でだと思う?」
「さぁな。何かこの学園の制度に関わることで、まだ話すには時期尚早ってことだろう。この試験が終わってからか、どんなに遅くとも来月のポイント振り込みまでには教えてくれるだろう。そうじゃなければ最初から金欠になる人もいるだろう。」
「金欠になんかなるか?食費はかかるけど10万あればなんとかならないか?」
「10万あるからと言ったが、毎月の食費だけで考えればそれだけあれば十分かもしれない、だが他に何も買わないわけがないだろう?部屋にどの程度のものがあるか知らないが、必要と感じたものは購入するだろうし娯楽品は買うものが多いだろう?大金を手に入れたからという理由から一瞬にして身を亡ぼす者もいるだろう。正悟も気を付けるといい。」
「な、なるほどな。節約しながら生活するわ…。け、けど、使うのは自由だろ?」
「もちろんさ。ただマイナスになってしまった人がどうなるのかわからないがな。俺たちには圧倒的に情報が不足しすぎている。」
「確かに、情報は少ないな。俺も蒼を見習って最初は節約する方針にするわ。いざって時にないと困りそうだもんな。」
「それがいい。だが、全く使わないっていうのも違うからな?適度な消費と貯蓄でバランスを取れってことだ。」
「おう!」
その後も俺たちは他愛もない会話をしながら東門へと向かった。
東門に着いたがまだ白崎は到着していなかった。待たせるようなことにはなっていなくてよかったと俺たちは安堵した。俺たちが到着して間もなく歩いて白崎がやってきた。
「待たせてしまったかしら?」
「大丈夫だ、そんなに待ったわけではない。それより自転車に乗っていたんじゃないのか?」
「ああ、自転車なら敷地のレンタルスペースに返してきたわ。敷地内では乗ってはいけないことになっていたのよ、ほら、そこの看板に書いてあるでしょう?こんな近くにあるのに見ていないようね。」
そう言われて振り返ると確かに学園の敷地内では乗らないように等の学園内での禁則事項がいくつか書かれていた。看板があることは気づいていても内容まではよく読むことなんてなかったため知らなかった。
「確認は済んだかしら?」
「ああ。じゃあ男子学生寮に向かうがいいか?」
「ええ、かまわないわ。」
「じゃあ行くか!場所は確認してあるっサクッと行ってサクッと戻ってこよーぜ。」
学生寮に向かっている間は多少の会話はあったものの、結局は正悟が白崎に言い負かされていた。男子学生寮前に着くと先客がいた。しかし、その生徒は女子だった。彼女は何かを悩んでいる様子だった。何かと言っても入れないことについてしかないはずだが。俺たちは彼女に声をかけるべきか悩んだが、代表して正悟が声をかけることになった。正悟が近づこうとしたときに彼女は辺りを見渡し俺たちと目が合った。
「………。」
「………。」
そして彼女は何事もなかったように男子学生寮に入ろうとしたため、
「いや、ちょっと待てよ!」
「………。」
「無視しないで?」
「………。」
「そこの男子学生寮に入ろうとしてる君!君だよ!」
正悟がそう声をかけてようやく彼女は反応したかと思うと、
「………私?」
と初めて抑揚のない声で返事があった。振り返った彼女の表所は無感情で何を考えているか読み取ることは難しかった。だが雰囲気からどこかぼうっとした感じがありつかみどころがないとも言えた。
「いや、君しかいないでしょ?」
「………気付かなかった。」
「さっき目が合ったよね!?」
「………何のことかわからない。」
そう言って彼女は顔をそらした。
「いやいや…」
「話が進まないわ。少し黙りなさい。朝からうるさいし迷惑よ。」
「何を…」
「悪い、正悟黙ってくれ。」
「くっ、わーったよ。」
そう言って正悟は拗ねた様子で俺たちの後ろに下がった。
「それで、貴女、そこは男子学生寮よ。貴女が入っていい場所ではないわ。」
「………けど、貴女もスタンプのためにここにいる、違う?」
「ええそうよ、けど私は入れない。だから不本意だけれどこの男たちに協力を頼んだのよ。」
「………なるほど、そんな手があった。」
「わかってもらえたかしら?一つや二つ増えても問題ないでしょう、彼女の分も押してきてもらえないかしら?」
「ああそれぐらいならかまわない。」
それを聞き今まで変化がなかった表情に初めて驚きを見せてきた。
「………いいの?」
「ああ。」
そう返事をして彼女に近づき手を出した。俺は用紙を渡してくれという意味だったのだが、彼女は俺の差し出した手を見て、少し考えると手を握ってきた。
「………。」
「……いや、握手じゃなくて、用紙を渡してくれということなんだが…。」
彼女は眼をパチパチさせると、俺の手を放しカバンから用紙を取り出し俺に渡してきた。俺はそれを受け取り、白崎に向きなおって、
「白崎、君の分も渡してくれ。」
そういうと彼女は俺に用紙を渡してきた。
「正悟、いつまでも拗ねてなくていいから行くぞ。」
そう声をかけると、
「拗ねてねーよ。」
と言って俺についてきた。
「じゃあ押してくるから少し待っていてくれ。そう時間はかからないと思う。」
そう彼女たちに伝えて俺たちはスタンプを押しに男子学生寮の中に入っていった。
現在時刻8:20 18:00までおよそ9時間 現在集めたスタンプ4
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