第12話
諸伏生徒会長はフードを外して俺たちに自己紹介をしてきた。
「生徒会長ですか…?あっ、俺は、早乙女 正悟って言います。」
「自分は、新庄 蒼雪です。」
こんなところで生徒会長に出くわすとも思っておらず、思わぬ大物の登場に驚いたが俺たちも慌てて自己紹介をした。
「早乙女に新庄か。君たちはこの学園をどう思う?」
「は…?」
俺たちは会長のいきなりの質問に動揺してしまった。正悟は声にまでその反応が出てしまっていた。
「君たち新入生にはいきなり試験をやらせているからね、それが君たちの目にはどう映っているのか気になったのだよ。君たちがどう感じているのか教えてもらえれば参考にさせてもらうこともできるからね。」
人当たりのよさそうな雰囲気でそう聞いてきた。最初に問い詰めてきた剣呑な様子はなかった。
「えっと、俺は、いきなり試験をやらされて戸惑いましたが、自分の足で島のことを覚えるのにいいと思いました。」
「ふむ、早乙女君はそう感じたのか。新庄君はどうかな?」
「自分は、生徒に何を求めているのかその真意が気になります。」
「ほう、続けて。」
会長はそう相槌を打つと、目を細め俺に続きを促すように言ってきた。
「設問に対し解法は不明、そして、言葉の端々には何かを含ませてもいる。制度についても話せないことがあると言って情報もない。私たちに何をさせようとしているのかわからないことが多すぎます。」
「…なるほど。新庄君、君はいい読みをしているよ。」
会長の様子がまた変わった。最初の厳しそうな様子にまた戻ったのだ。人当たりのよさそうな話し方はこちらの警戒心を解くための話術だったのかもしれない。
「確かに、この試験はお前たちに島内のことを知ってもらうためのものだ。しかし、それだけのためにわざわざ時間を割いているわけではない。知りたければ自分で調べろと言えば事足りるからな。この試験の目的は確かに別のところにある、だがそれは自分たちで気づくことだな。情報を一から十まで教えてもらわないと何もできないようでは、説明の手間も増えて役に立たないからな。」
「はぁ、わかりました。」
俺は、会長の様子の変化に戸惑いながらもそう返事をした。
「そして、ここであったのも何かの縁だ。一つ俺から助言をやろう。“いくら獅子が猫の真似をしたところでその本質は変わらないぞ。獅子であることを辞めることは獅子にはできない。その牙をそぎ、爪を隠したところでオーラはごまかせないからな。”」
そう言い終えると、会長は俺たちから背を向けた。
「ここでは自らの本性を隠す必要はない。持てる力をぶつけあってくるといい。一筋縄ではいかない奴らがこの島には多く集められているはずだからな。」
「どういう意味だ?」
思わず俺はそう聞き返してしまった。
「いずれわかる。俺は行く。」
そう言って会長はフードを被りなおしてランニングに戻っていった。
「さっきの獅子のたとえは何のことなんだろうな?蒼にはわかるか?」
「さぁな。だが何か会長にも俺たちに思うことがあったんだろう。」
俺は努めて落ち着いた様子で答えるようにした。
「そういうことかな~?まぁ考えてもわからなさそうだな。」
「俺たちも先を急ごう。」
俺は会話を打ち切り居住区へ歩みを進めようとした。
「そうだな!」
正悟はそう言って俺についてきた。
「…やっぱり、こいつはおもしろいことになりそうだぜ。」
「何か言ったか?」
「いや?何も言ってないぞ?それより早くいこーぜ!これからいい部屋に出会えると俺の直感が言ってるぜ!」
正悟はそう言って俺を追い抜いて行った。
居住区は東門から出て少し行ったところから始まっている。居住区は円形に展開されており、居住区の中央に多くの店や施設が集まっている。そして、その東の方に島民の居住区域が、西寄りに生徒が住む場所が集中している。もちろん指定があるわけではないので生徒が東の端に住むこともできるし、西寄りに島民が住むこともできる。利便性を求めた結果そういう傾向があるというだけのことだ。そんな中、男子学生寮は西寄りというよりは北西寄りに、女子学生寮は南西寄りになっている。男女で離した位置になっており原則的に寮に異性は入れないことになっている。学生寮ではなく普通のアパートやマンションタイプの部屋であれば行き来は自由になっている。おそらく、寮で家賃をかけない生活をしながら異性にポイントを貢がせないようにでもしているのだろう。
俺たちは、北回りで居住区を見ていくことにした。この時間帯に女子寮の付近へ向かうところを誰かに見られるとまた会長と出会った時のように問いただされそうな気がしたからだ。会長のような人と会うのは今はもう十分といった状態だった。
歩いていると途中で自動販売機を見かけたので新しく飲み物を買い、少しそこで話をしていた。自動販売機はポイントと貨幣どちらにも対応しているといったものだった。
「島の居住区はこうなってるんだな。」
「普通に本島の住宅街と何ら変わりないんだな~。てっきりこういう島だから近未来感のある建物でも立ててるんじゃないかと思ってたよ。」
正悟は笑いながらそう返してきた。
「さすがに建築に対してそこまで冒険はしないだろう。」
「まぁな。けど今更ながらだけど、人工島なのにちゃんと木も植えてあったりして多少の自然は作り出しているんだな。もっと建物ばっかりだと思っていたからさ。」
「何かを開発するだけの工場的な島ならそれでもいいが住む人たちがいる。自然が全くない島では生活もできないだろう。」
「確かにな。全くなかったらそれはそれで違和感しかないしな~。」
そんなことを話してから俺たちは歩くことを再開した。そこから10分ほど歩くと男子学生寮が見えてきた。寮と聞いてイメージした建物があったがどうやら普通にマンションのようになっていた。だが聞いている限りだが見た目ほど部屋は広くないのかもしれない。ワンルームと風呂・トイレ・キッチンと普通に考えてこれを無料では気前が良すぎるとそう感じた。正悟は中の様子を見たかったようだが、どうせ後でスタンプも押しに来るわけだからあとで中を見ようと説得した。
男子学生寮を外から眺めてから次に向かったのは、相棒の人と共同生活を行う人たちのマンションや一軒家だ。これは普通にルームシェアをして生活するだけの建物だと思っていたが、先ほどの寮よりも外見から中が広くなっているのだろうと分かる建物だった。これなら、寮で生活するよりもこちらの方がいいと考える人たちが多数いてもおかしくないだろうと思った。
「こっちの方がさっきの寮よりもよくね?俺もいつかこっちの建物に住みてぇな~。」
正悟もそう考えていたようだった。
「俺も先程の建物よりはこっちの建物の方がいいが、共同生活か…。」
「蒼は共同生活嫌なのか?女の子と一緒に生活できるんだぞ?いいじゃねぇかよ!」
「ある程度親しくなったならいいが、やはりプライベートを侵害されたくはないしな。それに一人の方が楽だ。」
「確かに一人暮らしの方が楽かもしれないけど、女の子の手料理を食べさせてもらえるかもしれないし、もしかしたらあんなことやこんなことも起こるかもしれなんだぞ!」
「結局目的は後半なんじゃないのか?」
呆れたようにそう聞くと、
「いや、そこは目的じゃねーから!起こるかもしれないってだけだよ。女の子は好きだけど、目的が全部それってわけじゃねえ。ただ可愛い子を俺は見ていたいんだよ。」
「白崎が聞いたら罵倒してきそうだな。」
「なんでいきなりあいつを出す?いや、それに白崎なら俺が何を言っても言い返してくるだろ。そういや、まだスタンプは集まらないのか?あれからどれくらい経ったかわからないけど。」
「さすがにそろそろじゃないか?俺たちが別れたのは5時ごろだったはずだ。そして今はもうじき7時になる…、と、ちょうどあいつからメールが来たぞ。」
『港のスタンプも押したわ。 白崎千春』
「だとよ。」
「短か!最低限だけかよ。まぁ連絡が来ただけマシなのかもしれないけどよ。」
「そう言うな、押したら教えてくれと言ったのはこちらだからな、っと、ん?電話だと…?」
「どうした?」
「白崎から電話だ。…もしもし?」
「私よ。白崎。」
「どうした連絡なら見たから今返信しようと思ったのだが、」
「そのことなのだけれど、予定より早く東門に行けそうだから伝えた方がいいと思たのよ」
「どういうことだ?」
「あなたたちは暗いから見落としたのかもしれないけれど、ポイントでレンタル自転車を借りられるみたいなのよ。歩くのは私も疲れたから自転車を使うことにしたわ。」
「なるほど、伝えてくれてありがとな。そういうことなら俺たちも東門に今から向かうとしよう。」
「ええ、そうしてちょうだい。じゃあ切るわね。また。」
「おう。」
そう言って電話は切れた。
現在時刻7:00 18:00までおよそ11時間 現在集めたスタンプ4
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