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俺たちの共同学園生活  作者: 雪風 セツナ
1学期編 ~中間試験~
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第52話

「ここで情けをかけるなら最後まで情けをかけて責任を取りなさいということよ。」

「どうしてここでそう言う話になるんだ?」

「あなたは優しいわ。そして雄として雌を引き付ける強さもある。けれど、あなたのそれは中途半端な優しさよ。私みたいにあなたをよく知らない人が言うべきことではないかもしれないわ。それでも言い切れることなの。

あなたは白崎さんから恋愛感情を向けられているのに答えを先延ばしにしている。それは彼女が納得しているならいいわ。けれど、答えを保留にしている間に他の女の子に手を出すのはどうかと思うわ。もちろん今の法律上問題ないわ。けれどルールと感情は違うのよ。女心というものを理解してあげなさい。

きっとあなたには難しいものかもしれない。だからわかろうとする努力をしなさい。

わたしは瑞希のことが好きよ。中途半端な優しさであの娘を苦しめてほしくないの。あの娘はあなたに一定以上の感情を向けているはずよ。あなたにだけ真面目な相談をしている。そのことを理解しておいてほしいの。」


「…わかった。」


俺は長々と語られた皐月の言葉が胸に刺さったような気がしてならなかった。

そして、俺は扉に伸ばしかけた手を引っ込めていた。


皐月が背にして押さえられていたと思われる扉はいつの間にか抑えられていなかった。

そして、皐月は、


「あとは任せるわ。」


そう言って際に1階へと上がっていった。


少しすると、瑞希が中から出てきた。

彼女は目元が少し赤くなっていたが、どこか申し訳なさそうにしていた。


「ごめんなさい。皐月も私を想ってのことなの。だからそこまで気にしなくていいし、白崎さんも蒼雪君に焦ってほしいわけではないはずだから。それに私も今は自分のことをちゃんとわかっていないかもしれないし、クラスも違うから蒼雪君も私のことを白崎さんより知っているわけでもないし、逆もまたそうだよね?だから、私のことは気にしないでいいし、白崎さんとちゃんと向き合ってあげて?」


そう言って瑞希は先に階段を上って戻っていった。


どうやら皐月はここを締め切っていたわけではないようだ。

俺と話しているタイミングで少し扉を開けて俺と話しているところを聞かせていたようだ。

だから瑞希が先程のようなことを言ったのだろう。


俺は皐月の言葉、瑞希の言葉、そして依然千春と交わした言葉が頭をぐるぐると駆けまわりその場に立ち尽くし、いつの間にか意識を失っていた。





―――――千春side



「あら、神田さん1人?」

「もう、皐月でいいと言ったじゃない。」


私は独りで戻ってきた神田さん…、皐月さんを見てどうして1人で戻ってきたのかしら?と感じた。

今朝もそうだが、瑞希さんと話したところ、やはり彼女は蒼雪君に気がある。

けれど、今はその気持ちを伝えられない理由があるから伝えていないそうだ。



私としてもそこまでまっすぐに言われたら納得できないわけでもなかった。

理由が何なのか気になるけれど、今はアピールに留まるらしい。


だからと言って嫉妬しないわけにはいかなかった。

私は好きという気持ちが強すぎて独占欲もわいてしまっているからいつか何か彼に迷惑をかけるかもしれないと自分を抑えていたりもする。


だから彼にアピールを続ける彼女をうらやましいとも思える。



そんな時に地下に彼女と蒼雪君を2人っきりにして、皐月さんが何をしたいのかはわからなかった。


「ちょっと言いすぎたかもしれないけれど彼と少しお話をしてきただけよ。瑞希はそのうち戻ってくるはずよ。」

「それならいいのだけれど…。」

「そんな不安そうにしなくていいわ。瑞希にもすぐに来るように言ってあるもの。」


皐月は端末を掲げながらそう言ってきた。


「そう言うことなら大人しく待つことにするわ。」


私と皐月さんは2人で話しながら待っていた。


少し経つと、瑞希さんもリビングに来た。


「もう!皐月は私をあんなところに閉じ込めてあんな話始めると思ってなかったよ!」

「あら、あなたたちのことを考えて伝えたつもりだけれど?」

「でも、あんな言い方しなくてもいいじゃん!私と千春も待つ気持ちはあるしちゃんと考えて答えを出してほしいの!」

「わかったわ。良かれと思ってしたのだけれど、余計なお世話だったみたいね。」

「そんなことよりも彼は?」

「うん…。何か考え込んでいるみたいだから先に戻ってくることにしたの。今は1人にしてあげようかなって。」

「そう。わかったわ。じゃあ、30分しても戻ってこなければ様子を見てくるわ。」



私たちはそこで先ほどまでの話を終えると、彼のことも含めて勉強のことや最近のことを話題にしてしばらく会話に耽っていた。



30分ほど経ち、舞依や早乙女君が起きてくる様子もなかったので2人をリビングに残して様子を見てくることにした。


「そろそろ1度様子を見てくるわ。」

「ごめんなさい、あなたの相棒に言いすぎたのかしらね。」

「私たちのことを考えた上でのことだから怒るに怒れないけれど、私たちのペースを見守っていてほしいわ。」


私はそう言い残して地下室へと向かった。


地下室に来るのは今回で3回目くらいだろうか。

やはりここに降りてきたいとは思わない。

階段を前にしてそう感じずにはいられなかった。


けれど、今はおそらく蒼雪君は独りで考えこんでいるかもしれないので彼の思っていることを聞いてあげる必要があるかもしれない。


私の感情をぶつけることはあっても彼の気持ちを聞いてあげたことはほとんどなかった。

彼が話してくれないからと耳当たりのいい言葉を使えばそれまでかもしれないけれど、私から彼に踏み込んでいくことも必要だったのかもしれない、そう思っていると、階段を下りた先に人の足だけがこちらに見えていた。


しかし見えている足の角度がどう考えてもおかしい、上から見下ろしたときに見えるのは足元だけのはずなのに、それが平面として捉えられるのは横向きになっているからだ。


「…蒼雪君…?」


私は不安になって駆け足で寄ってみると彼は横たわっていた。

彼がこのような状態で寝るということはないからそのまま倒れこんだと考えるのが普通だ。


「蒼雪君…!」


私は彼の名前を呼び掛けていたが、彼の意識は戻ってこなかった。


どうすればいいのか、兄さんが車に牽かれたい姿と重なる姿が見えた私は、あの時の私とは違うと、自分を奮い立てまずは落ち着くことにした。


口元に手を当てると、まだ息があることは感じられ意識がなくなっているというだけだと分かり安心した。

ここから彼の自室に運ぶべきかもしれないけれど、私の力では運び込むのは大変なので、まだ起きていないあの男の力を借りるべきかもしれない。


でもここに彼を1人にしておけないとも思ったのでまずは瑞希さんに連絡をした。


「もしも…」

「瑞希さん!」

「…し、ど、どうしたの?」

「彼が倒れているの。早乙女君に運び込んでもらいたいからあなたには彼の様子を見ていてほしいの。」

「え!?わ、わかった。すぐに行く!」


私は彼女にそれだけ伝えると、彼女が慌てて降りてきた。

後ろには皐月さんもいた。


「蒼雪君!?」

「意識を失っているだけよ。でもここは床も冷たいし、こんなところに寝かせられないわ。」

「わかった。」

「ごめんなさい。彼がここまで思いつめているなんて…。」

「私も予想していなかったわ。だから謝罪はいいから彼を見ててちょうだい。」


私はそう言い残して階段を駆け上がり2階の彼の部屋へと駆けていった。


「早乙女君!」

「ん〜…、何だ…。」

「緊急事態よ、力を貸してちょうだい。」

「緊急事態…?」


私の言葉を理解したのか寝ぼけていた彼の様子は、先ほどよりはっきりしたように見えた。

目が覚めたのを確認すると、


「彼が地下室で倒れているの。少なくとも外的原因ではないけれど、このままにしておけないから彼を運んでほしいの。」

「蒼が!?わかった。すぐに行って運んでくるから待っててくれ。」


そう言うと、彼は、自分の両頬を叩き意識を無理矢理覚醒させると、部屋を飛び出し降りていった。



少しすると、早乙女君に抱えられた蒼雪君が彼の部屋に来た。


「布団をめくってくれ。このまま上に乗せるわけにはいかないだろ?」

「え、ええ。」


私は彼に指示されて布団をめくり、早乙女君によって彼はベッドに寝かされ、布団をかけられた。


「意識が戻るまではそっとしておいてやろう。それよりも何があったか話してもらえるか?」


早乙女君にそう言われた私は頷き彼をリビングに連れていった。

瑞希さんと皐月さんも含めた3人で早乙女君に事情を説明した。



「…なるほど。蒼は俺たちが思ったよりも繊細な神経をしているのかもな。」

「どういうことかしら?」

「単純な話だ。あいつの容量をオーバーする思考をしちまったんだよ。俺たちのことは考えて話をしてくれても自分のことは話さない蒼だ。自分のことを考えていて追い詰めすぎて体がこれ以上は危ないと判断して防衛手段として意識をシャットダウンした。」

「そう…。」

「ごめんなさい…。彼のことを碌に知りもしないで…。」

「いいのよ。それは私も同じよ。」

「今はそうしているより、今後のことを話そうぜ?いいか。蒼に無理をさせないようにしろ。あいつはいろいろと特殊だ。だけど、俺たちと同じ人間である以上限界はあるし、欠点もある。今回のがいい例だ。あいつは考え事をよくするが、それが限界まで行くと今回みたいなことになる。それだけは今は覚えておこう。」

「わかったわ。」

「…うん。」

「ごめんなさい、気を付けるわ…。」



私たちは謝罪の言葉を出したがその謝罪を受ける本人がこの場にいないこともあり、罪悪感がこみあげていた。


早乙女君はそれ以上私たちには何も言わずに、キッチンへ行き、朝食の用意を始めた。


私たちもそれにならい、空気は重いままだが朝食をとることにした。

途中で舞依も降りてきたけれど、私たちの話を聞いて悲しそうにしたものの、このまま気にし続けていると起きてきた彼も気にしすぎてしまい良くないかもしれないといい、1度それぞれが落ち着いて、それで昨日までしていた本来の目的である勉強を開始することにした。


私も彼に負担をかけすぎないようにしようと心に誓うことにした。

彼は完璧ともいえるかもしれないけれど、やはり不完全なところもあり、同じ年齢の男の子なのだと気持ちを新たに彼のことをフィルターをかけずにしっかりと見ていこう、そう思った。


ここまでお読みいただきありがとうございました。


また次話もお読みいただけると嬉しいです。

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