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「マリーン姫様、次の話は、この国の成り立ちについてでございます。」
現在、テーブルに対面に座っている先生の言葉を、お茶で喉を潤し、ティーカップ片手に優雅に微笑み、目で促すのだった。
「天上におわす神により作られし青雲の蒼へ……」
…………要約すると、神様が星を作って人間作って住まわせたけど何故か、すぐ死んじゃうから精霊作って人間守ってるよ~。精霊のご飯である魔力を人間から貰って、WIN‐WINで成り立ってるんだよ。それで、強い魔力を持っている人が人々を導いてヴァルティアル国ができたんだよってこと。
「先生、いつも為になる、お話をありがとうございます。」
「姫様は真面目で理解力ある生徒で、わたくし嬉しゅうございますわ。
これにて本日はお暇させて、いただきますわ。」
一礼し去って行く女性を私は見送り私はこっそり溜め息を吐くのだった。
「少し疲れたので部屋に戻るわ。呼ぶまで来なくていいわ。」
一礼しテーブルを片付け始めた侍女を尻目に自室に戻るのだった。
小股で足音を極力立てず自室のドアまで歩き、私は部屋に入りドアを閉めた。周りに誰も居ないことを確認したあと、ダッシュでベッドまでダイブし私は盛大に溜め息を吐くのだった。
「はぁ~~!!
いや、何なの?!毎日、毎日!御茶会?なにそれ?必要なくね?未だに必要性見いだせないわ~
言葉を話せるようになったら、急に淑女教育だーって…言葉遣い悪かったり、あまりの臭さに鼻を摘まんでると手の甲を小さな棒で叩かれるし…
お陰様で気色の悪い顔作りと歩き方、話し方は8才にて絶賛レベル…そして、鼻が馬鹿になったのか臭さにも慣れて至近距離でなければ笑顔で我慢できるように……」
脳内で悲しみの涙にくれていると、頭に引っかかる言葉を思い出す。
「魔力…ぶはっ!」
精霊の次は魔力だって。魔力ってなんだよ。ファンタジーかよ。ププッ!いやいや~、大丈夫かな?ここの国。
な~んて、思ってた時期もありました。
はい、私の馬鹿ー!!
言葉を話せるようになった時も勉強内容も、国の名前聞いたときも、不思議だなぁ、聞いたこともない国だなぁと思ったよ。
見た目も変わって小さくなってるし転生したと思ったよ?
けど、まさか本当に精霊が居て魔力があるとは思いませんやん?
なんだよここ~…私、異世界に居たんだ。しかもファンタジーな。
本日より10才になりましたマリーンでございます。
そう、10才です。例の儀式がある年齢でございます。
今まさに儀式の真っ最中で私の周りには色んな色の羽が生えた、ぽっちゃり幼児体型の小人やカラフルな虫達が飛んでいます。そう妖精と呼ばれる者たちでございます。
…おっと、あまりの衝撃に脳内でまで、御嬢様言葉だったわ。
今の私は盛大に口を開き目は忙しなく動かし周りを見ていることだろう。
「姫様、無事精霊様を見ることができましたかな?」
問いかけてきた人物は長髪で裾長の服をきた、この国の神官だった。
私は顔を動かし頷きで答えた。
「自分についてる精霊様は、ついてもらえてる人にしか見えません。しかし、姫様のかぐわしい香りで、如何に多くの精霊様に守られているか、よく理解できました。」
急に恍惚の表情になり話し始めた神官に引きながら言葉を脳内で反復し問いかけた。
「見えないのに、わかるのですか?」
「えぇ、えぇ!普段、精霊様は見ることも匂いを発することも、ございませんが人についた精霊様からは、それはそれは芳しい匂いが発せられ、その匂いの強さにより把握することが出来るのです。」
「じゃあ、今までも私から匂いがしていたのですか?」
「儀式前までは魔力が安定しない為に虫型の精霊様が1人つくと言われております。虫型の精霊様からは微かな香りしかしない為に今までの姫様からは匂いはしませんでした。また、自身の香りを認識することもありません。」
「次は魔力についてです。魔力とは人の周りを纏っている力でございます。精霊様が見えるようになられた姫様には精霊様が自身の周りから何かを食べてる様子が見えないでしょうか?それが、魔力にございます。
また、魔力を体内へ取り組むことができ、力にすることもできます。このように。」
ふむふむ、と聞いていた私は再度口をポカーンと開くのだった。何故なら目の前の神官が人差し指を立て、その指先が光っていたからだ。
「自身で取り込むと小さな力しか出せませんが、精霊様より食べられた魔力を返していただく事により、より多きな力を使うことができます。このように。」
手を上にかざすと、眩い光が天井より発せられ、すぐ元に戻った。
チカチカする目をしばたたかせながらボーゼンと働かない頭で話を聞く。
「しかし、精霊様より返していただけるのは、余程気に入られた者のみで返していただける量も違いがあるため、殆どの方々は小さな力しか使えません。」
「大変有用な時間でしたわ。神官様、本日はありがとうございました。」
淑女の礼をした私は、恍惚とした瞳の神官を見たあと踵を返し自室に戻るのだった。
戻る途中すれ違う侍女や小姓、護衛が先ほどまでとは違い恍惚とした表情で見つめているのを見て10年間で培った淑女教育の成果を発揮し笑顔で歩くのだった。
キィ…パタンっ
「まぁまぁ、姫様、お務めご苦労様です。無事終わった様で安心いたしました。」
自室には小さな頃より居る侍女のアニータが変わらない表情で私を見つめていた。
安堵のため息を吐き、私は椅子に座るのだった。