15
台詞に平仮名が多い所があり、読みにくいかもしれません。
とりあえず、城下も町も良いが村がダメだ。魔石類の供給がほぼ、ないから村では水は井戸水か川から桶で汲んでくる。町では魔石のお陰で水道ならぬ魔石による魔水で生活している。
村では魔石がないから太陽と共に生活してるが町では無属性の魔石を半分くらいの世帯は持っていて居酒屋などもあった。
他にも洗濯は村では桶に汲んだ水と板を使い手で一枚ずつ洗っていたが、町ではコインランドリーもどきが魔石によって作られていた。
見つけだしたら色々あるが、とりあえず井戸汲みの重労働をどうにかしようとポンプを作った。そして、洗濯もどうにかしようと前世野菜水切り器を作った。
その作ったものが今は私の部屋の窓際に鎮座していた。
そう、私は自分の魔力を使い、色んな形の木を具現化させて作ったのだ。しかし、私が作り出せるのは掌サイズ…。しかも、私の作りろうとしたものは、この世界では未知の物。そんな物にいくら王族だからと国民の税からなる国庫を開き作り出すことは出来なかった。
だから私が今見つめているのは掌サイズのミニチュア野菜水切り器とポンプだった。
そして、難点があった。私が作ったミニチュア版は魔木だから問題ないだろうが普通の木を加工し作った物は水とは相性が悪く、すぐに劣化するであろう点とポンプを木で作っても水の圧に耐えられないだろう点だった。
私の前世は物作りが趣味で、その工程で薬品実験にまで手を出し死んでしまった。
生まれ変わってからも早く物作りがしたくて堪らなく、今、目の前にあるものを見ると小さいが満足できるクオリティだ。作っている時も前世と違い魔法で作ると言うのも、とても楽しかった。
しかし、私は王族に産まれ国を見て回る事により、人の為に何かを作りたいと前世含め今世で初めて思ったのだ。
魔石が沢山あれば皆不自由することなく生活が向上するだろうが、魔石は偶然の産物のような物。リクたち成長した精霊なら作り出すことができるが成長した精霊は人数が少ないうえ、メリットもなく人間の為にポンポン魔石を作り出す奇特な精霊は居ない。買うにしても一般市民がホイホイと手が出せる値段ではなかったのだ。
どうすれば良いんだ!っと窓際に座りミニチュアを眺めながら唸っていると急にドアが開き元気のよい声が私を呼んだ。
「マリーン姉様!遊んで下さい!」
「エヴァン。ノックもなしに女性の部屋に入ってはダメよ。」
驚きに振り向くと可愛い弟のエヴァンが満面の笑顔で立っていた。エヴァンならどんな時でも大歓迎だが、マナーはきちんと守らせなければと注意すると大きな瞳を潤ませ謝ってきた。
私はしょんぼりしたエヴァンを見て、うっ!と詰まらせ、心が少し痛んだが笑顔で歓迎した。
「…ごめんなさい。姉様。」
「いいのよ。いらっしゃい。姉様とお茶をしながらお話しましょう。」
ティーポットを手にお茶の準備をし、手招くとトコトコと歩いてきて私にギュッとしがみついてきた。
私に怒られたのが、そんなに悲しかったのかしら?と思っていると
「姉様、凄くいい匂いがします。」
瞳を潤ませ頬を染め、パッチリとした目をしたエヴァンが上目遣いで私を見ていた。
この表情は見たことがある。一度だけだが2年前の儀式をしたあとの侍女たちの私を見てきた顔だ。見覚えある表情に、はっとし周りを見渡すと赤ちゃん精霊が沢山飛んでいた。その中からリクを探すとスピスピ寝ているリクが居た。アクアも探すが
、どこかへ行っている様で居なかった。
「ねぇさま~、ねぇさまからは、いつも匂いがしないのに何故こんなにも匂いがするのですか?」
恍惚とした表情をしつつ口調は寝惚けて甘えている様な感じで話すエヴァンをどうにかしなければと慌てて、とりあえず黙っといてもらわないとと焦った。
「そっ、それはねっ!内緒なの!」
「内緒なのですか?ねぇさまには、ほんとうは精霊さまがたくさんついていらっしゃるのですか?」
「じっ、実はそうなの!誰にも言わないで!」
「なぜ内緒なのかわかりませんが、わかりました。分かりましたから僕と二人の時はこのままでお願いします。」
「分かったわ。二人だけの時だけよ。」
安堵の息を吐き出し私はエヴァンを見た。未だに表情は変わらず5才にして色気を感じる。前世、今世共に人拐いなど犯罪に巻き込まれそうな顔だ。普段は可愛らしいだけのエヴァンだが、なんだか犯罪臭がする。誰かに見られたら私が捕まってしまいそうだ。
「それでエヴァンは姉様と遊びにきたのよね?」
「はい、そうです。」
「何をして遊びましょうか?」
「そうですね。このままでいいです。」
「えっ?…姉様はエヴァンと遊びたいなぁ~…なんて。」
「…………」
リクが目を覚ますまでエヴァンは離れる事なく、しがみついていた。
後からリクをすぐに起こせば良かったと気付き後悔したが後の祭りだった。この時リクを起こしておけばと更に後悔するとは、その時の私は思いもよらなかったのだった。