第8話 ヌルヌル万能説崩れる
『スキルが覚醒しました』
付けっ放しで存在すら忘れかけていたスキャウトゥァーが眼前にポップアップを出す
だが妬みで怒りに支配された俺はその事に気も止めずに恨み節を口にする
「ただでさえイケメンなのに勇者で魔王討伐すれば金も手に入って子作りするのが仕事になるだと!?そんな羨ましい思いさせてたまるか!スキル発動!!」
スキルの事など理解していなかった、しかし本能は自分が出来るようになった事を理解し冷静に冷酷にスキルを発動させる
「ごっ……!?」
途端に勇者が苦悶の表情になる、先程までの緩んだ顔が徐々に青くなり勇者はその場に崩れ落ち動かなくなった
スキャウトゥァーに表示されてるツヨ・イン・デスの名前の横に『死亡』が浮かび上がった
「何が起きたのじゃ?」
「どうやらスキル覚醒で手で触れなくても認識さえすれば物質の粘度を変えれるようになったらしい」
「それでどうやって勇者の命を絶ったのじゃ?」
「簡単さ、勇者の肺の中の空気の粘度を最大にして酸素を取り込めなくさせたのさ」
リア充勇者を討伐出来た俺は最高の笑顔で答えた
「うわぁ、魔王でもそんな殺し方はせぬぞ。引くわぁ……」
「そうですね、さすがにコレは…」
能動的に守ったつもりは無いが巻き込まれて問題解決をして結果的に助けたハズの2人にドン引きされたが気にしない、気にしない
「このスキルさえあれば無敵じゃないか、ヌルヌル万能!」
はしゃいでいるとスキャウトゥァーに『スキル覚醒タイム終了』と表示された
「あれ?スキル覚醒タイム終了って出たんだけど?」
「どうやら貴様のスキルは時間限定覚醒型のようじゃな、もう今は触れる範囲しかヌルヌルにできぬよ」
ヌルヌル万能説崩れる…恐らく怒りがスキル覚醒の条件だと考えられるが、怒りを意識的にコントロールするような事は出来る気がしない
「ところで勇者の遺体ってどうするんだ?ファンタジーにありがちな光に包まれて消えるってパターンかと思ったらずっと残ってるし、これ誰かに見られたら殺人事件に発展するぞ」
殺人には変わりないが元々この世界に居なかった人物だ、そんなヤツを正当防衛で仕方なく殺しただけで刑務所行きとか勘弁だ
「あぁ、それなら心配いらぬよ。スキル発動、ソウルイーター」
魔王様が何気なしに呟くと魔王様の影が伸びて勇者を包み込んで『捕食』した