第2話 面接
俺は約束の時間の10分前に指定されたビルの前に到着した
「さて、どんな感じの会社なのかな?」
雇って貰えるのか?という不安よりも怖いもの見たさの好奇心が勝っているせいか足取りも軽く、求人に書かれた部屋を目指して歩いていった
「ここか、表札も呼び鈴も何も無いと入っていいか戸惑うな…」
少し悩んだが行動しなければいつまでもこのままだと考え、ノックをしてみた
「どうぞ〜」
中から電話と同じ若い女性の声が返ってきた
「失礼します」
中に入るとそこには身体のラインを強調するかのようなスーツに身を包んだ女性がソファに座っていた
女性が向かい側のソファを案内してくれたので俺は座る前に再度確認も兼ねて挨拶をする
「16時から面接を予約させていただきました、三村 一樹です。よろしくお願いします」
「はい、私は面接官をさせていただきますサティと申します。そしてこちらが魔王様です………って魔王様!?なんで隠れてるんですか?出てきてくださいよ」
そう言ってサティさんは事務机の後ろから幼稚園児ぐらいの育ちの良さそうな子を引っ張ってきた
(……あぁコレはもしかして金持ちの子供の遊びかな、まぁちゃんと給料出るなら遊びだろうが付き合うけど…)
考えを顔に出さないように表情筋にチカラを入れながら
「この方が魔王様ですか?はじめまして魔王様よろしくお願いします。」
「………」ダッ!!
魔王様は目が合った瞬間に何も言わずに事務机の後ろに駆け込んで行った
「すみません、魔王様は人間見知りが激しくて。モンスターやクリーチャーなら初対面で仲良くなれるんですが…」
「いえいえ、お気になさらずに。それより求人の詳細についていくつかお聞きしたいのですが?」
サティさんの台詞が気になりはしたがそういう設定なのだろうとスルーして本題に入る
「あっ、はい。求人にも書いた通り魔王様をお守りするだけのお仕事です。」
「給料は出来高払いと書いてありましたが、具体的にどういう計算になるのですか?」
「勇者討伐で500万、勇者のパーティメンバーなら1人150万、冒険者はレベル・ジョブによって加算がありますが基本は1人15万となっています。襲撃者が来なかった場合は1日7500円をお支払いさせていただきます」
もう面倒になってきた俺は1日7500円という事だけ頭に入れて
「なるほど、ではその条件で構いませんので面接をお願いします」
設定を受け入れる覚悟をした。