初夏の再会
水織麗奈と西条茜。
二人の少女はそれぞれの道を歩んでいた。
彼女達が再会したのは別れてから約五年もの時が経過した頃。梅雨明けからまだ二日ばかり過ぎ蝉もまだ鳴き始めていない初夏。
麗奈は漁に出ていて水穂村に帰ってきたのは一週間前―。
久し振りに砂浜に足を運んでいた。
「相変わらずここの砂浜は誰一人いないからもの静かで落ち着くわ。」麗奈は独り言のように呟き少し寂しそうな顔をした。
しばらく人気のない砂浜を歩いて行くと海に面して砂浜に座り込んでる人影が一つあった。
麗奈はおそるおそる近づき声を掛けてみた。
「あの、こんにちは!」
「ここの砂浜は波も穏やかで普段人もいないから落ち着きますよね。私も学生の頃はよく通ってました。」
すると座り込んでいた女性は麗奈の言葉に反応してクスクスと笑い返事をした。
「あら、こんにちは。あなたは昔と何一つ変わってないわね。」
女性は麗奈が驚きおどおどしてるのを確かめると麗奈の方を向き直りこう告げた。「私よ。忘れたの?」
麗奈は驚いて思わず声が大きくなってしまった。
「あ、茜!?本当に茜?」
五年ぶりの再会で茜は24歳になっており大人びていた。茜から見れば麗奈は相変わらず元気旺盛で表情豊かで羨ましかった。
「茜がどうしてここに?」
麗奈は素朴な疑問を尋ねてみた。
「久々に仕事の休み貰ったの。それに最近忙しくて手紙書けてなかったから麗奈に会いに来ちゃった。」
そう茜は照れくさそうに顔を赤らめて言った。
「茜ったらもぉ。来るなら来るで先に連絡ちょうだいよね!もし、今日私が来なかったらどうするつもりだったのよ。」
「麗奈の事だから絶対に来るって信じてた。」
茜がそう言うと麗奈も少し恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「いつまで村にいられるの?」
麗奈が聞くと少し沈黙が続いてその後茜は口を開いた。
「明日の日の出と共にこの街を出て行く予定。それに、私は追放された身何だから長居は出来ないよ。」
「そう…。」麗奈は寂しそうな顔をした。
しばらくの間二人はこの五年間でそれぞれが思い考え感じたことを話し合い談笑が続いた。
日が落ちてきて麗奈は独り暮らししている部屋に茜を招き入れお茶をしながら夜が更けるまで二人は語り合った。
翌朝、日の出前に二人は起きて朝食を共に取り別れの日の出が訪れた。
「またね、麗奈。今度は麗奈が私に会いに来てよね!」茜はそう言うと麗奈に背を向け足早に歩き始めた。
「うん。またね。茜も元気で!私も必ず会いに行くから。」麗奈は茜の姿が見えなくなるまで茜の事を見つめていた。
麗奈は茜がいなくなった後涙がこぼれてきた。
「泣かないって決めたのに…。あ、茜ぇ…。」
茜も振り返り麗奈の姿が見えなくなった途端、涙が溢れ出てきた。
「あの時、泣かないって約束したのにな。私も結局は昔と何一つ変わってないなぁ…。」そう寂しげに呟いた。
そこからまた二人の新しい朝が始まろうとしていた―。




