猫ヶ島町のプラン
えーん、えーん……
一人の女の子が泣いている。
どうやら転んだみたいだ。足を抑えてしゃがみこんでる。
周りには誰もいない。全くこの街は本当に人が出歩かない。
あんなに大きな声で鳴いてるんだから誰か家から出てきてあげても良いのに。
散歩中だったけどしょうがない、行かなくては。
大丈夫?
「えっ……」
そうやって僕は怪我の跡を見て、傷は深くないようだと安心した。
家はどこ?僕が付いていってあげる
「もしかして、しんぱいしてくれてるの?」
そうだよ
そうやって僕は女の子に立ち上がるよう促した。
やっぱり小さい子でも強い子は強い。
女の子は涙を自分の手で拭うと、すぐに立ち上がった。
僕はそれを見て感心しながら、
じゃあ、行こうか
「いっしょにあるこう!」
僕と女の子は短い帰路を言葉を交わしながら歩いた。
彼女はたまに僕がいったことに対して的外れなことを言ってきたけど、何しろ幼い。
僕は寛容な心で会話を続けた。
ーーー
そうしてすぐに女の子の家に、玄関を着き、玄関のドアを開けて
「おかーさん!ただいま!」
僕の用は済んだ、と彼女を見送って、その場から去った。
女の子はこちらを見て少し名残惜しそうに、再び泣いてしまいそうな顔をしていた。
しかし、すぐにエプロン姿の母親らしき人物が玄関までやってくると
嬉しそうにその人の方に向かって行った。
玄関の扉が閉められ、これで本当にお役御免になったところで、散歩を再開する。
日差しもきつくなって来た。この前見つけた穴場にでも行こうか。
そうして茂みをかき分けながら、避暑地に向かった。
ーーー
「あら、三郎丸ちゃん!お久しぶり!元気にしてた?」
ああ、もちろん。ところで僕は男だ。いい加減ちゃんはやめてくれないかな?
今僕は見かけてはいつも構ってくるおばさんに捕まっている。
向こうから異様なまでに好かれているようで、正直僕はタジタジだ。
しかしご飯をよくおすそ分けしてくれるのは助かる。
たまに食べられないものも出てくるけれど、そこはご愛嬌だ。
「相変わらず黒が似合う良い男だねえ……」
ははは、あなたには負けるよ
そうして僕は生返事を返して、そこから急ぎ足で去った。
お生憎様、今の僕は満腹なのでね。
それにこれから集会がある。急がなくては。
ーーー
「相変わらず、気紛れな子ねえ。」
今日はあの子の大好きなマグロを用意していたのに……
今度来た時には納豆でも用意してあげようかしら
「あら幸子さん!こんにちは。」
近所のヨシエさんだわ。
少し大きいカバンを持っているし、お買い物かしら?
「あら〜これからお買い物〜?」
「ええ。お味噌が切れちゃったし、そこの商店街までね。
それよりも、もしかしてさっきの子って……」
ヨシエさんは嬉しそうな顔でこっちを見て来た。
「そう!あの子なのよ!久しぶりに会えたのにまた逃げられちゃってねえ!
でも野良って感じがして、そこが渋いのよねえ〜。」
「わかるわあ〜。くまきちって私は呼んでるんだけど、前は女の子のエスコートしていたわよ!」
「そうそう!でも、この間はもっとすごいことをしていたのよ〜……」
ーーー
そう、あの子はこの街では有名な子。
名前も住所も不定な不思議な子。
どんな問題も解決してくれる不思議な子
この猫ヶ島町では当たり前のこと。
黒猫は今日も往く。
親からもらった名前を使わせてもらうと
黒猫プランは今日も往く。
自分の家でも黒猫を飼っていますが、猫って不思議ですよね。
人間の声が聞こえたかのように鳴く事もあって、つい驚いてしまうことがあります。
そんな不思議さが伝われば良いなと思い、短いですが書かせていただきました。
よければ今連載している方にも目を通していただければ幸いです。
それでは、失礼致します。