3話 積み重なる異変、そして……
5月16日1話訂正
エル→シエル
ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
今回、長くしました。
あれからまた3年、俺は8才、妹は7才になった。
もう体格には差が出てきて俺は少し筋肉がついた。残念ながら身長差はあまりない。
そして今でも気になっていることがある。3年前から始まった地震だ。
その時は4ヶ月に一回ぐらいの頻度だったのだが、ここ最近では1ヶ月に一度、多い時には3回と回数が増えてきている。
何かが起きようとしているのかと考えてみたり、お父さんに聞いてみたりしたが、分からないと言う。
「何が起きてるんだろーな」
独り言を呟きながら家の中をウロウロしているとフェンリルが封印されている部屋の前まで来た。
「……まさかな」
そう言い俺は3年ぶりに扉を開けた。そこには変わらず新品の彫刻のようにフェンリルの石像があった。そして3年前と同じように触ってみた。
その瞬間、
ゴゴゴと大きく揺れた。また地震かと思ったが違う。なんというか地面が揺れるのではなく空間までもが揺れていた。
「なんだこれは?!」
空間が揺れるのは初めて見た。それにしばらく見ていると空間の揺れがねじれ始め渦を作り出した。その時、渦の中から声が聞こえてきた。
「お主、聞こえているか?我はフェンリル、神殺しと言われた神獣というやつだ」
えっマジで、俺に話しかけてるのか?いやーなんとも不思議なことも起こるものだな。
「おい、無視をするでない。聞こえてるのだろう。いきなりで悪いのだがこの封印を解いてもらえないか?」
「何を言っているのかよくわからないのだが。封印を解いたら絶対世界滅亡ですよね?」
幾ら何でも封印を解く事はできない、だって殺されちゃうじゃん。
「……勘違いしているようだが、我はもうこの体では戦うことは不可能だ。その辺の大人たち1万人くらいしかまともに相手もできん」
「1万?!いやいやそれは強すぎでしょ」
まあ、昔のフェンリルさんに比べたらすごく力が落ちてるとは思うけど。
「そこでだ、一つどちらにもメリットがある提案があるのだ」
「提案?なんだそれ?」
「まず、我を封印から解く」
「ふむ、それで?」
聞き返すと今までよりも長いタメを作って、
「……お主の中に住まわせてもらいたい」
「ほう……はっ?!」
今なんて言った?聞き捨てならないことが聞こえたけど。
「先ほども言ったが我は体を維持するのも難しいのだ。そこでお主の中に入ることで存在を維持できるようになるのだ」
「それはいいんだけど、俺のメリットは?」
「お主の力にもよるが我の本来の力を扱えるようになれるかもしれないということだ」
俺がフェンリルの力を?!それができればシエルを救うことにも一歩近づけるかもしれない
「ああ、いいぜ。フェンリルさんと一緒にいれば面白くなりそうだしな」
「ありがとう、では始めるぞ」
その瞬間、また空間のねじれ大きくなった。それと同時に地震のようなものも襲ってくる。
「これ大丈夫なのか?」
心配になってくるが今はフェンリルを信じよう。
それからも空間のねじれを見ているとそのねじれがだんだんこちらに向かってきて俺の胸元に接近した。
「さあ、入るぞ」
その言葉を合図に何かが入ってくる感じがした。すべて入り終わると地震もおさまった。
「ふう、終わったか」
今思えばフェンリルが動き出そうとした衝撃で地震のようなものが起こっていたのかもしれない。そして俺はひと段落ついたところでフェンリルの石像(足元)に腰を下ろそうとした。
だが、それはできなかった。魔力の供給がなくなったせいか、これまで新品のようだった石像が崩れ落ちた。
「っとあぶねえ」
落ちてくる石を避けながら扉の方に走りそして最後に壊れた石像の方を向きながら扉をゆっくりと閉めた。
それからしばらく家の周りをウロウロしながら頭の中でフェンリルと話していた。
「なあ、フェンリルさん」
「なんだ?」
「どうやったら力、扱えるようになるんでしょうかね?」
「……実のところ、我もよくわかっておらぬのだよ」
「えっ?おいおい冗談はよしてくれよ……マジで?」
「マジマジ、ちょーマジ」
いきなりチャらくなったな、まあそれはいいとしてだ
「で、結局どーするの?」
「うむ、詳しいことは魔女が知っておると思うが、それは昔の話だからなあ」
「魔女ねー、その時の魔女ってどんなのだったの?」
そこで昔を思い出すようにうーむとタメを作るとこう言った。
「黒髪での、それはとても素晴らしい髪の持ち主であった。身長もすらっと高く、魔道書を何冊も管理していたはずだ」
「これで黒のマントと、とんがり帽子をしてたらもう完璧だな」
俺がそう言うと、
「?何を言っているのだ、魔女はそんな格好してなかったぞ」
「そーなのか、じゃあどんな格好?」
「それはそれはラフな格好をしておった、ヘソは見えるはスカートは短いやら同性の我でも戸惑ったものだ」
「フェンリルって女の子だっ「咬み殺すぞ」はい、すいません」
いやー危ない。どうやらフェンリルにとってそれは禁句らしい。口調が特殊だったからよくわからなかっただけなのになあ。
それにしても魔女、全然イメージと違いましたね。話しを聞いているとどうやら年も若そうだ。
「っていうことはその魔女を探せばいいってわけだな」
「うむ、そういうことだ。しかし、特訓はせねばなるまいぞ?」
「わかってるよ、ところでフェンリルって長くてめんどいからルリって呼んでもいいかな?」
まあ、いつまでもそのままじゃいろいろと不便だからな。
「む?うむ、良いぞ。ではお主の名前はなんと申すのだ?」
「ああ言ってなかったっけ。俺の名前はカズマ、よろしくな」
「よろしく頼むぞ、カズマ」
こうしてルリと仲良くなった俺は明日から特訓をしようと決意し、部屋に戻ってそのまま眠りについた。
感想とブックマーク、よろしくお願いします!
次回は明日の12時です。