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プロローグ
2月14日、花神楽高校では毎年全校朝礼が行われる。
というのも、学校長(のみならず、一部教師や大半の生徒)が非常にお祭り好きであるからだ。
「みなさん、ハッピーバレンタインデー! 今年も校長先生からみんなにプレゼントがあるよ!」
花神楽高校校長であるリリアン・マクニール……あるいは後藤花子が、マイク片手に声を張り上げる。体育館に集まった生徒が鬨の声をあげ、1年生であるくるはうるささに眉を顰めた。
「ぐら校がこうして元気にしてられるのはみんなのおかげです! 感謝の気持ちをこめて、全校生徒分チョコレートあるから各クラスの代表前にとりにこーい!」
校長の言葉とともに、3年の列からやたらと背の高い男が1人凄まじい速さで飛び出した。何処の誰よりも早く校長の下に駆けつけたこの男――朝礼の前からうんざりとした顔をして、2月14日のチョコレートなんぞ見飽きた胸焼けがするなどと言っていた西野隆弘のこの姿は、涙なしには語れぬバレンタインの風物詩として、厚手のハンカチと共に花神楽高校に長く語り継がれることになる。