閑話:南街道/アラベラ
ヴァルドウの町を出てから、なんだかデルトがすごく過保護だ。気のせいじゃない。お家のお兄ちゃんやお姉ちゃんたちも私や妹に対して結構な心配性だったけれど、デルトはそれ以上に私を構ってくる。
疲れてないかとか、休憩したほうがいいんじゃないかとか、いちいちとにかく心配しすぎだ。
確かに、ヴァルドウで熱を出してしまったけど、あれはそれまでの疲れが一気に出ちゃっただけだ。ヴァルドウを出てから、デルトが言った通り、魔物と遭ったり野宿したりすることはなくなったし、調子だって悪くない。馬に乗り続けても、もう身体だって痛くならないし、大丈夫だから、調子が悪くなったらちゃんと私から言うからと言っても、こっちの様子を伺うことを止めない。
これは、お兄ちゃんたちよりも酷い。
南街道沿いの小さな宿に泊まった時に、そう溢したら、エヴィはちょっと困ったなあという笑みを浮かべて言った。
「デルトはお母さんを病気で亡くしてるから、誰かが病気になるのがすごく怖いんじゃないかな」
そんなことを理由にされると、私が不満を言うのが悪いみたいに感じてしまう。ずるい。
「あとね、デルトは末っ子みたいだから、今まで構われてばっかりだったけど、自分より下の子ができて構う楽しさがわかっちゃったんじゃないかな」
……たしかに、お兄ちゃんやお姉ちゃんたちに構われるのは嬉しかったけど、妹や弟たちを構うのも楽しかった。それはわかる。
「わかるけど、それでも構い過ぎだと思うの」
「王都まであと3日だし、それまでよ」
「うん……」
「っていってもね、我慢ならないと思ったらキレていいと思うよ」
「え?」
「我慢は身体に良くないから、ね」
エヴィがそう言ってウィンクをしたので、思わず笑ってしまった。
「うん、もういい加減にしなさい! って言ってもいいよね? 弟に言うみたいに」
「いいんじゃない?」
エヴィとふたりで、くすくすと笑った。
翌日、休憩の時にやっぱりデルトは私の世話を焼き始めた。大丈夫だからというのに、何かと気にしてくる。
まるで私が何もできないみたいに扱われるのは、本当にもう、止めてほしい。
「もう! 私は小さな子供じゃないんだから、大丈夫だって言ってるの!」
イライラして、つい、デルトが差し出してくれたカップを振り払ってしまい、すぐに、しまったと思う。デルトが親切でやってくれるのはわかってるのに、ついやってしまった。謝らなきゃと思ってデルトの顔を見て、ぎょっとした。
デルトの顔は真っ青で、カップを持つ手が震えていた。空いてるほうの手で上着の胸のあたりをぎゅうっと握り締めて、どことなく苦しそうに息をしていた。私より、よほど具合が悪そうに見えるくらいに。
「あ……デルト、その……」
私が恐る恐る呼ぶと、デルトは我に返ったように慌てて「ごめん」と一言だけ残してすぐに立ち去った。
……この時のデルトの様子は、明らかにおかしかったと思う。
それから、次の宿に着くまでずっとデルトはぼうっとしているように見えた。エヴィも気づいたようで、馬を進めながらじっとデルトを見詰めていた。





