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5

「次は麹だな!」

 コウは議題を変えた。

「麹ってなんなのだ?」

「説明が非常に難しいのですが……麹菌ですね、簡単に言うと」

「ああ……醤油はともかく、味噌は発酵食品って言うもんな。何かしらの菌がいるよな」

 とりあえずイサムの説明に納得する三人。しかし、すぐに当然の疑問が生じる。

「で、それはどうやって入手すんだ?」

 代表してコウがイサムに質問した。

「だから、そういう風に『全知』は――」

「あー……質問が悪かったな。例えば俺たちの世界ではどうしてたんだ?」

 機転を利かしてクローが訊きなおした。

「種麹屋さんという業者がいて、そこから買うようです」

「核心に近づいてきたか? じゃあ、種麹屋が造ってんだな。種麹屋はどうやって造ってんだ?」

 コウが流れをつないだ。

「種麹屋さんは元々持っていた麹を培養して……増やして販売しているようです」

「んあ? その増やす……元々の麹は?」

 難しい顔でリーンが再び訊きなおした。

「それは先祖代々伝わったとか……質の良い麹を買い取ったとかのようです」

 段々と想像がついてきたのか……クローがもう一度掘り下げる。

「その先祖だとか……売った人はどうしてたんだ?」

「その先祖や売った人も……要するに誰かから麹をもらったようです」

 全員が無言になった。

 しばらくの沈黙の後、クローが口を開いた。

「どういう方法か解からないが……日本人の祖先の誰かが麹ってのを偶然発見して、それを脈々と育て続けたってことか?」

「……ちょっと待ってくださいね。少し深く潜ってみます」

 そう言うとイサムは目を閉じた。

 どういう仕組みなのか彼以外には解からないが、より正確で細かい知識を探しているのだ。

 三人が固唾を飲んで見守っていると――

「解かりました! 稲麹です! 稲に直接麹菌がくっつくと黒っぽく変色します。それを稲麹だとか稲魂と呼ぶそうなんですが、要するに目で見える麹菌の塊です。それから麹菌を培養したようです!」

 目を開けてイサムは期待にこたえた。

「おお! 流石は俺たちのブレイン!」

「やっぱり『全知』は凄いな!」

 コウとクローがイサムを褒めちぎる。

「じゃ、次は稲なのだ!」

 リーンがニコニコした顔で言った。

「……稲?」

 三人は異口同音に言った。まるで悲鳴の様だ。

「稲の原産地は?」

 切羽詰った表情でコウはイサムに問いただした。

「諸説ありますがインドや東南アジア、中国、日本……要するにインドより東側ですね」

 胡椒ですら難しいというのに更に離れた場所だ。絶望的と言ってよかった。

「待て! 意外と穀物の伝播は起きる! 人類の基本だからな!」

 一縷の希望に縋るようにクローは自説を披露した。

「中東でも米食は認められますが……稲作があったかどうかは不明です。インド方面から流れてきた米を食べることもある程度の可能性が……」

 三人は黙り込んだ。リーンは理解していないのか――

「どうしたんだ、三人とも? 稲か? オレ様の魔法でひとっ飛びして――」

 などと言い出す。

「はぁ……だから、それは……大豆の原産地に行くのと同じことだろ?」

 クローが優しく噛み砕く。

「ああ……そっか……」

 それで四人とも黙り込んでしまった。

 しばらくの沈黙の後、コウが宣言した。

「保留! これは保留にする!」

 三人とも思うところはあるのだろうが……代案も無いのかその意見に従った。

「それじゃ……次は塩だな」

「流石に塩はあるのだ」

「味噌はそれで全部ですね。醤油はあと……水です」

「……まあ、水はあんよな」

 乾いた笑いがその場を支配した。

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