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夜になってリーンがひょっこりと顔を出した。
「お前……もう起き上がって大丈夫なのか?」
驚きの表情でコウが叫んだ。
「んあ? 大げさだな……要するに寝不足と空腹だっただけだぞ?」
拍子抜けすることをリーンは言った。
「いや……でも……あれだけの大魔法で……三日三晩ぶっ通しの儀式だろ? 休んでいたほうが良いんじゃないのか?」
クローも心配そうに言った。
「三日三晩にかけて魔力を集めたから大魔法なんだぞ? それに魔法でやり繰りしなきゃ、三日三晩も飲まず食わずで持つわけが無いだろ? 何もしなくても起きてるだけで大変じゃないか。その辺は大丈夫なようにするのが儀式の基本なのだ。クローも覚えとくといいぞ?」
偉そうにリーンは説明した。
それはそうなんだろうが……なんとなく納得のいかない説明でもあった。
「まあ、とにかく……もう無茶しないでくださいよ? 倒れたのは事実なんですから。僕らの肝は十分に冷えましたよ。寝ないならとりあえず座っていてください。僕らの方が落ち着きません」
「なんだ……イサムも大げさだな――」
そうは言いつつもリーンは大人しく椅子に座った。
「まあ、オレ様も少し反省してるのだぞ? そんなに怒ったらダメなのだ。魔力の使いすぎでぶっ倒れるなんて、うんと小さいとき以来で自分でもビックリしてるのだ」
リーンの謝罪のような反省のような言葉に三人は納得しかけるが――
「次にやる時はもっと上手くやるぞ?」
という締めの言葉で台無しになった。




