恋心
ああ、なんでこうなってしまったのだろう。
こんな気持ち、気付かなければ良かったのに。
棄てられたら、どんなに楽だろう。
私が、私ではないみたいだ。
身体が、心が。
勝手に反応してしまう。
どんどん気持ちだけが膨れ上がっていく。
自分に、こんな事が起こるなんて思わなかった。
一年前の私が今の状態を見たら、嗤われるのだろうか。
驚き、呆れられるのだろうか。
ただ、想像していなかったのは確かだ。
二次元の世界だと。
三次元にあっても、私には関係のない話だと。
思い込んでいた。
考えていた。
妄信していた。
人の感情に疎かった。
人の考えが、触れ合いが鬱陶しかった。
なのに。
なぜ。
頭を撫でられるのが。
声をかけられるのが。
触れ合うのが、心地いいんだろう。
「・・・なんで、頭撫でるの」
「んー、なんとなく」
「やめい」
嘘。
もっと撫でていてほしい。
「どうして」
「力抜けるから。頭撫でられるの弱いの」
本当。
抵抗できなくなってしまう。
心も、身体も。
「・・・まぁ、気にするな」
「するよ。好きになっちゃうよ?」
嘘。
もうなってしまっている。
「そうなったら、困るでしょ?」
嘘。
困っているのは、私のほうだ。
でも、困らせたくないのは本当。
嫌われたくない。この関係を壊したくない。
もっと、触れていたい。
私の言うことは本当と嘘が混ざっていて。
誰にも、どれが本当で、どれが嘘かわかんないだろう。
「・・・ねぇ」
「ん?」
『好きだよ』
「・・・なんでもない」
『嘘。なんでもなくないよ』
「そっか」
『お願い、気付いて』
「うん、なんでもないよ」
『やっぱり、気付かないで』
・・・もしも。
彼が「ホントに?」と、聞き返したら。
私は、きっと、我慢できなくなる。
「ううん、ホントじゃない」
そう、言ってしまうだろう。