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序章2

結局のところ、頭痛の影響でその後の事はほとんど覚えていない。

断片的に聞いた話をまとめているうちに、段々と自分の置かれている状況が判ってきた。


まずは自分の名前。

私の、というより、私の意識の混ざった少女の名前はサーラ。十歳。

ちなみに、以前の私の名前は、更紗さらさである。

運命、というか、何かの意図を感じずにはいられない、この偶然。


少女は、ここ、グリース王国の地方都市、アルテアの貴族として生を受ける。

彼女は生まれつき体が弱く、この屋敷から外に出たことはほとんどなかった。

この時も、風邪をこじらせたことが原因で、数日間意識不明だったようだ。

私が目覚めた時の記憶は、家族の事や、この屋敷の事が中心で、あまり外の情報は得られなかった。

それでも、十年分の記憶である。

情報量が少ないのが幸いしたが、私の脳はパンク寸前だったに違いない。

おかげで、目覚めてから十日程、高熱と気ダルさに苛まれることになってしまった。


家族は、両親、三つ上の姉が一人、一つ下の妹が一人。祖父母はすでに亡くなっているようだった。

あとは使用人が数名。貴族といっても、あまり大きくないのだろう。

とはいえ、元平民の私からしてみれば、十分贅沢な暮らしぶりなのだが。

少女の意識は、私が気が付いた時には、既に無かった。

病気のせいで亡くなったところに、私の意識が入り込んだのか。

それとも、結果的に私が追い出すことになってしまったのか。

とにかく、少女の事は、忘れないように心にとどめていようと思う。



そして、多分というか、間違いなくここは日本ではない。地球であるかどうかも怪しい。

書物に書いてある文字は、地球上で見たことない文字だったし、何やら変な記号もある。

時折見る地図っぽいものも地球の物ではなかったし、何より時代が違う。

文明の利器ともいえる、電化製品が、この家には存在しなかったのだ。

外から見る街並みは、この屋敷の大きな庭。

そして門の向こうに小さく見える、中世らしき街並み。

一際目立つ、塔のようなものは、教会だろうか。


やって来る人間達は、西洋人のような顔立ちで東洋人らしき者も中にはいるが、あまり見かけない。

現に、私の顔も、所謂西洋人っぽい顔立ちで、鼻が高い。

髪の色は、茶髪で、子供だから童顔なので東洋人にいなくはないだろうが。

元日本人の自分には違和感ありまくりだが、せっかく生まれ変わったんだ。

この人生を楽しんでしまおう。


とにもかくにも、まずは情報を集めないと。

右も左もわからないこの世界に突然来てしまったのは、偶然なのか必然なのか。

いかんせん、十歳の病弱な体では、できることは限られている。


「サーラ様、ご気分は大丈夫ですか?」

「うん、もうへいき。ありがと、マリベル」


彼女は、使用人の中で、一番年下のマリベル。十五歳。

十五歳というと日本では中学生だ。この国では十五から就労が認められているのだとか。

記憶によると今年私についたばかりで、ずっと私の介護をしてくれていた。

一番最初に私に気付いたのも彼女だ。


「ねえマリベル。えほんよんで?」

「はい、喜んで。ただいま取って参りますね」


せっかく子供になったんだ。この体は最大限利用させてもらおう。


続く


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