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三回戦 みんなで叫ぼう「トマホゥゥク!」

『さぁ、武技大会も三回戦へ突入!64名いた参加者も、16名へと減ってきた!ここで勝てばまずはベスト8入り、否応なしに気合いが入る!それでは、開始ィィィ!』


 一時間の休憩の後、三回戦が始まる。やはり最終試合出場となるラザファムは、


「あんまり無理しちゃ駄目ですよ!いくら試合だからって、怪我はするんですからね!」


「はい……気をつけます……」


 ファニのキツい説教を聞かされていた。





「くぅ~……テンション下がった……」


 やっとこさ出番だというのに、ラザファムのモチベーションは低い。結局説教が終わったのはほんの10分前だった。


『大丈夫でしょうかラザファム選手!?快進撃にも関わらず落胆しています!』


「頼むからほっといてくれ……ちゃんと戦うから……」


 とは言うものの、その声が届くはずもない。


『ええと、ラザファム選手がややグロッキーですが、相手が現れます!

斧使いのサガモア選手!』


「…………」


 歓声に迎えられて現れたのは、非常に大柄で、筋骨隆々の、無口な大男。しかしその手に携える奇妙な形の斧はやや小さい。


「……厄介だな。力任せならどうとでもなるんだが、そういうわけでもないか。さすがは勝ち残ってきただけあるってことだな」


 今までと同じくリラックスした構えだが、緊張が見て取れる。


『では、三回戦最終試合、始めッ!』


 カァン!!とこれまで以上の大きさのゴングが鳴った。





「さて、どうくる……?」


 サガモアの一挙手一投足を見逃さないよう集中するラザファムの視線の先、その大男は、武器を大きく振りかぶる。距離は、詰めずにそのままで、だ。


「何だ……うおっ!」


 ラザファムが訝しむと同時に、サガモアは斧を『投げた』。それは回転し、弧を描いてラザファムに襲いかかる。

 間一髪回避したものの、態勢を戻すと、斧はサガモアの下へと戻っていた。


「……投擲斧トマホーク……!しかも戻ってくるのか!」


 ブーメランのように戻ってくる……その特殊な形状だからこその軌道だ。それでいて通常の斧として使うにも支障のない形をしている。

 規定上、刃の部分に覆いがあって、殺傷力は抑えられているが、当たればひとたまりもないだろう。


「一癖も二癖もないと勝ち上がれないってか……。投げてから戻るまでが勝負、というわけでもないだろうし……」


 下手に近寄れば、丸太のように太い腕でぶん殴られることは確実だ。遠近共に隙のない、ハイレベルな相手だとラザファムは認識した。

 それでも、それでもだ。


「だからって諦めちゃあ、カッコつかないよな……!」


 彼の頭の中では、投擲斧トマホークへの対処法が一つずつシミュレーションされている。細かいところまでは無理でも、大まかには分かる。

 その中で最も成功率が高いと思われる手段をとった。

 サガモアに向かって姿勢を低くして駆け出す。それを迎撃しようと斧を振りかぶる瞬間に速度を落とす。


「……!」


 その行動が空振りを誘うものだと判断したサガモアは、すぐさま投擲へと構えを変えた。

 足元へと低い軌道で迫る斧を、ラザファムは軽く跳んで回避する。


「それは読んでた!スウェーで避けると思ったろ!」


 そのまま接近したと思うと、翻弄するように小刻みに動いて攻撃を繰り返す。筋肉の鎧に対してはごく小さいダメージだが、積み重ねるつもりのようだ。

 だがそれも、サガモアの裏拳による薙ぎ払いで後退せざるを得なくなる。仕切り直しとなった距離だが、ラザファムは急に後ろを向く。


『おっとラザファム選手、どうしたのか!?急に背を向けました!負けを認める気でしょうか!?』


 実況の心配する声が響くも、ラザファムは答えない。怪訝に思うサガモアが凝視する。


「……逆風蹴りだッ!」


 突然、ラザファムがバク宙しながらの蹴り───どう見てもただのオーバーヘッドキック───を敢行した。サガモアは咄嗟の判断で脳天を守る。


 ……だが、真の意図は、奇襲ではなかった。


 頭を守った次の瞬間、サガモアの眉間には斧の柄の先端がしたたかに打ちつけられていた。

 そう、オーバーヘッドキックの真の意図は、戻ってきた斧を蹴って勢いを増し、サガモア自身にぶち当てることだったのだ。それは大成功し、ラザファムに気を取られた隙を見事に突いた。

 さすがのサガモアも、人体急所の一つである眉間への強打には耐えられず、気絶した。


『サガモア選手、気絶!見事、ラザファム選手がベスト8入りを果たしました!

さて、残りの試合は明日に持ち越しとなります!また明日もお楽しみ下さい!

それでは、勇士達に盛大な拍手をお願いします!』

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