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遺品の浄化 ~ 国王謁見 ~ 武技大会告知

 漸く王都に到着したアロイス一行。そのまま城へ直行するかと思われたが、


「お城に向かう前に、教会に行きましょう」


 とのファニの提言によって、現在教会にいる。

 彼女は、遺品を司教に渡した。


「え?届け先は城じゃないの?」


 戻ってきたファニに、アロイスが怪訝そうに訊く。


「はい、そうなんですが、先に浄化をするんです」


「浄化?」


 今度はラザファムが尋ねた。すると、途端に饒舌になった。


「はい。人と魔物、互いの血と無念に穢されていたのですから、あのままではただの不吉な品になってしまいます。一応、王都に来るまでは、私が抑えていましたが。

あのまま渡していたら、遺族の方に不幸を招くどころか、新たな魔物さえ呼び寄せてしまうこともあるんです。特に引き寄せられ易いのが、悪霊の類ですね。

ですので、特製の聖水と、司教様のお祈りで、浄化していただくんですよ」


 すらすらと出てくる、慣れた様子の説明に、ラザファムは納得した。


「成程、そりゃ、やっておかないといけないな。

……しかし、さすがは僧侶さんだ、自分の領分の解説は手慣れたものだな」


 誉め言葉だったが、ファニは何故か乾いた笑いをこぼした。


「あはは……実は、知識だけで説明したことがなくて……つまり私の領分では全然ないんですけど……」


「え……?」


 呆気にとられるラザファム。そのままファニが続けた。


「教会はですね、身寄りのない子に、無償で読み書きその他を教える、ということもしてるんです。

私は、幼い頃から教会に住んでまして、色々と手伝ったりもしてました。

勿論、その読み書きとか、道徳とか、そういったことを教えるのも手伝ったことがありまして……多分、それで説明がちょっとだけ上手い、だけだと思います」


 浄化の説明そのものも受け売りですし、とさらに補足する。


「……だがまぁ、よく分かった。無学な俺でもなんとか理解できるくらいには」


「こんな私の説明で分かっていただけたなら、幸いです。

……あ、終わったようですね」


 丁度、司教が浄化の終わった遺品を持って奥の部屋から出てきた。


「お疲れ様です、司教様」


「うむ。では、城に持って行きなさい」


「はい。……皆さん、お待たせしました。それではお城へ向かいましょう」




 ベルンハイドラ城、謁見の間。


「陛下、宮廷術士ドースン以下4名、報告にあがりました」


 ドースンを先頭にして、跪いて王に会見している。


「ふむ……早い帰還じゃな。どうかしたのか?」


「はっ、ここより東、先だって出立した魔王討伐隊の果てた地にて、勇士達の遺品を回収致しました。それを遺族の方に返還する旨の知らせを出していただきたく、帰還した次第です」


「なんと……やはり全滅の報はまことであったか……。して、遺品は?」


「はっ、これに。教会にて浄化を済ませております」


 脇の箱を側近に渡す。中を見、罠等ではないと確認して、それを伝えた。


「うむ、大儀であった。では、城の一角に受付を設けよう。

……それと、そちらの若者は?」


 王は、ラザファムを指して訊く。


「討伐隊の果てた地より北の村にて、我々の旅に同行を申し出た、ラザファムという者です。身元の確認は取れております」


「義勇兵というわけか。ラザファムよ、期待しておるぞ」


「は、ははぁーっ!」


 紹介だけならまだしも、声までかけられたラザファムは、慌てて返事をした。

 城内の豪華さに驚き通しだったのも合わせ、冷や汗が流れまくってもいた。




 そうして会見が終わり、謁見の間を去ろうとした時。


「おお、忘れておった!

勇者アロイスと仲間達よ、もう少し休んではいかぬか?」


「え、何かあるんすか?……あ、いけね」


 いつもの調子で返してしまったアロイスは、慌てて跪こうとしたが、制止された。


「いやいや、楽に聞いていて構わんよ。実は、街に活気を取り戻そうと思ってな。……大臣、あれを」


「はっ」


 促され、大臣が持ってきたものは、大きな紙。それを開くと、


「……『王都一武技大会』?」


「そうじゃ。魔王討伐隊員募集締切に間に合わなかったものの、次の募集はないかと期待して街に残っている、腕に覚えがある者達……彼らには、今は宿代代わりに職を与えているが、それだけでは腕も鈍る。

ならばいっそのこと、腕を錆び付かせないついでに皆を楽しませてもらおうと思ってな!」


 言ってる間にノッてきた王。周りはちょっと引いている。


「おぬしらは、万一の事がないように、出場を控えてもらうことになるが……観戦するなら、特等席を用意しよう」


「おぉー……!」


 アロイスは目を輝かせて聞き入っている。


「なぁなぁ、ドースン、ファニ……!」


「……分かった分かった。では陛下、席を4……」


「あッ、私はいいです!

……救護係、やりますから」


 さすが僧侶、本来争い事が嫌いなだけある。


「まぁ、見たくないならそれも良かろう。では陛下、席は3……」


「なぁ、ドースンさん」


「今度はそなたか!」


 次はラザファムが割り込んだ。


「俺、出てもいいか?」


「……まぁ……宿命に選ばれてはいないしな……最悪、いなくとも大丈夫か。

では陛下、席は2つ、ラザファムは本来我々の旅に同行する必要がない者なので出場させたいと思いますが……」


「うむ、おぬしが良いと言うのなら認めよう。ただし、人数の関係上、シード枠は無いぞ」


 意外とあっさり認められ、ラザファムはかなり嬉しがった。


「か、感謝します、陛下ッ!」


「うむ。頑張って戦うのだぞ」


 そして、彼らは謁見の間を後にした。

 が、ファニは肩を落とした様子だ。


「もう……陛下もアロイスさんもラザファムさんも、男の人ってどうしてこんなに戦いが好きなんでしょうか……」


 深いため息をつき、アロイス達について行く。

 それから彼らは、それぞれの宿泊場所―――アロイスは実家、ドースンは城内の自室、ファニは教会、そしてラザファムは安い宿―――へと向かった。


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