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王都出発 ~ 新たなる武器

 ラザファムが見回りを行った翌日、勇者アロイスの一行は出立することになった。武技大会出場者達が尽力したため、予定より大幅に早く修繕できたためだ。


「よーし、結局相当時間食ったけど、出発だぜー!多分かなりレベルアップしてるだろーから、ここいらの魔物くらい楽勝だぜ!」


「やれやれ、浮かれるでない。油断大敵と言うであろう」


 はしゃぐアロイスと、諫めるドースン。実際、彼らが戦ったのはギガンツだけであり、さほどレベルアップしたわけではない。まぁ、ある意味耐久戦ではあったので、それなりには経験になったが。


「レベルアップしたって言うなら俺だろう、一体何戦したと思ってるんだ」


「そうですね……あと、私もそれなりに……」


 と、ラザファムとファニ。ラザファムは言った通りで、対人戦とは言え何度も戦ったわけなので、結構な経験を積めていた。ファニにしても、負傷者の治療等に尽力していたため、少なくとも魔力の最大蓄積量や消費効率はかなり良くなっただろう。

 事実、王都周辺~道中の魔物を軽く蹴散らすことができるくらいにはなっていた。そのためか、ラザファム達が出会った所まで、一日で到着できた。


「……ああ、そうだ。俺の村に寄っていってくれないか?」


 そこでラザファムが唐突に問いかける。


「え?まぁ、オレはいいけど……ファニとドースンは?」


「私は、いいと思います」


「右に同じく」


 唐突ではあったが、全員の賛同を得られ、彼らは北に……ラザファムの村に向かった。





 一週間も経たずに戻ってきたラザファムに、村の者はそれでも喜んでいた。とは言え、一晩泊まるだけだと聞いてすぐに落胆したが。

 そしてその夜、ラザファムの父のデトレフに、パーティ全員で会った。


「……親父、俺、王都で親父のライバルだったって人に会ったぞ」


「おっ、本当か!?あいつは元気にしてたか?俺が贈ってやった看板、まだ使ってたか?」


 目を輝かせるデトレフ。どうやら話は本当だったようだ。


「ああ、繁盛してるかは分からないが、その人も看板も現役だったぞ」


「昔、お母さんが王都に行った時にいた人ね。ライバルを奪っちゃって、ちょっと罪悪感があったわねー」


 今更ながら、そこには母のライナもいた。どことなく勘違いをしているような、していないような、そんな感じだ。


「で、元鍛冶屋だと聞いて、もしかしたら、と思って戻ってみたんだが……」


 期待を込めたラザファムに、


「さすが親子だな、多分お前の思ってる通りだと思うぞ。……どれ」


 なんと、応えた。

 部屋の隅にあった風呂敷包みを間に置き、開く。


「おおっ、これは……!」


「すっげぇ……!」


 言葉を失うラザファムとアロイス。そこには、数々の武具があった。

 幅広で片刃の剣、小振りだが突起部がやたら刺々しいメイス、厚い布の裏地がある胸当て、等々。


「いつか戻ってきた時に渡そうと思ってな、あれから造っていたんだが……まさかこんなに早いとはな。全部鋼鉄製だが、間に合ったみたいだな。

この剣は、カットラスってぇ種類のだ。船の上で戦うための剣なだけあって、取り回し易さが売りだ。まぁ、意図的に刃の側に重心寄せてるから多少扱いづらくなってるが、慣れればザクザク叩き斬れるようになるだろうよ」


「おおー!」


 アロイスは目を輝かせてカットラスを手にし、感触を確かめる。室内なので振り回すことはできないが、それでも満足しているようだ。


「で、僧侶さんにはこいつだ。銅を芯にして木の覆いを付けて、先端の塊に剣のように鋭くした鋼を所々に付けたメイスだ。

元々メイスってぇのは、刃物が通らない硬い鎧を叩き壊してダメージを与えるもんだが、魔物にゃあそういう奴はいないだろうからな」


「は、はぁ、ありがとうございます……」


 ファニは、その凶悪な外見の武器をおっかなびっくりといった感じで手に取った。どうやら重さは丁度良いようで、危なげもない。


「ああ、先端をさらに覆うカバーもあるからな、普段はそれを使うといいぜ。

魔法使いさんには、どうにもこの辺には霊木の類は無いみたいだから作れなかったんだが……」


「問題ない、元よりそういったものは多くない。魔力を増幅する金属というものも、専門の鍛冶師が要る」


 最初から期待していなかったようで、ドースンは特に表情を変えることもない。


「親父、俺のは?」


「待たせたな、これだ」


 最後にデトレフが取り出したのは、奇妙な物体だった。

 ごつい鋼鉄の指輪……としか言いようが無いもの、それが四つ、縄で繋がれていた。


「分割式ナックルダスター、とでも言うか。

お前は格闘が得意だから、拳全体を覆うやつにしようと思ったんだが、それだと指先が不自由になるだろ?

機能を保ちつつ、手を自由に使えるもの……ってことで、この形になったんだ」


「うわ、ずりぃ!これが一番手ぇ込んでるじゃねーか!」


 アロイスが羨望の眼差しを向ける。使えないのに欲張りな勇者である。


「いいだろ、お前らのは工程こそ違いはあっても楽に造れるもんだし」


 格闘が主な戦法である以上、武器を工夫しなければならないが、さすがは父親なだけあって最適なものであった。


「さて……俺はもう鍛冶屋じゃないからな、鋳型は渡しておくぜ。

もっといい金属で造るんなら、こいつを使ってもらいな」


「ありがとう、親父!」


 そして、翌日に彼らは出立したのだった。

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