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第6話 消えた賢者の魔導書

アルトの言葉をきっかけに、勇者一行は広場を離れた。


背後ではまだ歓声が続いている。


「勇者様万歳!」


「森を一撃だ!」


「魔王も倒せるぞ!」


ガルドが振り返る。


「すげえな、完全に英雄扱いだ」


「でも、森を一撃って正義なのかわからないな」


アルトは苦笑した。


「……やっていません」


セシリアが冷静に言う。


「否定しても信じないでしょう」


「街の人たちは、もう勇者様の功績だと思っています」


リーナが柔らかく微笑む。


「勇者様の奇跡ですね」


アルトは森の方を見た。


街の外。


黒く焼けた森。


地面はえぐれ、木々は焦げて倒れている。


巨大な爆発の跡だった。


だが。


アルトたちはまだ何もしていない。


ガルドが肩をすくめる。


「結果オーライってやつだろ」


アルトは首を振った。


「……あれは普通の魔法ではありません」


セシリアが頷く。


「高位魔法です」


「かなり強力なものですね」


ガルドが笑う。


「勇者のアルトよりすごいやつがいるってことか」


アルトは少し考え込む。


「……可能性はあります」


そして言った。


「まずは魔導書の情報を集めましょう」


セシリアが頷く。


「聞き込みですね」


勇者一行は通りで人に声をかけ始めた。


しかし。


あまり成果はなかった。


「魔導書?」


「知らねえな」


「勇者様の魔法のことか?」


「すげえ爆発だったな!」


話題はすぐ森の件へ戻る。


ガルドがぼやいた。


「全然情報出ねえ」


セシリアが言う。


「魔導書の話は広まっていないようですね」


アルトは少し考え込んだ。


「……あの爆発」


ガルドが笑う。


「まだ気にしてんのか」


アルトは真面目に言った。


「あれほどの魔法を使える人物がいるなら」


「魔王討伐の戦力になります」


ガルドがニヤリと笑う。


「仲間にするってことか」


アルトは少し迷った。


「……可能性としては」


セシリアが言う。


「勇者パーティが強くなるのは歓迎です」


リーナも頷く。


「素敵ですね」


アルトはさらに考え込む。


「でも……もしそうなら」


「なぜ誰が撃ったのか分からないのでしょう」


あれだけの魔法なら、きっと有名人のはずだ。


セシリアが言う。


「賢者の魔導書を解読した人物がいる可能性があります」


ガルドが眉を上げた。


「俺たち以外に?」


そのときだった。


小さな声が聞こえた。


「……勇者様」


アルトたちは振り向く。


子どもだった。


十歳くらいの男の子。


少し不安そうな顔をしている。


アルトはしゃがんだ。


「どうしました?」


子どもは言った。


「道具屋のお兄ちゃん」


「昨日からいないんだ」


アルトの眉がわずかに動く。


「道具屋?」


子どもは頷いた。


「リオのお兄ちゃん」


「いつもお菓子くれるんだけど」


「昨日、森の方に走っていって」


「それから帰ってきてない」


セシリアとガルドが顔を見合わせる。


ガルドが言う。


「怪しいな」


アルトは子どもに聞いた。


「その道具屋はどこですか?」


子どもはすぐ通りの奥を指さした。


「カインズって店」


アルトは立ち上がる。


「ありがとうございます」


そして仲間を見る。


「……行きましょう」


少し歩いたあと、アルトは言った。


「まずは人命が最優先です」


「もし森に入ったまま戻っていないなら、危険です」


ガルドが頷く。


「そりゃそうだ」


勇者一行は通りを進んだ。


しばらく歩くと、小さな店が見えてくる。


木造の建物。


看板には書かれていた。


道具屋カインズ


ガルドが言う。


「ここだ」


アルトは扉を叩いた。


「すみません」


返事はない。


ガルドがもう一度叩く。


「店主ー」


沈黙。


セシリアが扉を押す。


カラン。


普通に開いた。


「鍵はかかっていません」


勇者一行は店の中へ入った。


棚には薬草。


包帯。


松明。


旅人向けの道具。


普通の道具屋だ。


ただし。


壁一面の本棚。


魔導書や古文書が並んでいる。


ガルドが笑う。


「道具屋っていうより本屋だな」


セシリアは店の奥へ歩いた。


棚を見ていく。


何か手がかりはないか。


アルトも店の中を見回した。


薬草の束。


工具。


古びた本。


そのとき。


「ん?」


アルトは床の近くで足を止めた。


木の床。


そこに黒い跡が残っている。


焦げ跡だった。


アルトはしゃがみ込む。


指で触れる。


「……焼け焦げています」


セシリアも近づいた。


「魔力の痕跡があります」


ガルドが言う。


「つまり?」


アルトはゆっくり立ち上がった。


森の爆発。


そして、この焦げ跡。


偶然とは思えない。


この店の主。


リオ・カインズ。


アルトは小さく笑った。


「……魔導書の場所はまだ分かりません」


「でも」


ガルドが聞く。


「でも?」


アルトは言った。


「強力な仲間が見つかったかもしれません」


そして。


少しだけ。


ニヤリと笑った。

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