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第5話 勇者の功績らしい(勇者視点)

「勇者様万歳!」


「森の魔物を一撃だ!」


「さすが勇者様だ!」


リンドベルの広場は、ちょっとした祭りのような騒ぎになっていた。


その中心に立たされている青年は、困った顔をしていた。


勇者アルト。


年は二十歳前後。


明るい金髪を後ろで束ね、旅装束の上に軽い鎧を着ている。

腰には一本の剣。


派手ではないが、よく手入れされた剣だった。


いかにも「勇者」と呼ばれていそうな見た目だ。


……ただし今は、完全に困っている。


街の男がアルトの手を握る。


「ありがとうございました、勇者様!」


「この街は救われました!」


アルトは苦笑した。


「いえ、その……」


言葉を探す。


だが周囲の歓声は止まらない。


横で戦士ガルドがニヤニヤしていた。


ガルドは大柄な男だった。


アルトより頭一つ背が高く、全身を分厚い鎧で包んでいる。


背中には巨大な剣。


いかにも戦士だ。


「人気者だな」


アルトに肩を叩かれる。


アルトは小声で言った。


「やってません」


その隣で、魔法使いセシリアが腕を組んでいた。


長い銀髪。


青いローブ。


落ち着いた目。


四人の中では一番冷静そうな女性だ。


「ですが」


セシリアは周囲を見回す。


「街の皆さんはそう思っています」


さらにその横。


神官リーナが小さく頷いた。


淡い金髪。


白い神官服。


柔らかい雰囲気の少女だった。


「勇者様の奇跡ですね」


アルトは森の方を見る。


広場の外。


街の向こうに広がる森。


そこは黒く焼けていた。


地面はえぐれ、木々は焦げて倒れている。


巨大な爆発の跡だった。


だが。


アルトたちはまだ何もしていない。


ガルドが肩をすくめる。


「まあいいじゃねえか」


「結果的に魔物いなくなったんだろ?」


そして胸を張る。


「もし勇者がやってないなら」


「俺ってことで」


アルトが振り向く。


「え?」


セシリアが即座に言う。


「ガルド」


「あなた魔法使えませんよね」


ガルドは腕を組む。


「雰囲気だ」


「どういう理屈ですか」


リーナが言う。


「奇跡です」


ガルドが頷いた。


「ほら」


「神官も言ってる」


セシリアはため息をついた。


アルトは森を見ながら呟く。


「……でも」


「本当に何だったんでしょう」


セシリアが静かに言う。


「高位魔法の痕跡があります」


「かなり強力なものです」


ガルドが口笛を吹く。


「勇者より強かったりしてな」


アルトは少し考え込む。


「それは……」


否定しきれない。


あの爆発は普通の魔法ではない。


セシリアが話を戻した。


「ですが、今は別の目的があります」


アルトは頷く。


「そうですね」


彼らがこの街へ来た理由。


それは森の魔物ではない。


賢者の魔導書。


古代賢者が残したと言われる魔導書。


魔王討伐のための力。


勇者が手にするべきものだ。


アルトは広場を見渡した。


「まずは情報を集めましょう」



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