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第3話 幼馴染は全部知っている

俺は夜の街道を歩いていた。


リンドベルの灯りが、もう遠くに見える。


背中には荷物。


金。


食料。


そして。


賢者の魔導書。


(……逃げるしかない)


右腕を見る。


龍の紋章。


まだ、うっすら赤く光っている。


森を丸ごと吹き飛ばした魔法。


あんなものがまた暴発したら。


街が消える。


いや。


問題はそこじゃない。


胸の奥がざわつく。


理由は分からない。


でも。


(勇者に知られたらまずい)


そう思う。


怒られるとか、そういう話じゃない。


もっと。


本能的な。


(なんか怖い)


まるで。


やってはいけないことをやったみたいな感覚。


俺は街を振り返った。


リンドベル。


生まれてからずっと住んでいた街。


道具屋カインズ。


本棚。


いつもの椅子。


全部、あそこにある。


「……」


少しだけ胸が痛んだ。


でも。


「しょうがない」


俺は小さく呟いた。


「逃げよう」


とりあえず隣町まで行く。


勇者が落ち着いた頃に戻ればいい。


……多分。


そう思いながら。


俺は街道を外れ、森の中へ入った。


見つかるのが嫌だった。


木々の間を歩く。


葉が揺れる音。


鳥の声。


静かな森。


「……はぁ」


ため息をつく。


(これからどうするかな)


金は少しある。


隣町で宿を取って。


それから――


ザザザザッ。


森が揺れた。


誰かが走ってくる。


しかも。


めちゃくちゃ速い。


「……え?」


振り向いた瞬間。


銀色の髪が木の間から飛び出してきた。


そして。


「リオーーーー!!」


聞き覚えのありすぎる声。


「うわっ!?」


ドン。


次の瞬間。


俺は抱きつかれていた。


「捕まえた」


顔を上げる。


そこにいたのは。


長い銀色の髪の少女だった。


朝の光を受けて、柔らかく揺れている。


透き通るような青い瞳。


白いワンピースに薄いカーディガン。


整った顔立ち。


街でも有名な美少女。


清楚。


お淑やか。


そして。


俺の幼馴染。


エリナ・フェルナ。


「……」


俺は固まった。


「……なんでいるの」


エリナは満面の笑みで言った。


「見つけた」


「いや、そうじゃなくて」


「なんでここにいるの」


エリナは首を傾げる。


「リオだから」


意味が分からない。


「なんで分かる」


エリナは当然のように言った。


「幼馴染」


説明になってない。


「いやいやいや」


「俺、夜に出たんだぞ?」


「街道も外れたぞ?」


エリナは少し考えた。


そして指を折る。


「店閉まってた」


「魔導書なかった」


「森爆発した」


そして。


にっこり笑う。


「リオ」


結論が雑すぎる。


「いやいやいや!」


「それでなんで俺ってなる!?」


エリナは不思議そうな顔をした。


「だってリオだもん」


理不尽だった。


エリナはさらに抱きつく力を強める。


「逃げちゃダメ」


「逃げる」


「逃げない」


「逃げる!」


「逃げない」


俺は空を見上げた。


(終わった)


トンズラ計画。


開始半日で終了。


エリナは楽しそうに言った。


「じゃあ一緒に行こう」


「どこへ」


「逃げる旅」


俺は呟いた。


「……なんで楽しそうなんだ」

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