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第16話 魔王軍襲来

警鐘が鳴った。


カン。

カン。

カン。


城内に響く、けたたましい音。


「……な、何事だ」


アルトは思わず顔を上げた。


控えの間にいた勇者一行も、同時に立ち上がる。


さっきまで静かだった城の空気が、突然ざわめき始めていた。


廊下の向こうからは兵士たちの足音が聞こえる。


慌ただしい声。

鎧の擦れる音。


明らかに、ただ事ではない。


そのときだった。


扉が勢いよく開いた。


「勇者様!」


控えの間に飛び込んできた兵士は、息を切らしていた。


額には汗が浮かび、呼吸も荒い。


よほど急いで走ってきたのだろう。


アルトはすぐに立ち上がる。


「何があったんですか」


兵士は顔を上げ、必死に言葉を絞り出した。


「魔王軍です……!」


部屋の空気が、ぴたりと止まる。


兵士はさらに続けた。


「それも……幹部の魔族が確認されています!」


アルトの胸が強く脈打った。


そして。


兵士ははっきりと言った。


「すでにルクスの西門が突破されました!」


部屋の空気が、一瞬で変わった。


ガルドが眉をひそめる。


「……は?」


信じられない、と言わんばかりの声だった。


リーナが小さく息を呑む。


「そんな……」


セシリアの目が鋭く細まった。


アルトは兵士を見たまま、静かに聞き返す。


「西門が?」


「はい! 魔族の部隊が出現し、守備隊が応戦しましたが……押し切られました!」


アルトの表情が固くなる。


西門突破。


その言葉の重さが、部屋の中に沈んだ。


王女が言っていたことは、本当だったのか。


魔王軍は、もうすぐ近くまで来ている。


あの言葉は、焦りでも思い込みでもなかった。


事実だった。


けれど――


「早すぎる……」


思わず、アルトはそう漏らしていた。


ガルドが兵士へ詰め寄る。


「おい、どれくらいの規模だ」


兵士は首を振る。


「詳細はまだ……!」


「ですが、西側の見張り台が二つ落ちたとの報告が入っています!」


セシリアが低く言う。


「進軍速度が尋常ではありません」


冷静な声だった。


「王都周辺に部隊を潜ませていた可能性があります」


リーナが不安そうにアルトを見る。


アルトは唇を引き結んだ。


いくらなんでも早すぎる。


国王の言葉では、まだ局地的な進軍のはずだった。


王女の見立てでも、危機は迫っていたが、ここまで即座ではない。


それなのに。


もう王都の門が破られた。


しかも。


王都の兵士が、こんなにも容易くやられるものなのか。


ルクスは大国だ。


騎士団も精強で、兵の練度も低くない。


簡単に崩れる防衛ではないはずだった。


それでも、西門は突破された。


ただ数が多いだけではない。


何かがある。


兵士がさらに言う。


「現在、騎士団が城壁内側で防衛線を張っています!」


「ですが、このままでは市街に入り込まれる可能性が……!」


アルトは一瞬だけ考えた。


そして、すぐに答える。


「分かりました」


迷いはなかった。


「すぐに向かいます」


廊下の向こうから、さらに慌ただしい足音が聞こえてくる。


城全体が揺れているようだった。


兵士の怒号。


鎧のぶつかる音。


遠くから響く警鐘。


カン。

カン。

カン。


王都が、戦場に変わろうとしていた。


リーナが不安そうに言う。


「でも、まだ準備も何も……」


ガルドが吐き捨てるように言った。


「そんなこと言ってられるか」


巨大な剣を背負い直す。


セシリアも静かに杖を握った。


アルトも頷く。


「行きましょう」


四人は一斉に部屋を飛び出した。


長い廊下を駆ける。


石の床に足音が響く。


窓の外には、王都の西側から黒い煙が上がっていた。


空気が、わずかに焦げくさい。


城内の侍従たちも、避難のために走っている。


兵士たちは各所へ散っていく。


誰の顔にも、余裕はなかった。


アルトは走りながら考える。


西門突破。


異常な進軍速度。


崩れる防衛線。


この戦いは、ただの魔物の襲撃ではない。


明確な意思を持った侵攻だ。


アルトは拳を握った。


勇者として、この場を止めなければならない。


魔王軍がどれほど早かろうと。


どれほど理不尽だろうと。


ここで退くわけにはいかない。


城門へ続く階段を下りながら、アルトは小さく呟いた。


「女神様……」


誰にも聞こえないほどの声だった。


「どうか、私に力を」


王都ルクスの戦いが、始まった。

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