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ぎぃ…
その白い空間とは不似合いな、随分と建て付けの悪い音と共にその木製の扉は開いた。
一歩踏み込むとそこは薄暗い石の部屋。
奥の暖炉に薄暗く照らされたその部屋には、何かを特定出来るような特徴的な物はなかった。
煌々と燃える暖炉と一組の応接セット。
そしてただ1匹、暖炉にの火に赤く照らされた猫が丸まっているだけ。
「なぁ…」
物憂げに顔を上げた猫は小さく鳴く。
「ここは…」
答えを期待した問いではなかった。
だが、零した声と共に辺りを見回す男に、声をかけるものがあった。
「やぁ」
声の方を向けば猫がにんまりと笑みを浮かべていた。
「珍しいお客さんだ。ようこそエティースールへ」
「エティ…?」
「エティースール。君たち風に言うなら“異世界“かな?“この門をくぐる者、一切の己を捨てよ“ってね」
「地獄門かよ」
「いやいや、希望は持っていってくれて構わないよ。なりたい己になれる場所、それがエティースール」
立ち上がった猫はゆったりとした歩調で男の元に歩み寄ると
「まぁ座りたまえよ、そんなに上で喋られては首が疲れていけない」
その小さな頭で男の足をソファの方へと軽くおす。




