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第2章|訓練されていない“視られ続ける恐怖”

第2中隊本部陣地:森と岩が交互に起伏する複合斜面、通称「火山庭園」地帯。


通信小屋と化した旧民家の礎石に、指揮用ノートPCと携帯式中継装置が設置されている。三尉・篠原克彦は、画面に表示された地図を指でスクロールしながら、自分の呼吸音を抑えていた。


「位置を把握されている……リアルタイムで、すべて……」


敵ドローンは約100m上空を巡回している。赤外線で隊員の体温を拾い、草葉の影も関係ない。風の流れ、日照、遮蔽物の種類までを補正したAI解析で、「動く気配」が予測されている。


隊員の誰かが枝を踏んだだけで、次の瞬間には銃弾が飛んでくる。射線を読む訓練はしてきた。だが、「射線が見えない」という状況に、誰も対応する術を持たなかった。


「目の前に敵はいない。なのに、殺される」


これは戦闘ではなく、観測と死の空間であった。兵士は戦うために存在する。しかしここでは、ただ“存在する”だけで撃たれる。発砲音は無い。聞こえるのは、遠くの木霊と、血が地面に染み込む音だけだ。


「敵の姿を見ないまま、全滅する可能性がある」


山岡士長は、膝を抱え、震えていた。彼の装備した暗視スコープも、熱源監視装置も、この状況では「無力」だった。自衛隊の装備体系は、敵を可視化することを前提にしている。だが今回の敵は、“自分を見て、見せない”という優位性を持っていた。



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